要約
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2021年度下半期(10~3月)の調査結果から、コロナ収束期(ワクチンリスクの最盛期)->オミクロン株による第6波->ロシアによるウクライナ侵攻とリスクのトレンドが移り変わったことがデータで示されました。
本文:2021年10月~2022年3月のリスク
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋などを対象としてソーシャルリスニングを行い、今人々がどんなリスクに注目していたり不安を持っていたりするかを調査しています。方法については2020年3月の調査結果をご覧ください。
2021年10月~2022年3月の期間のリスクに関するトピックは、コロナ一時収束期(10-12月)を経てオミクロン株による第6波(1-3月)、その後ロシアによるウクライナ侵攻(2-3月)がありました。
本記事では、定点調査として2021年10月~2022年3月にどんな「リスク」に焦点があてられたかを分析した結果を報告します。以前は月毎にまとめて報告していましたが、現在は半年に一度報告しています。
Google Trends
2021年10月~2022年3月の期間内で「リスク」とともにどんなキーワードが検索されているかを調べ、関連キーワードの注目度(検索数が増えたもの)トップ10を抜き出しました。
順位 | キーワード | トピック |
1 | エヌノーズ ハイリスク | 医療 |
2 | オミクロン株 重症化 リスク | コロナ |
3 | ワクチン 交互接種 リスク | コロナ |
4 | ワクチン 3回目 リスク | コロナ |
5 | リスクマネジメントとは わかりやすく | ビジネス |
6 | マキシマムリスク | リスク一般 |
7 | リスクを取らないことが最大のリスク | ビジネス |
8 | 生でやるリスク | 妊娠・出産 |
9 | レーシック手術 リスク | 医療 |
10 | 地政学リスクとは | 地政学 |
1位になったエヌノーズは線虫を用いて尿1滴でがん検診ができるというサービスです。以下のサイトに書かれておりように現在その結果に疑惑が生じており、安易に手を出すべきではなさそうです。
トップ10のうちコロナ関係は3つと少なくなりました(2021年度上半期は6つ)。オミクロン株の重症化リスクやワクチンのリスクが注目されました。
ロシアによるウクライナ侵攻は10位に出てくる「地政学リスク」として注目されています。
YAHOO!知恵袋
2021年10月~2022年3月の期間内で「リスク」を含む質問のうち、閲覧数が多かったトップ10を抽出しました。
順位 | カテゴリ | トピック | 要約 |
1 | 政治、社会問題 | ワクチン | コロナワクチンは必要ない |
2 | デンタルケア | 医療 | インプラントは怖い |
3 | 健康、病気、病院 | ワクチン | 彼氏がワクチンを拒否する |
4 | フィギュアスケート | スポーツ | なぜワリエワはリスクを冒してドーピングするのか |
5 | 大学受験 | 受験 | 受かった大学に進学すべきか浪人すべきか |
6 | 経済、景気 | 金融 | なぜロシアが政策金利を引き上げたのか |
7 | 恋愛相談、人間関係の悩み | 性行為 | 妊娠のリスクがあるため性行為したくない |
8 | 化学 | ワクチン | モデルナワクチンは危険では |
9 | 宝塚 | コロナ | 宝塚の公演に行っても良いか |
10 | 病気、症状 | ワクチン | ファイザーを打つかノババックスを待つかどちらがよいか |
トップ10のうち4つがコロナワクチンリスクに関するものでした(2021年度上半期はトップ10のうち6つ)。Google Trendsの傾向も同じですが、ワクチンのリスクに関する注目はピークを過ぎたように見えます。デルタ株の第5波を抑え込めたのはワクチンのおかげというのは多くの人が実感したように思います。
「〇〇してもよいか(コロナに感染しないか)」という質問は以前に比べてだいぶ減りましたが、まだ残っています。
他にはロシア関係、医療、スポーツ(冬季オリンピック)、受験(人生選択リスクの一つ)、性行為などの話題がありました。
2021年10月~2022年3月の間につぶやかれた「リスク」を含む1万ツイートを毎週収集し、リスク関連単語の使用頻度ランキングの月毎の推移をまとめました。
注目すべきワードに色を付けてみました。まず、「コロナ」は2021年の6月以降に「ワクチン」に順位を抜かされますが、2022年の2月に再度コロナが上位に来ます。オミクロン株の第6波の影響と考えられます。
また、2月から「ロシア」と「ウクライナ」のワードがランクインし、3月には「ロシア」が「コロナ」や「ワクチン」を抜いて上位に来ました。
「重症」というワードの順位は1月にピークとなり、その後は下がり3月にはランク外になりました。コロナによる重症者数はオミクロン株の第6波ではデルタ株の第5波よりも少なくなり、3月に入ると減少に向かいました。
2021年度上半期と同様に、「株」というワードの推移が「重症」の推移と似た動きをすることがわかります。株価の値動きとも連動しているようですが、いまだに考察困難です。
ニュース
NewsAPIというツールを使って、タイトル中に「リスク」を含むニュースやブログをウオッチしています。NewsAPIについての説明は過去の調査結果をご覧ください。
2021年10月~2022年3月の間にタイトル中に「リスク」を含むニュースは1064件配信されました。Twitterの分析と同様に、収集したタイトル中の単語頻度ランキングの月毎の推移をまとめました。注目ワードの背景色もTwitterのランキング表と同様です。
「コロナ」はずっと上位にありましたが、3月にはなんとランク外となりました。代わりに上昇したのが「ロシア」です。ニュース性が高いのは断然ウクライナ情勢ということでしょうか。
「ワクチン」は2021年上半期ではどんどん順位をあげてきましたが、12月にランクインしただけであとはランク外となりました。snsとは大きく異なり、ワクチンのリスクはすでにニュースでは取り上げられない状況のようです。
「重症」と「株」はどちらも12月~2月までランクインし、やはり動きが連動しています。これも理由はよくわかりません。
リスクコミュニケーション
最後に、リスクコミュニケーションに関するツイートの定点観測結果をまとめていきます。
リスクコミュニケーションに関する一般の動向を探るため、Twitter上で「リスクコミュニケーション」もしくはその略称である「リスコミ」を含む発言を収集しています。まずは2021年10月~2022年3月分を含めたツイート数の変化を下図に示します。
新型コロナウイルスによるコロナ禍が始まるまでは月に100件程度であったリスコミ関係ツイートは、2020年4月に3000件を超えてピークに達しましたが、その後はコロナ第3波、第5波、第6波の感染拡大とともにピークが見られました。ただし、オミクロン株による第6波ではピークといってもそれまでに比べると低調な水準になっています。
次に、リスクコミュニケーションに関するトップ10ツイートの内容をまとめます。「いいね(fav、ふぁぼ)」が多かったトップ10ツイートを抽出し、トピックと要約を手作業で付けました。いいねがたくさんついたツイートほど、多数の人が共感を得たツイートであると考えられます。これを見ていくことでリスクコミュニケーションのヒントが得られるかもしれません。
2021年10月~2022年3月のリスクコミュニケーショントップ10ツイートの要約は以下の通りです。トップ10のうち6つがコロナウイルス関係、ウクライナ情勢に関するものが2つとなりました。
順位 | トピック | 要約 |
1 | 災害 | 災害情報を伝える放送では口元だけ透明になっているマスクを使用して読唇が必要な人に配慮している |
2 | コロナ | コロナ対策により強い政府の権限が必要かどうか、まずはこれまでの対策を省みてほしい |
3 | コロナ | オミクロン株であってもこれまでどおりのリスコミをする |
4 | ウクライナ | SNSでの集合知コミュニケーションでフェイクニュース&デマに対抗すべき |
5 | コロナ | 日本はリスコミの問題はあったがワクチンの確保・接種は満点 |
6 | コロナ | 死者数などの公表が遅れるのはリスコミ的に最悪 |
7 | リスコミ一般 | SNSはリスコミの最前線 |
8 | コロナ | 菅政権のリスコミは問題だった |
9 | コロナ | 教員がオミクロン株に感染した学校名を公表したのは混乱が起こらない自信があるから |
10 | ウクライナ | ウクライナ情勢についてのテレビ番組で専門家の発言が出演者に誰も伝わってない |
上半期ではトップ10すべてがコロナ関連でしたので、トピックも移り変わっているのがわかります。特にロシアのウクライナ侵攻が始まってからは、危機管理が専門の日大教授福田氏によるツイートが目立ちます。
まとめ:2021年10月~2022年3月のリスク
2021年度下半期(10~3月)の「リスク」のトレンドを解析した結果、リスクのトレンドはコロナ収束期(ワクチンリスクの最盛期)->オミクロン株による第6波->ロシアによるウクライナ侵攻と移り変わったことがデータで示されました。
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