リスクをテーマとするブログを書いて3年が経ちました―1年間の実績を振り返る5―

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要約

2022年4月から2023年3月までの1年間のブログの実績を、Google Analyticsのデータを中心に振り返ってみます。この1年でアクセス数が着実に増えており、Google先生からの評価も一気に上がりました。また、アクセス数に加えて記事評価ボタンによる評価、Twitterでの反応など多角的なデータを収集しています。

本文:ブログ3年経過、最近の1年の実績

2020年4月にブログを開始して3年が経過しました。定期的にアクセス解析を見ながら振り返りをしているので、今回は5回目となるブログの運用について振り返る記事を書きたいと思います。以前の振り返り記事はコチラです。

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「ブログ」の記事一覧です。

2020年度は週2回、2021年度からは週1の更新となり、開始3年間で合計201記事をアップしました。

この1年のリスクに関するトピックといえば、ロシアのウクライナ侵攻、死者数が増加したコロナ第7波・第8波、成年年齢18歳引き下げ、事故・事件では知床観光船事故や保育園の送迎バス置き去り事故、梨泰院での雑踏事故、安倍元首相銃撃事件あたりが主なところでしょう。

以下では、データ分析の中心であるGoogle Analyticsの結果、アクセス上位の記事の紹介、検索エンジンからの評価、個別記事の評価の順で書いていきます。

Google Analyticsから見る本ブログの1年の実績

Google Analyticsでアクセス解析を行っています。基本データは以下の通りで、年間ユニークユーザー数は2021年度の18949人から2022年度は35602人に大きく増えました。ページビューも2021年度の33844から2022年度は53379に増加しました。ブログ開始後の累積ページビューは108553となり、やっと10万を超えました。目指すは100万アクセスです。

以下に1年分のGoogle Analyticsのユーザーサマリーを示しますが、バズることはないものの、順調にユーザー数が増えてきたことがわかります。これがなによりうれしい結果ですね。

デバイス別に見ていくと、PCから見ている人が38%、モバイルが60%、タブレット端末が2%という割合になりました。検索流入が増えた結果、モバイルからの閲覧がこれまでよりもさらに増えました。ただし、直帰率(1回の訪問で1記事だけ見る人)はPCが83%・モバイルが91%とPCの方ほうが低いので、PC経由の人のほうがじっくり読んで頂けているようです

次にアクセス元を見てみましょう。organic search(検索経由)が79%、次いでsocial(Twitterやfacebookなどのsns経由)が11%で、残りがdirect(ブックマークなど)の9%とreferral(snsや検索サイト以外のwebサイトからのリンク)の1%です。こちらも直帰率との関係を見ると、検索経由が90%、sns経由が82%、直接が78%、リンク経由が80%となり、検索経由よりも他を経由したほうがじっくり見られています

ここからは、この1年間のページごとのアクセス数から人気記事を見ていきます。

1位は日本の各種犯罪の被害者と加害者それぞれの男女差をデータで示し、さらに「夜間に1人で歩く際に安全だと感じる比率の男女差」の国際比較も示した記事です。これは書いた当初は全く読まれませんでしたが、2022年度の後半から女性が狙われる殺人事件がいくつか発生したことでアクセスが伸びたものと思われます。

犯罪リスクの男女差:日本はフェミサイド大国なのか?
日本は男女差別の面で遅れており、犯罪に関してもフェミサイド(性別が女性であることを理由に男性に殺されること)大国などと一部で呼ばれています。性犯罪以外の犯罪については被害者の男女割合は同程度が男性のほうが多くなっていました。ただし、安心感の男女差は諸外国と比較して大きくなっています。

2位は大麻のリスクについて書いた記事です。ブログ開始後かなり初期に書いた記事なのですが、これも当初はアクセスがさっぱりでした。芸能人が薬物で逮捕されるなどの事件があるたびにアクセスが増え、この1年では常にアクセスが高い状態となりました。

大麻は酒やたばこよりも安全か?リスク比較によって検証する
大麻の死亡リスクを推定したところ「10万人あたりの年間死者数1人」となり、酒「同15.9人」やたばこ「同59.9人」と比較してかなり低いものでしたが、絶対値として無視できるほど低いというわけでもありませんでした。死亡に至らない精神疾患なども考慮したDALYで比較しても、酒やたばことのリスクの差が埋まりませんでした。

3位は「お酒は18歳から」になぜならなかったのかを書いた記事です。2023年の成人式前後に一気にアクセスが上がり、そのまま人気記事になっています。

成年年齢の18歳引き下げにともない、なぜ「お酒は18歳から」にならなかったのか?
飲酒開始年齢の根拠はアルコールの有害性などの科学的根拠ではなく「20歳以上は成年であるから」であったため、成年年齢が18歳に引き下げられると自動的に「お酒は18歳からOK」になるはずです。ところが飲酒開始年齢の引き下げに動いた自民党に対して日本医師会が撤回要求をしたため先送りになったようです。

4位は珪藻土製品に含まれるアスベストのリスクについて書いた記事です。長期的に継続してアクセスが高い記事です。

珪藻土に混入したアスベストは危険なのか?その2:リスクを計算して比較する
珪藻土バスマット中のアスベストは危険なのかどうかを判断するために発がんリスクを評価しました。ヤスリで削ったり割ってしまった場合でも、もともと存在する自然由来のアスベストの吸入量と比べて二桁以上低くなり、発がんリスクも懸念レベルにないと判断されました。

5位は、オランダが公表した政策評価書において、ネオニコチノイド系農薬を禁止してもリスクが減っていないことを報告した内容を紹介した記事です。化学物質の規制にはリスクトレードオフの考慮が必須です。

オランダの政策評価書から明らかになったネオニコチノイド系殺虫剤禁止後のリスクトレードオフ
欧州でネオニコチノイド系殺虫剤が規制されましたが、その後のリスク低減効果について、オランダが公表した政策評価書の内容を紹介します。規制の当初から指摘されていたこと(ネオニコチノイド系殺虫剤を禁止しても他の農薬に切り替えるだけでリスクは減らない)が現実になったことが明らかとなっています。

以下、6位から10位まで順にリンクを並べます。

環境科学への違和感の正体~科学と社会運動の混在
危険をあおるほどインパクトファクターの高い科学雑誌に論文が掲載されやすい、という近年の環境科学に対するへの違和感の正体について、(1)科学と社会運動(〇〇すべき)の混在、(2)「リスクを減らしたい」ではなく「悪いものに罰を与えたい」という感情、(3)「正しさ」の押し付け、という3つの視点から整理しました。
オリンピックにおける性別確認:テストステロン10nMの基準値のからくり
今回は夏休みのため、通常のブログ記事の更新はお休みします。その代わりに、現在東京オリンピックの最中ということでもあるので、オリンピックにおけるトランスジェンダーを含む女子選手としての出場の基準値(テストステロン濃度10nM)の根拠について書いてみます。これも一種の線引き問題です。
みどりの食糧システム戦略における「化学農薬(リスク換算)50%減」を解説します
農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」では、2050年までに化学農薬の使用量をリスク換算で50%減という政策目標を打ち立てました。このリスク換算の方法として、毒性の強さを示すADI(許容一日摂取量)を使ってリスク係数を求めて使用量を重みづけしていく方向性が出されました。
マイクロプラスチック問題その3:被覆肥料カプセルの問題はリスクの問題ではない
被覆肥料のプラスチックカプセルの問題について、リスクの視点から全体像を整理しました。被覆肥料由来のマイクロプラスチックの排出は全体の1%以下であり、マイクロプラスチックの生態リスクは現状で懸念レベル以下であることから、リスクの問題というよりはごみ問題として考えるべきです。
多くの人が間違って使っている言葉「予防原則」について改めて解説します
あまり理解せずに使っている例が多い「予防原則」という考え方についてまとめます。「予防原則」と「予防的アプローチ」と「未然防止」の違いについて、弱いバージョンと強いバージョンの違いについて、リスクトレードオフには対応できないこと、について解説していきます。

上位10記事のうち3つがこの1年に書いた記事になります。他の7つは1年以上前に書いた記事ですから、長い間アクセスが高い記事ということになります。内容的には、やはり化学物質系の記事が多くなっていますね。

本ブログの検索エンジンからの評価

以前は検索経由のアクセスのうちBingが約半数を占めており、Google経由はそれよりも低くなっていました。ブログ開始後半年の2020年度上半期まで本ブログはGoogle先生から完全に「無視」されている状況でしたが、2020年度下半期から少しずつGoogle先生から認知されるようになってきました。それではこの期間におけるBing経由とGoogle経由のアクセス数の推移を見てみましょう。

1年前まではBing経由のほうがGoogle経由よりも多かったのですが、この1年で完全に逆転し、今では完全にGoogle経由が圧倒しています。反対にBing経由は伸び悩んでいます。

Google serach consoleで調べられる検索キーワードをテキストマイニングにかけて単語登場頻度を解析すると以下のようになります。以前に上位を占めていたコロナ関連のワードはほとんどなくなり、代わりに大麻、酒、タバコ、犯罪、アスベスト、農薬などのワードが上位になりました。

順位キーワード
1大麻
2
3犯罪
4タバコ
5男女
6珪藻土
7飲酒
8成人
9年齢
10リスク
11アスベスト
12死亡
13日本
14農薬
15危険
16マリファナ
17結婚
18
19ネオニコチノイド
20マット

また、この1年に書いた記事のキーワードを用いてGoogleとBingで実際に何位に出てくるのかを調べてみました(広告を除いた順位):
・「シロアリ ネオニコチノイド」はGoogleで8位、Bingで6位
・「毒展 リスク」はGoogleで1位(!)、Bingで4位
・「リスクコミュニケーション AI」はGoogleで2位と3位、Bingで3位と4位
・「マイクロプラスチック タイヤ」はGoogleで15位、Bingで5位
・「グリホサート リスク」はGoogleで42位、Bingで50位までなし
・「農家 長寿命」はGoogleで1位(!)、Bingで4位と5位
・「犯罪 男女差」はGoogleで2位、Bingで2位

以前はGoogleよりもBingでより上位に出てくる傾向がありましたが、現時点ではそのような傾向がなくなり、両方の検索エンジンからほぼ同様の評価を得られるようになりました。そうなると両者のシェアの差から必然的にGoogle経由が圧倒するようになったと考えられます。

個別記事の評価

個別記事の評価ツールについては、記事に対して「いいね」をつける機能「WP-PostRatings」を実装しています。この1年間でいいねがついた数は300、同期間のページビューは53379なので、評価率は約0.6%です。その前の半年は1%程度でしたので、下がっています。

そして、もっともいいねが多くついた記事はコレです↓

環境科学への違和感の正体~科学と社会運動の混在
危険をあおるほどインパクトファクターの高い科学雑誌に論文が掲載されやすい、という近年の環境科学に対するへの違和感の正体について、(1)科学と社会運動(〇〇すべき)の混在、(2)「リスクを減らしたい」ではなく「悪いものに罰を与えたい」という感情、(3)「正しさ」の押し付け、という3つの視点から整理しました。

また、もっとも評価率(いいね数/アクセス数)が高かった記事はコレです↓ 4.7%という高い評価率でした。

生態リスクを考える際のポイントその2~日焼け止め成分が紫外線により毒性が強くなる?
日焼け止め成分が紫外線照射により毒性の高い代謝物に変化するという内容の論文を例に、化学物質の生態リスクを考える際のポイントを紹介します。現実的な濃度よりも数桁以上も高い濃度で実験されており、実際の環境中で同様の影響が起こるかどうかを考えることがポイントになります。

さらに情報発信の効果の測定方法についての記事の中では、Twitterでブログ記事を紹介してリンクを貼りましょうと書きました。逆にブログにもTwitterのタイムラインを表示しています。Twitterアナリティクスというツールでさらに情報の広がり具合を解析できます。ここではエンゲージメントという指標に注目します。

エンゲージメント総数=いいね数+リツイート数+返信数+フォロー数+URLのクリック数

ブログの新規更新を紹介するツイートでエンゲージメントが多かった記事トップ3を挙げてみます。

除草剤グリホサートの健康影響その3:グリホサートの発がんリスクの大きさはどれくらいか?
農薬の発がん性は科学的に完全な白黒がつくものではないため、発がん性あるなしの禅問答は尽きません。その禅問答から抜け出すには、発がん性があると仮定してそのリスクを計算することが有用です。除草剤グリホサートを例に発がんリスクを計算する方法を解説します。
除草剤グリホサートの健康影響その2:農薬の疫学調査はなぜ難しいのか?
グリホサートの発がん性の根拠とされている疫学調査のメタアナリシスを事例に、農薬の疫学調査はなぜ難しいのか?を解説します。農薬の疫学研究が難しいのは、農薬の曝露量の推定が難しいことが一番の理由です。結果として、信頼性の低い研究を積み上げたメタアナリシスの信頼性もまた低いということになります。
国立科学博物館の特別展「毒展」は人工物の扱いが残念
2022年11月1日から2023年2月19日まで国立科学博物館で開催された特別展「毒展」に行ってきました。今回はそこで感じたこと(人工物の扱いが残念だった)を書いてみます。リスク評価・管理の考え方が不足していたと思います。

Twitterでは農業系のフォロワーさんがどんどん増えていますので、農薬関係の記事にエンゲージメントが多くなる傾向があります。このように、アクセス数だけで評価するのに比べてまた違った面から評価ができるようになりました。

ブログの今後の展望

ブログの運用としてはこれまで通り、基本的に週1回の更新ペースを維持していく予定です。ただし、コロナによる制限が緩和され、対面のイベントが増えたことから出張も多くなり、今後はこれまでのようには書けないことも増えると予想されます。年間40記事程度を目標にします。

内容も大きく変わることはないですが、フェミサイドの記事や飲酒開始年齢の記事など、どんな記事が人気が出るかは書いてみないとわからないことも多く、とにかくいろんな分野のリスクについて書くことは続けようと思います。

また、リスク評価を身近にするwebアプリケーションとして、RiskTools(ブログのヘッダメニューかにリンクがあります)を公開していますが、この1年でかなり改良することができました。死因のみでなくリスク要因の評価ツールも試作版ではありますが公開しています。

以下の記事でも書いていますが、損失余命などの評価も表示できるようにするのがこの1年の目標です。

リスク比較のためのRisktools ver2を公開しました
リスク比較のためのWEBアプリ「Risktools」を作っています。今回公開した改良版(ver2)では、死因、年齢階級、評価する年、性別を選択すると、リスクのものさしに加えて経年変化・性別・年齢別のグラフが表示される機能を追加しています。特に経年変化は興味深い結果がいろいろと得られます。
http://risktools.nagaitakashi.net/

今後もデータをとり続けたいと思いますが、Google Analyticsは現行のバージョンが7月で終了し、その後も現在のようなデータがとり続けられるかどうかはわかりません。この辺が大きな変化となるでしょう。

まとめ:ブログ3年経過、最近の1年の実績

この1年でアクセス数が着実に増えており、Google先生からの評価も一気に上がりました。人気のある記事は、公開後にしばらくたってからじわりじわりとアクセスが増えてくる傾向があります。個別記事の評価については、アクセス数に加えて、記事評価ボタンによる評価、Twitterのエンゲージメントなど多角的なデータを収集して運用のヒントにしています。

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