リスクをテーマとするブログを書いて2年が経ちました―半年間の実績を振り返る4―

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要約

2021年10月から2022年3月までの半年間のブログの実績をGoogle Analyticsのデータを中心に振り返ってみます。WEBアプリケーションのRiskToolsの公開など新たな試みも始まりました。また、アクセス数に加えて記事評価ボタンによる評価、Twitterでの反応など多角的なデータを収集しています。

本文:ブログ2年経過、最近の半年の実績

ブログを開始して2年となりました。半年ごとにアクセスのデータを見ながら振り返りをしているので、今回は4回目となるブログの運用について振り返る記事を書きたいと思います。以前の振り返り記事はコチラです。

ブログ
「ブログ」の記事一覧です。

2020年度は週2回、2021年度からは週1の更新となり、これまで2年間で合わせて154記事をアップしました。

この半年のリスクに関するトピックといえば、コロナのオミクロン株による第6波、反ワクチンなどのワクチンをめぐる騒動、ロシアによるウクライナ侵攻あたりが主なところでしょう。

実のところ、ウクライナ侵攻が始まったあたりからブログのアクセスが落ちており、「リスク」に関する注目の多くがウクライナ情勢に集まっていることがうかがえます。他のリスクまで考えていられない、ということですね。

以下では、データ分析の中心であるGoogle Analyticsの結果、アクセス上位の記事の紹介、検索エンジンからの評価、個別記事の評価の順で書いていきます。

Google Analyticsから見る本ブログの半年の実績

Google Analyticsでアクセス解析を行っています。基本データは以下の通りで、月間ユニークユーザー数は平均1600人程度となり、2021年度上半期と比べると1.5倍くらいになりました。ページビューは21820です。11月にドンとアクセスが大きくなっていますが、欧州におけるネオニコチノイド系農薬の禁止がオランダでは生態リスクの低下につながらなかったという報告書を紹介した記事がTwitterで拡散された結果です。

user

デバイス別に見ていくと、PCから見ている人が50%、モバイルが47%、タブレット端末が3%という割合になりました。Twitterでバズった結果、モバイルからの閲覧がこれまでよりも増えています。ただし、直帰率(1回の訪問で1記事だけ見る人)はPCが81%・モバイルが89%とPCの方が低いので、PC経由の人の方がじっくり読んで頂けているようです。

次にアクセス元を見てみましょう。organic search(検索経由)が48%、次いでsocial(Twitterやfacebookなどのsns経由)が40%で、残りがdirect(ブックマークなど)の11%とreferral(snsや検索サイト以外のwebサイトからのリンク)の1%です。

access

ここからは、この半年間のページごとのアクセス数から人気記事を見ていきます。

アクセス数のトップは、オランダが公表した政策評価書において、ネオニコチノイド系農薬を禁止してもリスクが減っていないことを報告した内容を紹介した記事です。化学物質の規制にはリスクトレードオフの考慮が必須です。

オランダの政策評価書から明らかになったネオニコチノイド系殺虫剤禁止後のリスクトレードオフ
欧州でネオニコチノイド系殺虫剤が規制されましたが、その後のリスク低減効果について、オランダが公表した政策評価書の内容を紹介します。規制の当初から指摘されていたこと(ネオニコチノイド系殺虫剤を禁止しても他の農薬に切り替えるだけでリスクは減らない)が現実になったことが明らかとなっています。

2位はソーシャルディスタンスはなぜ「2m」かという「からくり」を書いた記事です。2020年度上半期で1位、下半期で2位、2021年度上半期で1位でしたが、継続して人気があります。特にコロナオミクロン株による第6波の際にアクセスが伸びました。ただし、エアロゾル感染の状況がだいぶわかってきた現在としては少し古い情報になってしまいました。

何メートル離れれば安全なのか?ソーシャルディスタンスのからくり
ソーシャルディスタンスの距離は、ニュージーランドとイギリスで2m、米国では1.8m、オーストラリアで1.5m、シンガポールで1mです。日本ではマスクなしで2m、マスクありで1mです。この差は科学的な根拠に基づくものではなく、それぞれ科学と現実の狭間から生まれたものであろうと推測されます。

3位は、オリンピックにおける女子選手としての出場基準(テストステロン10nM)を書いた記事です。東京オリンピックはトランスジェンダー選手の出場が話題となりましたが、オリンピックが終わった10月以降もかなりアクセスが伸びていました。

オリンピックにおける性別確認:テストステロン10nMの基準値のからくり
今回は夏休みのため、通常のブログ記事の更新はお休みします。その代わりに、現在東京オリンピックの最中ということでもあるので、オリンピックにおけるトランスジェンダーを含む女子選手としての出場の基準値(テストステロン濃度10nM)の根拠について書いてみます。これも一種の線引き問題です。

4位は、被覆肥料に由来するマイクロプラスチック問題をまとめた記事です。農業法人TREE&NORF代表の徳本さんからブログを読んでご連絡いただき、ネオニコチノイド系農薬や被覆肥料由来マイクロプラスチックの問題について、対談した内容がYouTube動画になりました。その際に調べた内容をまとめた記事です。

マイクロプラスチック問題その3:被覆肥料カプセルの問題はリスクの問題ではない
被覆肥料のプラスチックカプセルの問題について、リスクの視点から全体像を整理しました。被覆肥料由来のマイクロプラスチックの排出は全体の1%以下であり、マイクロプラスチックの生態リスクは現状で懸念レベル以下であることから、リスクの問題というよりはごみ問題として考えるべきです。

5位は、除草剤グリホサートがはちみつ中から基準値を超えて検出されたニュースを受けて、そもそもはちみつやミツバチがどのような農薬で汚染されているのかの実態をまとめてリスク評価までを行った記事です。

はちみつやミツバチはどのような農薬で汚染されているのか?
グリホサートという除草剤の成分がはちみつ中から基準値を超えて検出されたことが話題になっています。ただし、そもそもはちみつやミツバチがどのような農薬で汚染されているのかは実際のところあまり知られていません。そこで農薬汚染の実態をまとめ、リスク評価を行いました。

以下、6位から10位まで順にリンクを並べます。

みどりの食糧システム戦略における「化学農薬(リスク換算)50%減」を解説します
農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」では、2050年までに化学農薬の使用量をリスク換算で50%減という政策目標を打ち立てました。このリスク換算の方法として、毒性の強さを示すADI(許容一日摂取量)を使ってリスク係数を求めて使用量を重みづけしていく方向性が出されました。
珪藻土に混入したアスベストは危険なのか?その2:リスクを計算して比較する
珪藻土バスマット中のアスベストは危険なのかどうかを判断するために発がんリスクを評価しました。ヤスリで削ったり割ってしまった場合でも、もともと存在する自然由来のアスベストの吸入量と比べて二桁以上低くなり、発がんリスクも懸念レベルにないと判断されました。
多くの人が間違って使っている言葉「予防原則」について改めて解説します
あまり理解せずに使っている例が多い「予防原則」という考え方についてまとめます。「予防原則」と「予防的アプローチ」と「未然防止」の違いについて、弱いバージョンと強いバージョンの違いについて、リスクトレードオフには対応できないこと、について解説していきます。
生物多様性への取り組みって何すればいいの?と悩んだ時の3つの戦略
SDGsやCSR、ESG投資対応で「生物多様性」に取り組まねばならないけど何をしたらよいのかわからない、という悩みに対しての3つの戦略を示します。いずれも本業と密接に関わり企業価値を向上させるような取り組みをするべきであるとまとめられます。
トンデモ科学を撲滅せねば!と憤慨したときに考えるべきことその1:反ワクチンから抜け出した話を読んで
反ワクチン思想から抜け出したという話がTwitterで話題になっていますが、これは反ワクチンの人が読むべきというよりはトンデモ科学を撲滅せねば!と憤慨している人こそ読むべきです。合理的=科学的とは限らず、判断の背後にある物語や価値観を理解することが重要です。

上位10記事のうち5つがこの半年に書いた記事になります。内容的には、やはり化学物質系の記事が多くなっていますね。テストステロンも化学物質に含めれば6/10が化学物質の記事で占められています。

意外と伸びたなあと感じたのが8~10位の記事です。特に生物多様性の取り組みについて書いた記事は、最初のアクセスがほとんどなかったところから、時間が経過するにつれてどんどん伸びてきており、嬉しい限りです。

本ブログの検索エンジンからの評価

この半年では検索経由のアクセスのうちBingが53%、Googleが37%、残り10%がYAHOOやduckduckgoでした。ブログ開始後半年の2020年度上半期は本ブログはGoogle先生から完全に「無視」されている状況でしたが、2020年度下半期から少しずつGoogle先生から認知されるようになっています。この期間におけるBing経由とGoogle経由のアクセス数の推移を見てみましょう。

search

検索経由のアクセスは上昇傾向にあります。2022年1月にピークが見られますが、これはオミクロン株によるコロナ第6波の影響でしょう。Google analyticsで調べられる検索キーワードをテキストマイニングにかけて単語登場頻度トップ20を解析すると以下のようになります。コロナ、距離、ソーシャルディスタンス、感染、間隔、マスク、飛沫などの単語が上位にあることがわかりますね。ただし、Serach consoleのほうでは珪藻土アスベストやオリンピックの性別確認がよく検索されていることもわかります。

AnalyticsSerach console
コロナ珪藻土
距離オリンピック
リスクアスベスト
ソーシャルディスタンス性別
農薬肥料
基準検査
換算リスク
感染死亡
間隔コロナ
マスクテストステロン
生物多様性大麻
肥料はちみつ
飛沫プラスチック
予防マット
戦略農薬
接触危険
システム回収
食料被覆
濃度ニトリ
みどり比較

また、この半年に書いた記事のキーワードを用いて実際に何位に出てくるのかを調べてみました:
・「被覆肥料 マイクロプラスチック」はGoogleで7位、Bingで2位
・「農薬 はちみつ」はGoogleでは出てこない、Bingで6位
・「予防原則」はGoogleでは出てこない、Bingでは4位
・「生物多様性 取り組み」はGoogleでは出てこない、Bingでは3位
・「トンデモ科学」はGoogleでは出てこない、Bingでは3位

Google先生にもだいぶ認められてきたものと思っていましたが、結構手厳しいですね。Bing先生の方が相変わらず優しいようです。さらにGoogle先生にも認められるように今後も精進します。

個別記事の評価

以前に、WEBによる情報発信の効果の測定方法についての記事の中で個別記事の評価ツール(reaction buttons)を導入したことを書きました。

リスクコミュニケーションの成功・失敗とは何か?その1:WEBによる情報発信の効果の測定方法
リスクコミュニケーションが成功した・失敗したなどと語られることがありますが、何をもって成功・失敗と言うのでしょうか?WEBによる情報発信を例にして、計測によってその効果を評価する方法を紹介します。ユーザーによる評価、A/Bテストによる表現方法の違いの評価、SNSを用いた情報発信後の反応を計測する方法を活用します。

その後、ユーザー視点での評価の簡便さや集計のしやすさを考えて、評価ツールを「WP-PostRatings」に変更しました。これは単純に記事に対して「いいね」をつけるだけになっています。

お探しのページが見つかりませんでした | 鯖ポタ
お探しのページが見つかりませんでした。

この半年間でいいねがついた数は196、同期間のページビューは21820なので、評価率は約1%です。以前のreaction buttonsも評価率は1.2%であったのでほとんど同じですね。簡単にした分もう少し評価率があがるかと思いましたが、そうでもないようです。

そして、もっともいいねが多くついた記事はコレです↓

はちみつやミツバチはどのような農薬で汚染されているのか?
グリホサートという除草剤の成分がはちみつ中から基準値を超えて検出されたことが話題になっています。ただし、そもそもはちみつやミツバチがどのような農薬で汚染されているのかは実際のところあまり知られていません。そこで農薬汚染の実態をまとめ、リスク評価を行いました。

また、もっとも評価率(いいね数/アクセス数)が高かった記事はコレです↓ 7.2%という高い評価率でした。アクセス数自体があまり伸びなかったのでもったいないと思っています。

「若者でもコロナで重症化することがある、死ぬ可能性はゼロではない」という論法はなぜダメなのか?
医療関係者がよく使う「若者でもコロナで死ぬ可能性はゼロではない(だからもっとコロナを怖がろう)」という論法は、反ワクチンなどが使う「ワクチンで死ぬ可能性はゼロではない(だからもっとワクチンを怖がろう)」という論法と全く同じであり、分母無視の法則の悪用例です。

さらに、Twitterで毎回ブログ記事を紹介してリンクを貼っているので、Twitterアナリティクスでその反応を解析できます。ここではエンゲージメントという指標に注目します。

エンゲージメント総数=いいね数+リツイート数+返信数+フォロー数+URLのクリック数

ブログの新規更新を紹介するツイートでエンゲージメントが多かった記事トップ3を挙げてみます。 

はちみつやミツバチはどのような農薬で汚染されているのか?
グリホサートという除草剤の成分がはちみつ中から基準値を超えて検出されたことが話題になっています。ただし、そもそもはちみつやミツバチがどのような農薬で汚染されているのかは実際のところあまり知られていません。そこで農薬汚染の実態をまとめ、リスク評価を行いました。
「農家は長寿命」はファクトか都市伝説か?を検証します
「農家は長寿命」というSNSなど(県の政策文書にも!)でまことしやかに語られる説を検証します。(1)農業者の医療費は非農業者よりも低い、(2)農業者の死亡時平均年齢は非農業者よりも高い、(3)農家の割合が多くなると死亡率を下げる、という根拠が示されていますが、適切な解釈のためにはさまざまなバイアスを取り除く必要があります。
衣食足りて礼節を知る?~農業×SDGsの波は順番が逆~
「衣食足りて礼節を知る」すなわち、SDGsにおいてもまずは食うに困らない安定した生活基盤があって初めて環境保全などのプラスαの取り組みがうまくいきます。農業においても、大規模農家のほうが環境保全に取り組む余裕が出てくるため結果的に取り組みが進んでいます。

Twitterでは農業系のフォロワーさんがどんどん増えていますので、農業関係の記事にエンゲージメントが多くなる傾向があります。このように、アクセス数だけで評価するのに比べてまた違った面から評価ができるようになりました。

RiskToolsの開発など今後の展望

ブログの運用としてはこれまで通り、週1回の更新ペースを維持していく予定です。ときおり休みを入れますが年間50記事は書きたいですね。内容も大きく変わることはないですが、この半年で被覆肥料のマイクロプラスチックの話など少し農業系の記事の比重を増やしつつあり、それは今後も継続していきます。

1年前に書いたブログ実績報告の記事にて、この先1年での新たな試みとしてリスク評価を身近にするツール(webアプリケーション)の開発を目標に掲げました。便利なwebベースのツールをサクッと開発して実装する、みたいなことができるようになりたいと考えていたためです。

これは2022年1月にRiskTools(ブログのヘッダメニューかにリンクがあります)を公開して一応達成することができました。ただし、まだまだとりあえず作ったという段階なので、さらに改良していきたいと思います。

リスクのものさし表示ツールの開発~非エンジニアがPythonでWebアプリを作ってみた
リスク比較の手法として有用な「リスクのものさし」を表示するWebアプリケーションをPythonを使って開発しました。私のような非エンジニアでもサクっとWebアプリを作って実装するための、さまざまなツールと学習するための教材(書籍やWeb上の情報)を紹介します。
http://risktools.nagaitakashi.net/

ブログも2年運用してきたところでだいぶノウハウの蓄積もできてきました。そこで、そのようなノウハウをまとめた情報発信方法(ブログ術)の記事なども書いてみたいと思います。

まとめ:ブログ1年半経過、最近の半年の実績

この半年でアクセス数などは着実に増えており、RiskToolsの公開など新たな試みも始まっています。個別記事の評価については、アクセス数に加えて、記事評価ボタンによる評価、Twitterでの反応(エンゲージメント)など多角的なデータを収集して運用のヒントにしています。

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