要約
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2020年7月の調査結果からは、コロナ感染再拡大によって関心度がまた復活し、「〇〇(特に旅行)しても大丈夫か?」という情報ニーズが高い状態が続いています。また、リスク選好の違いによって人間関係のトラブルが増加している様子もうかがえます。
本文:7月のリスク
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋などを対象としてソーシャルリスニングを行い、今人々がどんなリスクに注目していたり不安を持っているかを調査しています。方法については3月の調査結果をご覧ください。
本記事では定点調査として7月にどんな「リスク」に焦点があてられたかを分析してみました。今月もニュースとブログの分析を試行錯誤しています。
Google Trends
2020年7月の期間内で「リスク」と共にどんなキーワードが検索されているかを調べ、関連キーワードの注目度(検索数が増えたもの)トップ10を抜き出しました。
順位 | キーワード | トピック |
1 | リスク リッキー | 間違い |
2 | 投資信託 | 金融 |
3 | 化学物質 リスクアセスメント | 化学物質 |
4 | コロナ 新幹線 リスク | コロナ |
5 | カラオケ 感染 リスク | コロナ |
6 | レピュテーション リスク | ビジネス |
7 | リスク マネジメント | ビジネス |
8 | 全身麻酔 リスク | 医療 |
9 | リスクコミュニケーション | リスク一般 |
先月の調査では注目キーワードは7つのうち1つがコロナウイルス関連でしたが、2020年7月では9つのうち2つとなり、感染が再拡大するにつれて関心は6月で底を打ち再度高まっているようです。新幹線やカラオケの感染リスクに関する検索がランクインしています。本ブログにて前回までの4回のシリーズ記事として書いた「○○しても大丈夫か?」を知りたい人はまた増えてきています。
コロナ関連以外では、やはり金融やビジネス、医療に関連するワードが出てきています。トップのリスクリッキーとは何かわからなかったので調べてみると、「リクスリッキー(リスクリッキーじゃない!)」というジャニーズに所属するタレントの兄弟が運営するアパレルブランドがあり、その間違いとして「リスクリッキー」で検索する人が多いものと考えられました。間違いの検索がトップに来てしまうとは、スゴい人気ですね。。
YAHOO!知恵袋
2020年7月の期間内で「リスク」を含む質問のうち、閲覧数が多かったトップ10を抽出しました。
順位 | カテゴリー | トピック | 要約 |
1 | 政治、社会問題 | コロナ | 沖縄に行っても大丈夫か? |
2 | ドラマ | テレビ | 半沢直樹のドラマの内容(買収リスク)に疑問 |
3 | 流行、話題のことば | 芸能 | 木下優樹菜が抱えるリスクは何か? |
4 | 国際情勢 | 災害 | 中国の三峡ダムが決壊するリスクについて |
5 | 飛行機、空港 | コロナ | 沖縄旅行に行く予定だがどう感染対策したらよいか |
6 | ウイルス対策、セキュリティ対策 | パソコン | ノートンモバイルセキュリティで「リスクを見つけました」の表示が消えない |
7 | 観光地、行楽地 | コロナ | この夏旅行に行っても大丈夫か? |
8 | 登山 | コロナ | 登山の感染リスクは?山小屋の感染リスクは? |
9 | 政治、社会問題 | 国防 | 「日本は日本人が守る」と言う気概をなくすと逆に日本単独で戦うリスクを増大させるのではないか? |
10 | 税金 | コロナ | 家族が勝手に旅行の計画を立てたがコロナが不安 |
先月はトップ10のうち4つがコロナウイルス関係の質問でしたが、2020年7月はトップ10のうち5つがコロナウイルス関係の質問でした。こちらも感染再拡大を受けてまたコロナ関連の質問が増加しています。コロナ関連の内容をみると、先月に引き続き、ディズニーランドに行っても大丈夫か、沖縄旅行に行っても大丈夫か、登山に行っても大丈夫かなど、ほとんどが行動の可否を問う質問(「○○しても大丈夫か?」もの)でした。これだけのニーズがあるにもかかわらず、日本では活動毎のリスクを段階で示すものが相変わらず出てきません。コロナ以外ではあまり目立ったものはありませんでした。
特に、GoToトラベルキャンペーンが7月の連休からスタートし、旅行の計画を立てた方が増加したので旅行に関する質問が多く出てきました。しかも旅行の補助金制度が迷走し、国は旅行を推奨しているのかブレーキをかけているのかよくわからない状況です。リスク情報に感受性が高い人(コロナが心配なので旅行などはだめと考える人)と低い人(コロナはたいしたことないので平気)の差が非常に大きく、こういうリスク選好度(本来は投資用語ですが、ここではリスクのある行動を積極的にとるかどうかという意味で使います)の違いがトラブルの元となったりしています。
2020年7月の間につぶやかれた「リスク」を含む1万ツイートを毎週収集し、リスク関連単語の使用頻度ランキングを作成しました。ワードクラウドと表で表します。
頻出単語トップ40はまだまだコロナ関連と思われる単語が多数並んでいます。表には先月順位との比較を示しており、先月より順位が上がった(もしくは100位以下から新たにランク入り)ものは青(10位以上上がったものは濃い青)、順位が下がったものは赤で塗りつぶしています(10位以上下がったものは濃い赤)。
感染、人、コロナはトップ3をずっと維持し続けています。検査、医療、東京、拡大、旅行、高齢、病院、症状など、コロナ感染拡大に関係するワードが大きく順位を上げています。
そのかわり、仕事、投資、会社、安全などの単語は順位をさげ、株やリターンなどのワードはランク外となりました。6月の経済>コロナの空気が7月に入ってまたコロナ>経済に逆戻りしつつあるのがわかります。
2020年3月の解析でも少し紹介しましたが、属性による違いも久しぶりに紹介してみます。「リスク」を含むツイートの中から、自己紹介欄に「サラリーマン」もしくは「主婦」と書いてあるツイートをさらに抽出してワードクラウドを比較してみると以下のようになります。
サラリーマンではコロナ関連ももちろん多いのですが、それ以上に投資関連が多いことが一目でわかります。一方で、主婦のツイートはコロナ関連ワードが相対的に大きいことがわかります。右脳・左脳というワードが大きく出ている理由は、「右脳左脳度診断!(https://4ndan.com/app/274)」の結果を書いたツイートが多かったためです。右脳より左脳の方が大きく出ているということは、主婦は左脳派(慎重でリスクを避けるという診断になるようです)の結果が多いということになりますね。もちろん右脳派・左脳派などという分け方は占いレベルのもので科学的なものではありません。
こういう差は知恵袋のところでも書いたリスク選好の違いを示していると言えるかもしれません。マーケティングの分野では属性(デモグラフィック変数などと呼ばれる)だけによるセグメンテーションはもう古いといわれており、心理・行動特性で分けるべきだと言われています(これもすでに古いとか言われ始めていますが)。それでも「リスク」と捉え方に関しては年代すら分けずに属性だけでここまでの差が出るのはなかなかスゴいことです。
ニュースとブログ
先月の2020年6月からNewsAPIというツールを使って「リスク」に関するニュースやブログのウオッチを始めてみました。方法についての簡単な説明は6月の調査結果をご覧ください。
ニュース・ブログ提供元のソースを限定してニュースを抽出できますので、ニュースはYAHOOとNikkei、ブログはblogosとhatenaからそれぞれ記事を抽出しました。先月のニュースはlivedoorとNikkeiだったのですが、livedoorはやたらとプロ野球のニュースに偏っていたので今月はYAHOOにしてみます。
ワードクラウドを4つ並べてみました。上の二つがニュース情報です。YAHOOがわりとニュースとしては万遍ない印象を受けます。やはりコロナ関係が多いですが、7月に起こった豪雨災害に関するワードも結構出てきています。Nikkeiはやたら専門用語が多い印象です。
例えば以下のように日経メディカルの記事が多く、専門用語の多さに寄与しているようです。
抗線維化薬は特発性肺線維症の死亡リスクを3割超減らす
次にブログですが、ブロゴスは先月と同様にまじめな記事が多く、なかでも中国、香港、韓国、インド、大統領などのワードが入っているところを見ると、外国の話題が多そうな印象です。hatenaもやはり先月と同様で非常にバラエティに富んだ内容です。書評的な記事が多く、そのせいで作者、メディア、発売、新書などのワードが多くなっています。
なかなか面白いツールではありますが、まだまだ使いこなせていません。どのように活用すべきかもう少し試行錯誤が必要です。
まとめ:7月のリスク
7月のリスクの解析の結果、コロナ感染再拡大によってコロナウイルスへの関心度はまた復活してきました。「〇〇しても大丈夫か?」という情報ニーズは高いままとなっており、特に旅行に関して多くの人が判断材料を欲しがっています。また、リスク選好度の違いによって人間関係のトラブルが増加している様子もうかがえます。
コロナは依然として予断を許しませんが、8月は水難のニュースなども増えていますし、戦争のリスクを想起させる話題も増えます。どのような結果になるでしょうか。
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