要約
法的措置によるネット上のニセ情報の拡散防止効果を検証するために、日産化学(除草剤ラウンドアップ)とMeiji Seikaファルマ(レプリコンワクチン)による法的措置の前後におけるネット上のトレンドの変化を、Google trendsとYHAOO知恵袋を用いて調べました。
本文:法的措置によるニセ情報の拡散防止効果
前回の記事では、SNS時代には怒りの感情がデマ拡散の原動力となっていることについて解説しました。このことを利用してインプレッション狙いでわざと怒りのエサをばらまく行為(レイジベイティング)が横行しているため、デマに対する反論などを書き込むことで相手のインプレッションを増やしてしまい、余計にデマ拡散に貢献してしまいます。

また、前回の記事では法的措置が強力なデマ抑止力を持つことも紹介しました。嵐の大野智さんへの悪質デマに対して法的措置を進めたことが大きな効果があったとのことです。
リスクに関することでは、除草剤ラウンドアップに関するデマに対して日産化学が法的措置を進めたり、ワクチンのデマを広めているとして衆議院議員の原口一博氏をMeiji Seika(明治製菓)ファルマが名誉棄損で提訴するなど、デマに対して法的措置をとる例が増えてきています。
そこで本記事では、日産化学とMeiji Seikaファルマによる法的措置がデマの拡散防止に効果があったのかどうかを検証してみたいと思います。
このための手法として、本ブログで継続しているSNS定点観測の方法を使ってみます。ただし、デマの巣窟の本命SNSであるツイッターがXに変わったことでツイートの分析ができなくなったことは大変残念です。
代わりにGoogle trendsとYHAOO知恵袋を使ってどこまで迫れるのかを試してみます。方法論の詳細は以下の過去記事を参照してください。

ラウンドアップとレプリコンワクチンをめぐる状況
まず、今回の解析対象であるラウンドアップとレプリコンワクチンの状況について整理しておきましょう。
ラウンドアップ
ラウンドアップは日産化学が販売する除草剤で、成分名はグリホサートです。非常に毒性が低く効果の高い除草剤ですが、SNS上では危険性に関するデマが氾濫しています。本ブログでも以下から4回にわたるシリーズ記事を書いています。

これに対して日産化学は公式サイト、Xの公式アカウントを立ち上げて情報提供しています。そして2024年3月13日、以下のように法的措置をアナウンスしました。
~お知らせ~
当社および当社製品に対する誹謗中傷、根拠のない誤った情報の流布をX上の投稿で確認したため、発信者情報開示請求をはじめとする法的手段を含めた検討を開始しました。
適宜、弁護士とも相談しながら対応して参ります。上記のような行為は直ちにお止め頂けますよう、お願い致します。
https://x.com/nissanchem_rup/status/1767748308024582581
さらに以下のように続報が公開されています。
~法的措置に関する続報~
https://x.com/nissanchem_rup/status/1826907237497057772
当社およびラウンドアップへの誹謗中傷に対する法的措置の一環として、裁判所に発信者情報開示請求を申し立てた結果、当社の主張が認められました。
現在、特定された誹謗中傷の発信者に対して、法的な手続きを進めております。
今後も、誹謗中傷の投稿に対しては適切な対応を行ってまいります。
~法的措置に関する続報~
当社およびラウンドアップへの誹謗中傷に対する法的措置の一環として、X上で虚偽情報の発信を行う複数の投稿者に対し、当該投稿の削除および今後同様の投稿を行わないよう警告する通知書を発送しております。
万一、適切な対応がなされない場合は、民事・刑事を問わずさらなる法的手続を進める所存です。当社は今後も同様の活動は継続する予定であり、偽・誤情報について適切な対応を取ってまいります。
https://x.com/nissanchem_rup/status/1880163149258932480
レプリコンワクチン
次世代mRNAワクチン(レプリコン、商品名コスタイベ)はMeiji Seikaファルマが開発した新型コロナウイルスに対するワクチンで、体内で自己複製するため投与量が少量で済み、効果も長続きすることが特徴です。2023年11月に日本で製造販売が承認されました。
しかしながら、ワクチンを打った人から体内で複製された成分が排出され、他の人にコロナウイルスを感染させるという、いわゆる「シェディング」なる現象の可能性がSNSで拡散されたのです。
専門家やメーカーはこれを否定しましたが、日本看護倫理学会という団体が安全性への懸念を表明しました。また、立憲民主党の原口一博衆議院議員はこのワクチンをめぐり「生物兵器まがい」、「殺人に近い」などと発言しました。
この結果、反ワクチンの主張はSNSだけに留まらず、飲食店や美容院などでレプリコンワクチン接種者の入店が拒否されたり、学校で全校生徒へ安全性への懸念が広められたりするなど、現実社会でも大きな影響を与えることになりました。
NHK: WEB特集 論文、学術誌… 不確かなワクチン情報 その“根拠”を追跡

Meiji Seikaファルマは以下のように2024年9月25日に法的措置の警告を発し、同年12月25日には原口議員を提訴しました。
ミクスOnline: Meiji Seika ファルマ・小林社長 コスタイベで非科学的主張くり返す専門家に「厳正に対処」 法的措置も
Meiji Seika ファルマの小林大吉郎代表取締役社長は9月25日に開いた新型コロナの次世代mRNAワクチン・コスタイベの記者説明会で、コスタイベについて非科学的な主張を繰り返す医学・薬学の専門家(団体・個人)に対し、「当社は民事刑事両面での法的措置を含め厳正に対処していく」と表明した。
Meiji Seikaファルマ:訴訟提起に関するお知らせ
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pressrelease/2024/detail/pdf/241225_01.pdf
ラウンドアップに関する検索トレンドと知恵袋の相談内容
まず、Google trendsを用いて検索トレンドを調べてみました。商品名「ラウンドアップ」と成分名「グリホサート」では、ラウンドアップのほうが検索数が多いので、以下ラウンドアップを解析対象とします。
以下の図で過去数年の推移を見ると、「ラウンドアップ」の検索数は夏に多くて冬に低いという季節性があることが明らかです。毎年のピークは5-7月ですね。雑草が生い茂る時期と重なっているので、使用時期に使用する人が検索していると推察されます。危険性を調べようとする人が夏に多いとは思えませんので。

また、「ラウンドアップ 危険」、「ラウンドアップ 発がん」の検索数の推移は、徐々に減少傾向にあるように見えます。検索数が多いのは2019年~2022年くらいまでで、日産化学が法的措置を発表した2024年3月よりも前から減り始めていますが、2024年は特に少なくなっていますね。
次にYAHOO知恵袋では、2023年3月1日~2024年2月28日の1年間(法的措置発表前)と、2024年3月13日~2025年3月13日の1年間(法的措置発表後)の質問を比較しました。閲覧数のトップ10の質問の概要を以下にまとめます。
順位 | 2023年3月1日〜 2024年2月28日 | 2024年3月13日〜 2025年3月12日 |
1 | 日本でがんが増えているのは添加物や農薬などが原因。枯葉剤(ラウンドアップ)もアメリカに使わされている。 | ドクダミの駆除にラウンドアップは効果的か? |
2 | ラウンドアップは効かなくなてきているが、プログリックスは毒性が気になる | ラウンドアップを使っていたら近所の人に危険だから使うなと言われたが本当か? |
3 | ラウンドアップはにおいがきついのか?近所の苦情が心配。 | ラウンドアップが効かない雑草には濃度を上げればよいのか? |
4 | ラウンドアップ散布後に種まきをしてもよいのか? | ラウンドアップが効かない雑草にはたくさんまけばよいのか? |
5 | ラウンドアップは先進国で日本しか使ってないのか? | ラウンドアップが危険という情報と安全という情報のどちらが正しいのか? |
6 | 果樹にラウンドアップがかかってしまった場合は食べられないのか? | ラウンドアップとネコソギではどちらがよいか? |
7 | ラウンドアップは先進国で日本しか使ってないのか? | ラウンドアップは枯らしたくない作物からどのくらい離して使えばよいのか? |
8 | ラウンドアップと除草王ではどちらがいかよいか? | 海外ではラウンドアップが禁止されているが代わりに何を使っているのか? |
9 | ラウンドアップとネコソギではどちらがいかよいか? | ラウンドアップの希釈方法について教えて |
10 | ラウンドアップが効かなくなったので他の除草剤は何が良いか? | カインズのクサクイックはラウンドアップよりもコスパが良いのか? |
基本的には使用する人目線での質問が多くなっています。これはGoogle trendsの傾向とも一致しますね。ただし、法的措置発表前は危険性に関する質問が閲覧数トップになっており、日本でしか使っていないのか?という疑問も二つランクインしています。法的措置発表後は、2位の質問も自分は大丈夫だと思うが、、、という意見になっており、全体的に警戒レベルは下がっているように思えます。
ということで、法的措置の発表の効果が大きいかどうかはハッキリと言えませんが、危険をあおるような情報の拡散は、法的措置発表の前後で減っていることが推察されます。
レプリコンに関する検索トレンドと知恵袋の相談内容
同様にGoogle trendsで検索トレンドを調べます。「シェディング」や「コスタイベ」よりも「レプリコン」のほうが検索数が多いので、以下レプリコンを解析対象とします。
以下の図に検索数の推移を示します。解析期間は、「レプリコン」の検索数の上昇が始まり終息するまでの2024年6月1日から11月30日までとしました。検索数のピークは3回程度ありますが、最も高いピークが10月2日でした。

また、「レプリコン 危険」の推移も示しています。3回ある「レプリコン」のピークに対応して「レプリコン 危険」のピークも出てきており、10月11日を最後に出てこなくなりました。
これを見ると、9月25日の法的措置の警告によって終息に向かったという解釈も可能です。ただし、10月1日からレプリコンワクチンの接種が開始され、始まってしまったので活動家らが興味を失ってしまった(他のものに攻撃対象を移した)、という解釈も可能です。原発処理水の海洋放出の際もこのような傾向(始まるまでは大騒ぎして、始まってしまうと一気に熱が冷める)が見られました。なので、放っておいても終息した可能性もあります。
次にYAHOO知恵袋では、2024年6月1日~2024年9月25日(法的措置警告前)と、2024年12月25日~2025年2月28日(原口議員提訴後)の質問を比較しました。閲覧数のトップ10の質問の概要を以下にまとめます。ただし、提訴後は質問数自体が非常に少なくなっており、6つしか出てきませんでした。
順位 | 2024年6月1日〜 2024年9月25日 | 2024年12月25日〜 2025年2月28日 |
1 | 「レプリコンワクチン接種者の来店はお断りします。」という店舗があるので摂取すると社会生活ができなくなる。 | レプリコンワクチンの接種が始まると急に反ワクチン達はシェディングについて騒がなくなったのはなぜ? |
2 | 日本看護倫理学会以外にレプリコンワクチンの危険性を訴える組織はあるか? | 反ワクチン発言で提訴された原口氏はアウトか? |
3 | レプリコンワクチンの接種者からほかの人にコロナが感染するシェディングが起こるのではないか? | レプリコンワクチンを接種した方に副反応はどうだったかを聞きたい。 |
4 | レプリコンワクチンを打った人に近づくと感染するシェディングはあり得るのか? | レプリコンワクチンの騒ぎって結局なんだったのか? |
5 | レプリコンワクチンの危険性を教えて | レプリコンワクチンを打つと呪いのように体の中で一生増え続けるのか? |
6 | レプリコンワクチンの危険性は陰謀論か? | レプリコンは16人分確保しないと打てないので、扱っている病院は少ないのでは? |
7 | お菓子メーカーである明治製菓がどうしてワクチンを作るのか? | |
8 | 明治製菓のお菓子にもレプリコンが入っているのか? | |
9 | レプリコンワクチンを打った人に近づいたらもう手遅れか?一度でも成分を吸い込んだら永久に体内で増え続けるのか? | |
10 | レプリコンワクチンを接種されると困る |
二つの期間では質問の内容がガラっと変わったことがわかります。法的措置警告前は危険性に関する質問が並び、原口議員提訴後はあの騒ぎは何だったのか?的な質問が多くなりました。
ということで、これも法的措置の効果が大きいかどうかはハッキリとは言えないものの、危険をあおる情報の拡散が法的措置により減ったことが推察されました。
まとめ:法的措置によるニセ情報の拡散防止効果
SNSなどでのニセ情報(デマ・フェイクニュース)の拡散防止には法的措置の効果が高いと言われています。その効果の検証として、日産化学とMeiji Seika(明治製菓)ファルマによる法的措置の前後におけるネット上のトレンドの変化を、Google trendsとYHAOO知恵袋を用いて調べました。法的措置の効果が大きいかどうかは明確ではありませんが、危険をあおる情報の拡散が法的措置により減ったことが推察されました。
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