GoToせずともStayhomeにリスクあり。冬の家庭内のリスクをまとめます。

candle 身近なリスク

要約

外出自粛で家に閉じこもっていても、家庭内でのお風呂での急死、転倒・転落、窒息、火災などでの死者数は合わせて年間3万人以上を超えており、これは多くの人が考えているよりもずっと大きなリスクです。特にこれらは「冬のリスク」と呼べるもので、冬に多く発生するため一層の注意が必要です。

本文:Stayhomeのリスク

コロナ感染拡大第3波はまだ収束を見せておらず、GoToトラベルキャンペーンは休止となり、年末は忘年会等の集まりを控え、帰省も控えるようにと言われています。本ブログではこれまでに、GoToするかStayhomeするかのリスクとリターンの関係を示してきました。

gotoすべきかstayhomeするべきか:GoToトラベルをめぐるリスク・リターン関係
GoToトラベルをめぐるリスク・リターン関係を整理してみました。stayhomeする人はローリスク・ローリターンで、gotoする人はハイリスク・ハイリターンです。ここだけ見るとハイリスクならハイリターンであるべきという規範が成り立っているようにも見えます。ただし、ここに医療従事者を含めたり、感染拡大が進んだ状況になると位置づけが変わってきます。

そして現在はもう皆がGoToをやめてStayhomeするべきときとなっています。ところが、私たちの生活にかかわるリスクはコロナだけではありません。コロナ対策に意識を全振りするほど、他のリスクへの備えがおろそかになる危険も出てきます。これがリスクガバナンスの問題です。

新型コロナウイルス感染症以外のリスクを忘れてしまうと起こる問題って何?
ツイッター等のsnsでリスクに関する市民の意識を調査を行っていると、現在は「リスク=コロナウイルス」に大きく偏ってしまっていることがわかります。このような状態になると災害や事故などほかのリスクへの備えがうすれてしまい、本来抑えらえた被害が拡大するという問題がおきる可能性があります。

具体的には、外出自粛で家に閉じこもっていても、家庭内での溺死、転倒・転落、窒息、火災などでの死者数は合わせて年間1万人以上を超えています(コロナによる死者数よりも多い)。これは多くの人が考えているよりもずっと大きなリスクなのです。

本記事では、Stayhomeしていても起こる家庭内のリスクについてまとめます。まずは、いつものようにリスクの大きさをものさしとともに示し、特に冬にリスクが高くなることを示します。最後に冬のリスクとしてクリスマスのリスクとは何かを整理していきます。

Stayhomeのリスク比較

本ブログではおなじみの厚生労働省による人口動態調査のデータを使用します。死因の分類として「死因簡単分類」という5桁の番号とともに記載されるものがあり、その中から以下の5つをピックアップします:
・20102 転倒・転落・墜落
・20103 不慮の溺死及び溺水
・20104 不慮の窒息
・20105 煙,火及び火炎への曝露
・20106 有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露
これらは家庭内で発生することが多いですが、死者数は家庭外で発生するものも含んでいます。そこで、家庭内の死者数のみを抜き出して整理された上巻5-35表の数字を使います。得られた死者数を人口で割って10万人あたりの死者数を計算します。

人口動態調査->死亡->2019->上巻 5-35 家庭における主な不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数及び百分率

人口動態調査 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
 人口動態調査は、我が国の人口動態事象を把握する上で重要な統計調査です。同調査は戸籍法及び死産の届出に関する規程により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象として、毎月実施されます。  人口動態調査では、一人の女性が一生の間に生む子どもの数に相当する合計特殊出生率や死因別死亡数、年齢別婚姻・離婚件数など...

さらに、この5つ以外にも、お風呂での急死、家庭内での熱中症、家庭内暴力、熱湯によるやけどをStayhomeのリスクとして含めてみました。使用したデータなどの説明は長くなるので一番最後の補足に書いておきます。

リスクのものさしについては、本ブログにて2019年度のデータで作成したものを使います(損失余命ではなく死亡率の部分)。

リスク指標としての損失余命はわかりやすい?その2:リスクのものさし損失余命版
損失余命を指標としてリスク比較する際にもリスクのものさし(一定のリスク比較のセット)があると便利です。「がん、自殺、交通事故、火事、落雷」の5つの要因の損失余命を最新(令和元年)のデータを用いて解析し、リスクのものさしとして活用できるようにしました。
項目年間死者数10万人あたり
年間死者数
がん376411298
入浴中の急死2836522.4
自殺1938915.4
溺死56734.5
交通事故42793.4
窒息31872.5
転倒・転落23941.9
火事(全体)9950.79
火事(家庭内)8130.64
熱中症6130.48
有害物質による中毒3150.25
家庭内暴力1520.12
熱湯などによるやけど490.039
落雷2.20.0017

結果、入浴中の急死のリスクが非常に高いことがわかります。溺死は入浴中の急死に含まれており、次に高いのは窒息で、転倒・転落、火事、熱中症と続きます。お風呂、窒息、転倒・転落の3つが特に注意すべきリスクとなります。コロナ禍で自殺が増加していることがすでに話題になっていますが、Stayhomeのリスクは増加していないことを願うばかりです。

Stayhomeのリスクは冬のリスク

転倒・転落、溺死、窒息、火事、有害物質による中毒の5つのリスクについてもう少し詳しく見ていきます。

まずは年代別のリスクを見てみます。人口動態調査の「上巻 第5-16 死因(死因簡単分類)別にみた性・年齢(5歳階級)別死亡率(人口10万対)」からデータが得られます。

stayhome_risk_byage

60代を超えたあたりからどんどんリスクが増えていきます。さらに、転倒・転落の割合が年齢とともに増加していることがわかります。逆に溺死のほうは80代より上はあまり変わりません。

また、これらのStayhomeのリスクは「冬のリスク」と呼べるものです。季節によってどの程度違うのかを見るために、月別の発生数をまとめてみます。人口動態調査の「上巻 第5-18 死因(死因簡単分類)別にみた死亡月別死亡率(人口10万対)」からデータが得られます。

stayhome_risk_bymonth

数字は10万人あたりの年間死者数ですが、家庭内のみではなく全体の死者数ですので、上記の表よりも数字が大きくなっています。一見して大きな季節変化があることがわかります。有害物質中毒はわかりにくいですが、他はすべて夏に少なく冬に多くなります。中でも夏と冬の比率が最も大きいのが溺死です。次に火事、窒息と続きます。

お風呂での激しい気温差によるヒートショック(失神や心筋梗塞、脳梗塞)が発生しやすくなるので冬に溺死が増えます。また、冬に暖房を使うので火事も増加します。窒息は1月に最も多く、お餅の影響があると思われます。ただ、1月を除いてもはやり窒息は夏に少なく冬に多いのはなぜでしょう?全体的に活動が弱まってそしゃくも減るのでしょうか?

他にも転倒・転落も若干ですが冬に増加します。やはり気温差による体への負担や、寒さで筋肉が動きにくい、厚着によって動きにくくなる(特に厚手の靴下)、などの影響があるようです。

特に今年の冬は、病院の態勢は対コロナにシフトしており、救急の受け入れ態勢も縮小しています。さらに、救急対応の医療従事者が感染した場合には一定期間受け入れできなくなります。いつも以上にこれらStayhomeのリスクへの対策をしておく必要があるでしょう。

クリスマスのリスク

冬のリスクとしてもう一つ、クリスマスのリスクを考えてみます。クリスマスがリスクになる、などというとびっくりするかもしれません。日本であまり話題になることはありませんが、欧米ではクリスマスのリスクは割と警告されているように見えます。

例えば以下の論文では、クリスマスの様々リスク要因が整理されており、危険性が警告されています。
・クリスマスカードによるヒ素中毒
・家の装飾中の転倒(酔っぱらってやるとさらに危険)
・誤飲(クリスマスライトの球、紙吹雪の星など)
・クリスマスツリーの枝が目を突く
・ろうそくによる火災ややけど
・クリスマスプレゼントのハムスターがウイルスを広める(実際にあった)
・お酒の飲みすぎによる健康悪化、食べすぎによる体重増加、食中毒
・オーストラリアではジェットスキーによる事故が増加

Ferner et al. (2020) Harms and the Xmas factor. BMJ 2020;371:m4067

Harms and the Xmas factor
The Christmas season is associated with preventable harms from cards, tree decorations, and presents, as well as overeating and overdrinking. Given the balance ...

ただ、ヒ素中毒は100年以上昔の話なのでここで出すのはどうかと思いますし、他にも数としてどの程度のものかがよくわかりません(そのくせクリスマスプリンのレシピだけなぜかやたら詳しく書いてある。。)。そこで以下の記事を見てみると、結構具体的な数字とともにクリスマスに伴う様々なリスクが示されています:
・RoSPA(英国The Royal Society for the Prevention of Accidents)によると、毎年80000人以上がクリスマス関連の事故のために救急医療にかかり、そのうち6000人以上が入院する
・クリスマスツリーの装飾中に毎年1000人以上が負傷する
・装飾を施しているときに不安定な椅子を使用して260万人が転倒した
・50人に1人が装飾を片づける際にロフトから落ちた
・クリスマスツリーのライトは、装飾中の転倒、電球の誤飲、感電ややけどなど、年間350人の負傷者を出している
・40人に1人がクリスマスライトの配線が悪いために感電した
・1997年から2010年の間に、ライトをつけたままクリスマスツリーに水をやって26人が死亡した
・毎年推定100万件の食中毒が発生しており、特に七面鳥の生焼けに注意が必要

Most common Christmas accidents and why Christmas is so dangerous

Most common Christmas accidents and why Christmas is dangerous
Common Christmas accidents and First Aid tips. Discover the 12 most common Mishaps of Christmas and why Christmas is so dangerous

50人に1人がロフトから落ちるってホントですか?イギリス人ってそんなにおバ〇さんなの?と思いますが、これ以上詳しく調べていません。

そして、今年に関しては、特に欧米ではクリスマスでのコロナ感染拡大が最大のリスクとなります。以下のニュースによると、コロナ変異種の拡大が進んでいるイギリスでは、イングランド・スコットランド・北アイルランドで3世帯までクリスマスパーティーなど期間限定的に集まることができるようです(ウェールズでは2世帯まで、この違いは何??)。数理モデルによる推定では、3世帯集まることによって実行再生産数が2.84~3.55に跳ね上るということで、クリスマスだけで感染者が倍増するリスクについて専門家が警告しています。

BBC News: Covid Christmas risk ‘hard to control’

Covid Christmas risk 'hard to control'
Modelling suggests if most households get together in bubbles, infection rates could rise sharply.

まとめ:Stayhomeのリスク

外出自粛で家に閉じこもっていても、家庭内でのお風呂での急死、転倒・転落、窒息、火災などでの死者数は合わせて年間3万人以上を超えており、これは多くの人が考えているよりもずっと大きなリスクです。特にこれらは「冬のリスク」と呼べるもので、冬に多く発生するため一層の注意が必要です。最も注意すべきは寒い風呂場におけるヒートショックです。お餅をはじめとする窒息も要注意です。また、ちょっと変わった冬のリスクとしてクリスマスのリスクがあり、日本というよりも欧米の話ですが転倒・転落、火事などがクリスマスの時期に特に多く発生しています。

補足

不慮の溺死及び溺水はほとんどがお風呂で発生するものですが、これにはお風呂での急死がすべて含まれているとは限りません。同じお風呂での急死でも医師によって「溺死」と判断されたり「心疾患」と判断されたりまちまちだからです。これを調べていくと、お風呂での急死は「溺死」と判断された数字の約5倍に相当するそうです。そこで、家庭内の溺死数に5をかけて入浴中の急死の数としました。

鈴木晃 (2011) 住宅内の事故、とくに入浴中の事故を中心に. 「空衛」 2011年 11月号 71-78.
https://www.niph.go.jp/soshiki/09seikatsu/arch/006.pdf

また、夏には家にこもることで熱中症のリスクが上がります。家庭内の熱中症については2018年厚労省データに家庭での発生割合38.8%(環境省 熱中症環境保健マニュアル 2018より)をかけて計算しました。元の数字は以前本ブログで書いたものです。

熱中症とコロナウイルスのどちらに気を付ければよいのか?熱中症の死亡リスクを比較する
熱中症の死亡リスクは10万人あたりの年間死者数1.3人ですが、年代ごとの差が非常に大きく、高齢者のリスクが高くなっています。また、マスクや換気などコロナウイルス対策とのトレードオフ関係をみるために、コロナと熱中症のリスクを年代別に比較したところ、高齢者は一般的にはコロナよりも熱中症対策を優先すべきと考えられます。

さらに、家庭内暴力がコロナ禍で増加しているとのことで、これもStayhomeのリスクとします。警察庁統計によると、殺人事件の親族間での件数は2019年で152件でした。ニュースになっていないものも含めると結構あるものですね。

警察庁統計->生活安全の確保に関する統計等->犯罪情勢->令和元年の刑法犯に関する統計資料->図表2-1-1-3

統計|警察庁Webサイト

熱湯によるやけどは人口動態統計の上巻表5-35に記載してある数字を使いました。

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