要約
リスクコミュニケーションに関するツイート・ニュースを解析しています。2020年11月は第3波の感染拡大によってリスコミ関連ツイートは増加し、内容もコロナ関連が再度占めるようになりました。コロナ分科会はGoTo停止など以前よりも強い提言を出すようになり、尾身会長の存在感が増しています。
本文:11月のリスクコミュニケーション
リスクコミュニケーションに関する一般の動向を探るため、ツイッター上で「リスクコミュニケーション」、もしくはその略称である「リスコミ」を含む発言を収集して解析しています。これまでのsns定点観測結果はこちらにあります。
本記事では2020年11月のツイートを解析した結果を報告します。発言数の推移と使用頻度の高い単語、「いいね」数トップ10ツイート、ニュース・ブログ記事の順で見ていきましょう。
リスクコミュニケーションに関するツイート数の経時変化とツイート内の単語の使用頻度
まずは2020年11月分を含めたツイート数の変化を下図に示します。
新型コロナウイルスによるコロナ禍が始まるまでは月に100件程度であったリスコミ関係ツイートは、4月に3000件を超えてピークに達しましたが、その後は感染再拡大の際にも関係なく先月まで減少傾向を続けていました。11月は4月以降で初めて増加に転じ、第3波と呼ばれる感染拡大によってリスクコミュニケーションへの注目が再度高まってきています。
次に、使用頻度の高い単語トップ50単語(リスク、コミュニケーション、リスコミの3つを除いています)をワードクラウドにまとめてみました。
感染、専門、対策、コロナ、政府がトップ5となり、他もほぼコロナ関連ワードになりました。これも8月以前の状態に戻ったようです。医療が8位になっており、医療崩壊の懸念が高まっていることを反映しています。9, 10月と増えていた原子力関連のワードはなくなり、食品安全関連もかなり順位を下げました。
久しぶりに個人名が入りましたが「尾身」が17位となりました。コロナ分科会の尾身会長の存在感は増しているのは、コロナ第3波になり分科会がより強い提言(GoTo停止など)を出すようになったからと考えられます。かつてのコロナ専門家会議は政策を決定しているかのような誤解を招いたため、政府への助言に徹するとして分科会に衣替えしました。ところが、最近になりまたもとの専門家会議のような状態(助言よりももっと意思決定に踏み込んだ形)に戻ってきていると感じます。
リスクコミュニケーションに関するトップ10ツイートの内容
「いいね(fav、ふぁぼ)」が多かったトップ10ツイートを抽出し、トピックと要約を手作業でつけました。いいねがたくさんついたツイートほど、多数の人が共感を得たツイートであると考えられます。これを見ていくことでリスクコミュニケーションのヒントが得られるかもしれません。
2020年11月のリスクコミュニケーショントップ10ツイートの要約は以下の通りです。先月はトップ10のうち4つがコロナウイルス関係でしたが、今月はトップ10全てがコロナウイルス関係となりました。やはりコロナ第3波の勢いはこういうところにすぐに表れます。もしくは感染者数が減るとあっという間に油断するからかもしれません。
順位 | トピック | 要約 |
1 | コロナ | 感染症医(岩田氏)たる者がリスコミをぶち壊している |
2 | コロナ | 尾身先生にリスコミで協力したい |
3 | コロナ | 「神のみぞ知る」というリスコミは適切ではないが、間違ってはいない |
4 | コロナ | 尾身先生の会見は繰り返し放送すべき |
5 | コロナ | コロナ脳の人は重傷者が増えていない現状を見よ |
6 | コロナ | 「コロナワクチンの接種は個人の判断で」という言い方はリスコミ失敗 |
7 | コロナ | 西村大臣は初音ミクとのコラボで若者向けリスコミを実施 |
8 | コロナ | コロナ脳の人は重傷者が増えていない現状を見よ |
9 | コロナ | 情報を一方的に伝えて行動を変えさせるリスコミはうまくいかない |
10 | コロナ | リスコミなどのソフト対策でもロックダウンに匹敵する感染防止対策効果がある、という論文が出た |
2位や4位のツイートで出てきているように、こちらを見ても分科会の尾身会長の存在感は増しているようです。
7位について、初音ミクとコラボすれば若者向けになると考えている時点で、すでに若者の考えと大きく離れていることを誰か教えてあげる人はいないのでしょうかね。大きなお友達(若者とは限らない)には注目されるかもしれませんが。
10位のツイート。これは面白い論文でした。多数の国のデータを用いて医薬品以外の感染防止対策の効果を調べたものです。46種類の対策のうち、効果が高いのは少人数集会をやめる、学校の閉鎖、国境の封鎖などとなっています。また、教育・コミュニケーションは8番目に効果が高い対策となっています。さらに、空港での健康診断やPCR検査能力の強化は最も効果の低い対策の一つでした。
Haug et al (2020) Ranking the effectiveness of worldwide COVID-19 government interventions.
Nat Hum Behav 4, 1303-1312
ニュースとブログ記事
NwesAPIを用いたニュースとブログの分析も行っています。方法については以前の記事を参照ください。
2020年11月の「リスクコミュニケーション」を含むニュース・ブログ記事は7件と、平均5件前後でずっと続いています。内訳はニュースが1件、ブログが2件、分類不能(2ちゃんねるまとめみたいなのとか)4件です。以下に記事のタイトルを表にして示します。
タイトル | ソース |
「GO TO」は奏功しているのに・・ 「マスクを外して飛沫を浴びましたよね?」 – 山崎 毅(食の安全と安心) | Blogos.com |
【安倍晋三前首相】「私たちは新型コロナウイルスを抑えることができた」 ★2 | Www.2nn.jp |
安倍前首相「安倍政権は新型コロナウイルスを抑えることができた」 | Livedoor.jp |
【安倍晋三前首相】「私たちは新型コロナウイルスを抑えることができた」 | Www.2nn.jp |
リスクコミュニケーションをより巧みに実践する方法 – HBR.org翻訳マネジメント記事 | Dhbr.net |
政府分科会で「第3波」の議論も・・・ 西村大臣「定義付け難しい」 | Tbs.co.jp |
新型コロナ第3波。全国1524人、東京317人、大阪256人に対して菅「最大限の警戒で対処を」、小池「冬でも換気して」、吉村「静かに飲食して」。ああ無能。 | Goo.ne.jp |
ハーバードビジネスレビューの以下の記事は面白かったですね。最近企業の不祥事対応などでリスクコミュニケーションという言葉が使われることが多くなっています(リスクじゃなくて危機管理だと思うけど)。また、薬剤情報欄の書き方なども大変参考になりました。これがヘルスリテラシーってやつでしょう。
リスクコミュニケーションをより巧みに実践する方法
また、安倍晋三前首相がリスコミ失敗ではないと述べたニュースもありました。
(まあ「政権が」抑えたのかどうかはわかりませんが。。)
47NEWS:政権は新型コロナ「抑えた」 安倍晋三前首相インタビュー(1)
―記者会見などのリスクコミュニケーション、国民への発信の内容や頻度を含めて、いろいろな意見がありました。
基本的には西村康稔担当大臣が対応した。私も相当回数、国民への発信を行った。リスクコミュニケーションができていない、ということはない。
強制力のないものではあるが、事実、緊急事態宣言を出すことで、結果を出すことができている。だから、何回も申し上げるようだけど、8月1日の時点では、日本の死者は100万人当たり8人。例えば、英国なんかは100万人あたり678人になっていて、米国は460人、ドイツですら109人だから、桁が違う。私たち安倍政権は、新型コロナウイルスを抑えることができたと思う。
日本は、死者を100万人あたり8人に抑えつつ、経済の打撃をマイナス27%に抑えた
今から考えれば「あの時そうやっておけば良かった」というのはいくらだってありますよ。それは。ただそのとき、果たして、それができたかどうかということは分からない
https://this.kiji.is/702872007639843937
まとめ:11月のリスクコミュニケーション
2020年11月のリスクコミュニケーションを解析した結果、第3波の感染拡大によって再度ツイート数は伸び、内容もコロナ関連が占めるようになりました。コロナ分科会は以前よりも強い提言を出すようになり、尾身会長の存在感が増しています。ニュース関連では、安倍前首相がリスコミを語るインタビュー記事もありました。
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