2021年1月の「リスクコミュニケーション」を分析してわかったこと~SNS定点観測結果22~

twitter SNS定点観測

要約

リスクコミュニケーションに関するツイート・ニュースを解析しています。2021年1月は全体としては感染拡大を懸念する声が大きく、トップツイートではワクチンのリスコミに関するものが目立ちました。ニュースでは、大学入試共通テストでリスコミ的に問題のある文章が出題されたという記事がありました。

本文:2021年1月のリスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションに関する一般の動向を探るため、ツイッター上で「リスクコミュニケーション」、もしくはその略称である「リスコミ」を含む発言を収集して解析しています。これまでのsns定点観測結果はこちらにあります。

SNS定点観測
「SNS定点観測」の記事一覧です。

本記事では2021年1月のツイートを解析した結果を報告します。発言数の推移と使用頻度の高い単語、「いいね」数トップ10ツイート、ニュース・ブログ記事の順で見ていきましょう。

リスクコミュニケーションに関するツイート数の経時変化とツイート内の単語の使用頻度

まずは2021年1月分を含めたツイート数の変化を下図に示します。

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新型コロナウイルスによるコロナ禍が始まるまでは月に100件程度であったリスコミ関係ツイートは、4月に3000件を超えてピークに達しましたが、その後は感染再拡大の際にも関係なく先月まで減少傾向を続けていました。11月からコロナ第3波とともに増加に転じており、1月も増加傾向を続けています。先月からワクチンに関する話題が多くなっており、リスコミに注目が集まっています。

次に、使用頻度の高い単語トップ50単語(リスク、コミュニケーション、リスコミの3つを除いています)をワードクラウドにまとめてみました。

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先月はワクチンがトップでしたが、もう13位まで交代してしまいました。ただし、次に書く話題のツイートトップ10ではワクチンの話題が多いので、まだまだ注目は大きいと思われます。ただし、1月は2回目の緊急事態宣言が発令され、まずは目の前にある感染拡大を懸念し感染者数を下げないといけない、というのが全体の雰囲気かと思われます。

「失敗」、「最悪」、「絶望」という単語がランクインしているのが目立ちます。リスコミ失敗、最悪のリスコミ、リスコミが絶望的に下手など、強い表現が目立つのはツイッターの平常運転ではありますが、1月は特にそういう表現が目立ったということでしょう。やはり緊急事態宣言が出て医療崩壊の危機が最も高くなった時期なので、怒りをぶつけたい気持ちが高かったのではないでしょうか。

リスクコミュニケーションに関するトップ10ツイートの内容

「いいね(fav、ふぁぼ)」が多かったトップ10ツイートを抽出し、トピックと要約を手作業でつけました。いいねがたくさんついたツイートほど、多数の人が共感を得たツイートであると考えられます。これを見ていくことでリスクコミュニケーションのヒントが得られるかもしれません。

2021年1月のリスクコミュニケーショントップ10ツイートの要約は以下の通りです。先月はトップ10のうち9つがコロナウイルス関係でしたが、今月はついにトップ10全てがコロナウイルス関係となりました。

順位トピック要約
1コロナテレワーク率7割を目指すなら最初から「7割でいいです」と言ってはいけない
2コロナニュージーランドの首相は毎日保健省の人と(コロナに関して)記者会見してFacebokでも補足していた
3コロナコロナワクチンの不安をあおる報道について、医療者の高圧的な態度や政府のリスクコミュニケーションの下手さも問題
4コロナ病気のリスクと予防接種によるリスクを比較してはいけないというならどうすればよいのか
5コロナ報道機関は国民の恐怖をあおるよりまじめにリスコミ頑張ろう
6コロナリスコミが上手くいってないので、飲食店への自粛要請に対する反発が大きくなる
7コロナリスコミの基本は情報を全て開示することなので、ワクチンの効果もリスクも隠すことなく伝える方針
8コロナテレワーク率22%のニュースについて最初から「7割でいいです」というからこうなる
9コロナワクチンの副反応はあるが確率的に低いことをどう伝えるか、リスコミが鍵
10コロナコロナワクチンのリスコミが必要とされる一方で不安をあおる報道も見られている

1位と8位のツイートは同じ方(神戸大学の感染症専門家)によるほぼ同じ内容のもので、政府のメッセージの出し方を批判しています。そして政府のリスコミ専門家は一体何をしているのか?と問うています。〇〇にリスコミの専門家がいれば、、、という話と、〇〇にリスコミの専門家がいるのになぜ、、、?という話はわりとリンクしていると思います。別の機会に記事を書いてみたいと思います。

4位のツイートについて、前後の文脈を読んだわけではないのですが、コロナのリスクとワクチンのリスクを定量的に比較しようとしたところ、リスク比較全否定論者から「リスク比較はダメなリスコミ」というツッコミを受けてのツイートなのかなと想像します。原発事故の時にも突然湧いて出てきたリスク比較全否定論者がまた湧いてきているのかもしれません。

全体的にワクチンをめぐるリスコミの話題が多いですね。いよいよワクチン接種が日本でも始まりましたのでこれからがリスコミ本番です。ワクチン接種後に死亡みたいな話(ただしワクチンとは無関係)はこれからたくさん出てくるからです。これについてはすでに分母無視の法則や、特定できる被害者効果という心理的効果に絡めて書きました。

確率で書くとわかりにくいのでやめよう!その4:ワクチンの有効率・副作用と分母無視の法則
確率で書くとわかりにくい例として「ワクチンの有効性95%」や、分母を無視して判断を誤りやすい例として「ワクチン接種後に〇〇人死亡」について解説します。確率よりも頻度で示したほうがわかりやすくなりますが、頻度であっても分母を揃えて比較しないと容易に判断を誤ります。
ワクチンはなぜ嫌われるのか?メリットよりもデメリットに注目が集まる心理的要因
ワクチンはなぜ嫌われるかを心理学の「特定できる被害者効果」によって説明しました。ワクチンによって救われているはずの多数の命は「単なる統計的情報」である一方、ワクチンの副反応で苦しんだ特定の個人の声のほうが心理的なインパクトが大きくなるので、メリットよりもデメリットに注目が集まりやすくなります。

ニュースとブログ記事

NwesAPIを用いたニュースとブログの分析も行っています。方法については以前の記事を参照ください。

2020年6月の「リスク」を分析しました~SNS定点観測結果7~
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2020年6月の調査結果からは、コロナ関連の話題は現減少を続け、人々の意識が経済優先に傾いていることがわかりました。各種の行動をとってもよいかどうかの判断基準については引き続き高い情報ニーズがありますが、対応する情報提供がないままです。

2021年1月の「リスクコミュニケーション」を含むニュース・ブログ記事は11件と、これまで平均5件前後で続いてきたのに比べると多いです。内容としては日本リスクコミュニケーション協会に関するものが6件と最も多く、続いてコロナ関連が3件でした。以下に記事のタイトルを表にして示します。

タイトルソース
大学入学共通テスト、甘味料の問題文にもの申す教育への信頼と食のリスクコミュニケーション – 食の万華鏡Ismedia.jp
自分のリスク、家族のリスク、社会のリスク ~ワクチンもマスクと同じ”集団予防”の強力な武器~ – 山崎 毅(食の安全と安心)Blogos.com
経営者必見!米国新大統領就任緊急企画!今知るべき世界各国リーダーのリスクコミュニケーション(RC)~世界・日本のリーダーのRC事例から読み解くRCのあり方~RCIJ主催無料ウェビナーOsdn.jp
経営者必見!米国新大統領就任緊急企画!今知るべき世界各国リーダーのリスクコミュニケーション(RC)~世界・日本のリーダーのRC事例から読み解くRCのあり方~RCIJ主催無料ウェビナーPrtimes.jp
Risk Communication Institute of Japan (RCIJ)経営者必見!米国新大統領就任緊急企画!今知るべき世界各国リーダーのリスクコミュニケーション(RC)~世界・日本のリーダーのRC事例から読み解くRCのあり方~RCIJ主催無料ウェビナーCNET
「サイバー攻撃とRCについて ~世界と日本の事例とベストプラクティス~」無料ウェビナー開催~2021年2月4日(木)15:00-16:00~Thebridge.jp
食品に関するリスクコミュニケーション「輸入食品の安全性確保に関する意見交換会」を開催します~1月28日にオンラインで開催、参加者を募集~Mhlw.go.jp
【緊急事態宣言】コロナ対策を拒む日本人の「正解主義」という病Newsweekjapan.jp
【船橋洋一×國井修】日本のコロナ対策に足りない3つの要素Newsweekjapan.jp
Risk Communication Institute of Japan (RCIJ)【令和時代にアップデート~ハラスメント対策2021~】今求められる「従業員との信頼の築き方」とは?無料ウェビナーを開催~ 2021年1月18日(月)15:00-16:00 ~CNET
【令和時代にアップデート~ハラスメント対策2021~】今求められる「従業員との信頼の築き方」とは?無料ウェビナーを開催~ 2021年1月18日(月)15:00-16:00 ~Osdn.jp

まず1番目の記事は、大学入学共通テストの英語の出題が、食品安全の視点から見ておかしな内容であったことを指摘するものです。低カロリー甘味料に発がん性があったり様々な健康上の懸念を示すことが問題文に書かれており、科学的に誤りなだけでなく不安をあおるような内容なので問題だということでした。大学入試センターの理事長は元々農薬の専門家の方で、食品安全やリスコミにも造詣の深い方なので、このニュースにはびっくりしました。

8と9番目は前後編にわたる記事ですが、それほど面白い部分はありませんでした。リスコミに関しては以下のような記載がありましたが、誤った安全安心二分論に基づいており、よく意味がわかりませんでした。

この安心と安全のせめぎ合いが難しい。両方とも必要で、基本的には科学者の言う安全を踏まえず、安心だけでやるのは極めて危ない。安心と安全を一体として捉えることがリスクコミュニケーションの重要なところだと痛感した。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/01/post-95338.php

日本リスクコミュニケーション協会はいろいろなイベントを行っているようです。今月のニュースでは世界のリーダーによるリスコミ、サイバー攻撃とリスコミ、ハラスメント対策の3つがありました。

まとめ:2021年1月のリスクコミュニケーション

2021年1月のリスクコミュニケーションを解析した結果、全体的には緊急事態宣言下で感染拡大を懸念する声が大きくなり、トップツイートではワクチンのリスコミに関するものが目立ちました。ニュースでは大学入試共通テストでリスコミ的に問題のある文章が出題されたことが(私にとっては)大事件でした。

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