要約
リスクコミュニケーションに関するツイート・ニュースを解析しています。2020年10月はコロナに関する話題は減少し、相対的に原子力や食品関係の話題が目立つようになってきました。特に、トリチウムを含む処理水の海洋放出の決定見送りについてのニュースが大きな話題となりました。
本文:10月のリスクコミュニケーション
リスクコミュニケーションに関する一般の動向を探るため、ツイッター上で「リスクコミュニケーション」、もしくはその略称である「リスコミ」を含む発言を収集して解析しています。これまでのsns定点観測結果はこちらにあります。
本記事では2020年10月のツイートを解析した結果を報告します。発言数の推移と使用頻度の高い単語、「いいね」数トップ10ツイート、ニュース・ブログ記事の順で見ていきましょう。
リスクコミュニケーションに関するツイート数の経時変化とツイート内の単語の使用頻度
まずは2020年10月分を含めたツイート数の変化を下図に示します。先月からはシンプルにツイート数だけを示しています。
新型コロナウイルスによるコロナ禍が始まるまでは月に100件程度であったリスコミ関係ツイートは、4月に3000件を超えてピークに達しましたが、その後は感染再拡大の際にも関係なく減少傾向を続けています。10月は9月とほぼ同じとなりました。落ち着いている時こそリスコミを仕込む重要な時期だとは思うのですが、話題にすら上らなくなりつつあります。
次に、使用頻度の高い単語トップ50単語(リスク、コミュニケーション、リスコミの3つを除いています)をワードクラウドにまとめてみました。
かろうじてコロナがトップになりましたが、「食品」が2位(先月4位)まで上がってきました。添加物も順位を上げています。一方で、コロナ禍で6か月連続トップであった「専門」は10位以下にまで下がりました。
「トリチウム」「海洋」「放出」の単語が新たに入っており、これはトリチウムを含む処理水の海洋放出の決定を見送ったとのニュースがあったことを反映しています。
また、「クライシス」が新たにランクインしており、以下の新刊が話題になったようです。内容についてはよくわかりませんが、帯に「尾身茂氏推薦」と書かれているので公衆衛生分野の本のようです。
クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション(CERC)危機下において人々の命と健康を守るための原則と戦略 蝦名玲子
リスクコミュニケーションに関するトップ10ツイートの内容
「いいね(fav、ふぁぼ)」が多かったトップ10ツイートを抽出し、トピックと要約を手作業でつけました。いいねがたくさんついたツイートほど、多数の人が共感を得たツイートであると考えられます。これを見ていくことでリスクコミュニケーションのヒントが得られるかもしれません。
10月のリスクコミュニケーショントップ10ツイートの要約は以下の通りです。先月はトップ10のうち9つがコロナウイルス関係でしたが、今月はトップ10のうち4つがコロナウイルス関係となりました。
順位 | トピック | 要約 |
1 | 原子力 | (放射性廃棄物の最終処分場の文献調査に応募した)寿都町とのリスコミに努力すべき |
2 | 情報セキュリティ | (ドコモ口座を例に)リスコミはまずリスクをなんとかしてから |
3 | コロナ | 台湾はコロナ対策の初動やリスコミが良かった |
4 | コロナ | PCR検査が少ないのはリスコミの失敗とは関係ない |
5 | コロナ | 体操の内村選手の偽陽性の問題について、リスコミを含めて検査計画を立てるべき |
6 | 原発事故 | トリチウム海洋放出に関して、マスコミは風評被害を煽る発言ばかり取り上げる |
7 | ワクチン | ワクチンのリスコミは遅れている |
8 | リスコミ一般 | 日本企業はリスコミができない |
9 | リスコミ一般 | リスク対応は重要 |
10 | コロナ | 日本のコロナ対応はリスコミが脆弱 |
放射性廃棄物の最終処分場の文献調査に応募した寿都町やトリチウムを含む処理水の海洋放出の話題があるように、原子力関係が目立つようになりました(というよりもコロナ関係が目立たなくなり、相対的に原子力関係が浮上してきました)。
5位について、偽陽性はリスコミの問題なのだろうか、ちょっと疑問です。偽陽性のことを事前に何も考えてなかったという驚きの体制の問題かと思います。
ニュースとブログ記事
NwesAPIを用いたニュースとブログの分析も行っています。方法については以前の記事を参照ください。
10月の「リスクコミュニケーション」を含むニュース・ブログ記事は3件と、平均5件前後でずっと続いています。内訳はニュースが1件、ブログが2件です。以下に記事のタイトルを表にして示します。
タイトル | ソース |
福島原発のトリチウムを含む処理水~海洋放出のリスクはどの程度?~ – 山崎 毅(食の安全と安心) | Blogos.com |
GO TO EAT:感染リスク低減のポイントは・・~マスクを外したときに飛沫を浴びないこと~ – 山崎 毅(食の安全と安心) | Blogos.com |
感染症対策の司令塔、「東京iCDC」立ち上げ | Tbs.co.jp |
トリチウムを含む処理水の海洋放出、GoToEatの感染対策、東京版CDCの立ち上げの話題がありました。東京版CDCにはリスコミチームがあるのが特徴とされています。早速アンケート調査の結果が報告されています。
小池都知事が提案した「5つの小」ですが、リスコミチームは関わっているのでしょうか(関わっていないでしょうね)。
まとめ:10月のリスクコミュニケーション
2020年10月のリスクコミュニケーションを解析した結果、コロナに関する話題は減少し、相対的に原子力や食品関係の話題が目立つようになってきました。トリチウムを含む処理水の海洋放出の決定見送りについてのニュースが大きな話題となったようです。また、寿都町や神恵内村が核廃棄物最終処分場の候補地文献調査に応募したことも話題となりました。
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