2020年12月の「リスクコミュニケーション」を分析してわかったこと~SNS定点観測結果20~

twitter SNS定点観測

要約

リスクコミュニケーションに関するツイート・ニュースを解析しています。2020年12月はコロナ第3波の感染拡大が続く中で再びリスコミへの注目度は上がっており、特にワクチンの話題が急増しました。HPVワクチンの二の舞いを防ごうという流れが大きくなっています。

本文:12月のリスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションに関する一般の動向を探るため、ツイッター上で「リスクコミュニケーション」、もしくはその略称である「リスコミ」を含む発言を収集して解析しています。これまでのsns定点観測結果はこちらにあります。

SNS定点観測
「SNS定点観測」の記事一覧です。

本記事では2020年12月のツイートを解析した結果を報告します。発言数の推移と使用頻度の高い単語、「いいね」数トップ10ツイート、ニュース・ブログ記事の順で見ていきましょう。

リスクコミュニケーションに関するツイート数の経時変化とツイート内の単語の使用頻度

まずは2020年12月分を含めたツイート数の変化を下図に示します。

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新型コロナウイルスによるコロナ禍が始まるまでは月に100件程度であったリスコミ関係ツイートは、4月に3000件を超えてピークに達しましたが、その後は感染再拡大の際にも関係なく先月まで減少傾向を続けていました。11月からコロナ第3波とともに増加に転じており、12月のツイート数は5月ころの水準まで増えてきました。

次に、使用頻度の高い単語トップ50単語(リスク、コミュニケーション、リスコミの3つを除いています)をワードクラウドにまとめてみました。

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今まであまり目立ってこなかった「ワクチン」が一躍トップに躍り出ました。リスコミの大本命です。コロナ発生から8月までは「専門」がずっとトップで、9月以降は「コロナ」「感染」がトップでしたが、欧米でいよいよワクチン接種が開始となり注目が高まっています。その代わりに、先月までいくつか入っていた食品や原子力などコロナ関連以外の単語はほぼ消えたという状況です。

ワクチンとともに注目すべきワードが「HPV」「二の舞」です。コロナワクチンはHPVワクチンの二の舞い(マスコミのネガティブキャンペーンにより接種率が激減)にしてはならないという意見が目立ちました。「nonbeepanda」というワードは最初??でしたが、BuzzFeedJapanの記者である岩永直子さんのアカウント名で、このあたりの発言を多数しています。

もう一つこれまであまりなかったワードとして今月9位に出てきた「仕組み」があります。これは結構意外ですね。リスコミの仕組みがないことが問題であることはもっと自明のことかと思っていましたが(本ブログでも何度も書いています)、今更なぜこういう声が大きくなるのでしょうか。

個人名としては「尾身」「菅」が入っており、菅首相よりコロナ分科会会長の尾身さんの方が順位が上でした。首相の発するメッセージが弱いというのはずっと言われ続けていますが、こういう順位差を見てもわかりますね。

リスクコミュニケーションに関するトップ10ツイートの内容

「いいね(fav、ふぁぼ)」が多かったトップ10ツイートを抽出し、トピックと要約を手作業でつけました。いいねがたくさんついたツイートほど、多数の人が共感を得たツイートであると考えられます。これを見ていくことでリスクコミュニケーションのヒントが得られるかもしれません。

2020年12月のリスクコミュニケーショントップ10ツイートの要約は以下の通りです。先月はトップ10全てがコロナウイルス関係でしたが、今月もトップ10のうち9つがコロナウイルス関係となりました。

順位トピック要約
1コロナリスコミがうまくいかずに感染症学は後退していく
2コロナHPVワクチンの二の舞にならないようにリスクコミュニケーションの仕組みを作ることが重要
3コロナGoToキャンペーンをインパール作戦に例えるのはリスコミ的に不適切
4コロナ忽那先生はリスコミが上手い
5コロナ報道関係者にもリスクコミュニケーションの講習が必要
6コロナ検査を増やさずにリスコミも何もない
7コロナ政治家の(会食するなどの)行動がメッセージになり、(良くない)リスクコミュニケーションになる
8環境問題環境配慮を売りにした商品について、(トラウデン直美さんのように)店に尋ねるより、自分で選んだほうが良い
9コロナ忽那先生はリスコミが上手い(検査陽性率の解釈について)
10コロナ尾身先生が素人集団の前で「移動では感染しない」といったのはまずかったのでは

2位のリスコミの仕組みが重要という話はコロナ分科会の提言内容のようです。ただ、専門家会議のときからずっと言っていると思うのですが。

4位と9位に登場する忽那先生の記事は私もよく参考にしています。最近ではワクチンに関することもよく書かれています。

7位の政治家がこんなに会食しているというニュースは一時期よく見られました。こういう「政治家ケシカラン」論調の記事はむしろ悪影響であると思われますが、それにしても政治家側も脇が甘すぎると思います。

「緊急事態宣言下なのに外出している奴がこんなにいる」という報道は逆効果
「緊急事態宣言なのに外出している奴がこんなにいる」という論調の報道は怒りの感情を高めるだけで逆効果となり、逆に「自粛している人がこんなにいます」という部分を強調したほうが一人一人の行動の効果を実感できるため効果的と考えられます。現状では出歩いている奴を罰したいという感情を高め、人々の分断や差別をまねく懸念があります。

ニュースとブログ記事

NwesAPIを用いたニュースとブログの分析も行っています。方法については以前の記事を参照ください。

2020年6月の「リスク」を分析しました~SNS定点観測結果7~
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2020年6月の調査結果からは、コロナ関連の話題は現減少を続け、人々の意識が経済優先に傾いていることがわかりました。各種の行動をとってもよいかどうかの判断基準については引き続き高い情報ニーズがありますが、対応する情報提供がないままです。

2020年12月の「リスクコミュニケーション」を含むニュース・ブログ記事は6件と、平均5件前後でずっと続いています。内容としては原発事故関連が1件、残り5件はコロナ関係です。以下に記事のタイトルを表にして示します。

タイトルソース
福島第一の汚染水、風評対策の予算4倍に 情報発信強化Asahi.com
リスク誤認がある限り、市民の正しい行動変容は起こらない 誤ったメッセージによる感染抑制効果は限定的 – 山崎 毅(食の安全と安心)Blogos.com
安倍前首相の会見で「印象に残ったフレーズ」はあるか。危機下で「最悪のシナリオ」を持たない弊害とはHuffingtonpost.jp
宮根誠司氏、有働キャスターの菅首相インタビュー見て「今まで政府の方針が伝わってなかったのがわかった」Livedoor.com
「正しく恐れる」には リスクコミュニケーションの重要性Livedoor.com
「コロナ拡大」語らぬ首相 文章読み、質問はスルー 4日やっと会見Livedoor.com

原発事故関連の1件は、来年度予算案として風評対策とリスクコミュニケーション強化対策に前年度の4倍の20億円を計上した、というものです。福島県産食品などの輸入規制を続ける16カ国に規制撤廃を働きかけるための情報発信を強化するらしいです(これってコミュニケーションの問題??)。

コロナ関連では紹介に値するような面白いものはなかったです。明らかに後知恵バイアスに引っ掛かったような安易な記事もあります。コロナ対策やリスコミで政権批判したくなった時には、まず本ブログの以下の過去記事を読んで頭を冷やすのが良いと思います。コロナ感染が一旦収束していた6月にアップした記事ですが今でも状況は変わっていないと思います。

なぜコロナウイルスのリスクについて「俺は最初から知っていた」論者が後から湧いて出てくるのか?予測のリスク学その2
人の記憶は結果がわかってから「最初からそうだと思っていた」というように都合よく置き換わるバイアスがあります。なので、コロナ対策のように不確実な状況での決定をたまたま成功しても失敗しても必然的に(能力が高い/低いから)そうなった、という評価をしてしまいがちです。

まとめ:12月のリスクコミュニケーション

2020年12月のリスクコミュニケーションを解析した結果、第3波の感染拡大が続く中で再びリスコミへの注目度は上がっており、特にコロナワクチンに関する注目が高くなっていました。HPVワクチンのようなネガティブキャンペーンが起こることを懸念しているようです。他にも、政治家が忘年会など大人数で会食しているとの報道への反応も見られました。

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