リスクコミュニケーションもAIが担う新時代?ChatGPTに安全かどうか聞いてみた

AI リスクコミュニケーション

要約

いま話題のAIチャット「ChatGPT」で遊んでみました。餅、北朝鮮、統一教会、コロナワクチン、マイクロプラスチック、農薬について「安全か?」を聞いてみたところ、思いのほかの面白い結果が得られ、リスクコミュニケーションもAIが担う新時代の可能性を感じました。

本文:ChatGPTに安全かどうか聞いてみた

ChatGPTは2022年11月に公開されたAIチャットサービスで、WEB上で質問するとその答えが返ってきて、継続した会話ができます。このAI(OpenAIが開発したGPT-3.5という言語モデル)の中身について私は全く理解していません。現在は無料トライアル版のため、ログインすれば無料で利用できます。

Introducing ChatGPT
We’ve trained a model called ChatGPT which interacts in a conversational way. The dialogue format makes it possible for ChatGPT to answer fo...

すごい役に立つ場面がある一方で、全くのデタラメを返答したりなど「おもちゃ」としてかなり面白いと話題になっています。そこで、私もどんなものか試しながら少し遊んでみたいと思います。本ブログはリスクを扱っているため、「〇〇は安全か?」とAIに質問してみることにしました。

安全とは“freedom from risk which is not tolerable”すなわち「許容できないリスクがないこと」と定義されています。詳細は過去記事をご覧ください。

コロナウイルスとのたたかいは何をもって収束と言えるのか?都道府県独自基準のからくり
安全とは「許容できないリスクのないこと」と定義されるので、許容できないリスクの定義が必要です。コロナウイルス対策に関しては医療崩壊が起こることが許容できないリスクとみなされ、都道府県ごとに異なる状況にあわせて独自の基準が出されてきました。

さて、AIは「〇〇は安全か?」という問いにいったいどのように答えるのか期待が膨らみます。思いのほかの面白い結果を得て、リスクコミュニケーションもAIが担う新時代の可能性を感じました。

餅は安全か?

正月のリスクと言えば「餅」(のどに詰まらせること)ですので、まずはこれを聞いてみましょう。

餅とは、麦粉や米粉などの粉類を主材料として、湯や水で揉んで作る日本の伝統的な食べ物です。餅は、肉や魚、野菜などを巻いたり、餡を詰めたりすることもできます。

餅は、食材を選んで正しく調理すれば、安全に食べることができます。ただし、餅を作る際に使用する粉類や、調理に使用する湯や水が、汚染されている場合や、餡に含まれる食材が、病原体を持っている場合は、食中毒の危険があることもあります。

そのため、餅を食べる際には、使用する食材をよく確認し、正しく調理することが重要です。

食中毒のリスクについて答えてくれましたが、のどに詰まらせるリスクについては言及なしなので、これでは落第点ですね。しかしなんとなくそれっぽく答えてくれるところがスゴイのです。

北朝鮮は安全か?

次に、元旦からせっせとミサイルを発射している北朝鮮について聞いてみます。

北朝鮮は、一般的に、他の国と比較して安全ではありません。北朝鮮は、国内での人権や基本的自由に対する深刻な問題があることで知られており、また、世界的にも人権や基本的自由に対する問題があるとされています。また、北朝鮮は、国内での政治的不穏実態や、国外との関係においても、他の国と比較して安定していないとされています。

そのため、一般的には、北朝鮮を訪問することは、危険であると考えられています。旅行会社や政府機関は、北朝鮮への訪問については、慎重を勧めることがあります。また、北朝鮮への訪問に際しては、事前に、当該国の最新の情勢や注意すべきことなどを確認することが重要です。

日本にいる人にとってのリスクを聞きたかったのですが、訪問することのリスクについて答えてくれました。訪問することは「危険」とハッキリ言ってくれましたが、これも片手落ちな感じです。

統一教会は安全か?

昨年の安倍元首相銃撃事件の後、統一教会についてのニュースが加熱しています。これについても聞いてみましょう。

統一教会は、キリスト教に基づく宗教団体です。統一教会は、世界中で活動しており、数多くの信者を持っています。

統一教会では、信仰や信徒間の絆を重視し、慈善活動や福祉活動なども行っています。統一教会では、倫理的な価値観を重視し、信徒たちを導くことを目的としています。

そのため、統一教会を、単純に「安全」であるかどうかという観点で評価することはできません。また、統一教会では、信徒たちが、倫理的で安全な社会を目指すことを推奨していますが、社会全体が「安全」であるかどうかという問題については、統一教会が直接的には関わりません。

そのため、統一教会を、「安全」であるかどうかという観点で評価することはできません。

このように答えにくい質問をうまく「かわす」ところもスゴイですね。chatGPTは現時点で2021年までの情報しか学習していないようなので、2022年の出来事を含めた回答は期待できません

コロナワクチンは安全か?

ツイッターでは相変わらず過熱している反ワクチン議論ですが、これもAIにズバッと答えてもらいましょう。

コロナワクチンは、多くの場合、安全で有効です。コロナワクチンを開発する際には、さまざまな安全性テストが行われます。そのテストの結果をもとに、国や地域の政府機関がワクチンを承認し、一般の人々に使用することを許可します。

ただし、ワクチンを接種することによって、体に副作用が起きることがあります。これらの副作用は通常軽微で、短期間で治まります。しかし、すべての人がワクチンを接種しても、すべての人が同じ反応を示すわけではありません。また、すべてのワクチンには、すべての人が接種できるという保証はありません。特に、特定の病気やアレルギーを持つ人は、特別な注意が必要であることもあります。

そのため、コロナワクチンを接種する前に、医師や健康関係者に相談することが重要です。ワクチンを接種する前に、健康状態やアレルギーを伝え、ワクチンが適しているかどうかを確認することで、安全にワクチンを接種することができます。

これかなり完璧に近い回答ではないでしょうか。他のものでもこのレベルの回答が常に出てくるようになると、リスクコミュニケーションも新時代を迎えそうな気がします。

マイクロプラスチックは安全か?

ここから化学物質系の話も聞いてきます。まずは本ブログでもいくつか記事を書いているマイクロプラスチックについてです。

マイクロプラスチック(microplastic)とは、細微なプラスチック粒子のことを指します。マイクロプラスチックは、プラスチック製品やプラスチック加工工程で生じるものや、環境中で分解したプラスチックから生じるものがあります。

マイクロプラスチックは、様々な場面で検出されており、環境問題として注目されています。ただし、マイクロプラスチックが、人体や生物に与える影響については、現在、まだ十分に理解されていません。

そのため、マイクロプラスチックが、安全であるかどうかを、一概に評価することはできません。また、マイクロプラスチックが、人体や生物に与える影響については、今後も継続的に研究が進められることが予想されます。

そのため、マイクロプラスチックをより深く理解することが、今後、重要であると考えられます。

これもなかなかうまい回答ですね。現時点では安全とか危険とか言える状況でもないということを簡潔に表現できています。

ネオニコチノイド系農薬は安全か?

次は農薬です。本ブログでも記事を書いているネオニコチノイド系農薬について聞きます(記事のリンクは記事最後の補足参照)。

ネオニコチノイド系農薬は、一般的には、安全に使用することができます。ネオニコチノイド系農薬は、農業で用いられる化学薬品の1つであり、作物を害虫から守るために使用されます。

ただし、すべての農薬が十分に安全であるということはありません。農薬を使用する際には、常に注意を払う必要があります。農薬を使用する前には、必ず使用説明書を読んで、農薬を正しく使用することが重要です。また、農薬を使用する際には、必ず手袋やマスクなどの個人防護具を着用して、身体を保護することが重要です。

さらに、農薬を使用する際には、周囲の環境や生き物にも配慮する必要があります。農薬は、農地以外のエリアにも持ち込まれることがあり、水や土壌に残留することがあります。そのため、農薬を使用する際には、周囲の環境や生き物を汚染しないようにすることが重要です。

そのため、農薬を使用する際には、必ず注意を払い、正しく使用することが重要です。また、農薬を使用する前には、必ず医師や健康関係者に相談することで、自分自身や周囲の環境、生き物を守ることができます。

正しく使用する限りは安全であるという回答が出てきました。これもなかなか優秀な回答ですね。ただ、「ネオニコチノイド系農薬」についての記述というよりは単に農薬一般についての記述になっているように思います。

グリホサートは安全か?

ついでに除草剤グリホサートについても聞いてみました。これも発がん性をめぐる状況について記事を書いています(リンクは記事最後の補足参照)。

グリホサートは、医薬品の一種であり、抗生物質であるニオブを含む薬剤です。グリホサートは、様々な感染症や炎症性の疾患を治療するために使用されます。

グリホサートは、正しく使用される場合、有効であるとされています。ただし、すべての医薬品には、副作用がある可能性があります。グリホサートを使用する際には、必ず医師や薬剤師からの指示に従い、正しく使用することが重要です。また、グリホサートを使用する前には、必ず医師や薬剤師に相談することで、自分自身の健康を守ることができます。

そのため、グリホサートは、正しく使用される場合、安全であると言えます。しかし、グリホサートを使用する際には、常に注意を払い、正しく使用することが重要です。

なんと嘘八百な答えが出てきてしまいました。農薬ではなく医薬品・抗生物質との認識になってしまっています。後の説明は医薬品についての一般的な記述になっています。おそらくまずは農薬とか医薬品とかのグルーピングを行って、そのグループに一般的にあてはまるような回答を出しているのでしょう。

AIは間違ってはいけないのか?

以下の記事にあるように、Facebookの母体のMetaが開発した科学記事生成AIはすぐに公開停止になったとのことです。これは使ってみる間もありませんでした。ウソ記事を生成してしまうことが原因のようです。

Gigazine: 科学記事を自動で生成するAI「Galactica」がわずか3日で公開停止へ、入力内容次第で「ウソ記事」を生成可能と判明

科学記事を自動で生成するAI「Galactica」がわずか3日で公開停止へ、入力内容次第で「ウソ記事」を生成可能と判明
Facebookを運営するMetaに属する人工知能(AI)研究所のMeta AIが、「科学知識を蓄えて融合し、形にする」ことができる自然言語処理モデル「Galactica」を2022年11月15日に一般公開しました。しかし、このGalacticaが科学的に間違った内容も出力できる...

ChatGPTもグリホサートの例のようにウソを吐き出すこともあります。ただ、ChatGPTはチャットAIであり、「会話」をする機能を持ちます。人間でも「いやいやそれはこうだよ」「あーそうだね、勘違いしてた」などと修正しながら会話をしていくものです。

今回の例でも「グリホサートは除草剤であり医薬品ではありません。」と書いてあげるとちゃんと修正してくれました。その後改めて「グリホサートは安全か?」と問うと以下のように変わります。

グリホサートは、除草剤であり、化学薬品です。グリホサートは、植物の発芽や生長を妨げる作用を持っており、除草剤として使用されます。

ただし、グリホサートは、有毒な成分を含んでおり、使用する際には、注意を払う必要があります。また、グリホサートを使用することで、生物に悪影響を与えることもあるため、使用する場所や、使用量なども見慎む必要があります。

そのため、グリホサートを、単純に「安全」であるかどうかという観点で評価することはできません。また、グリホサートを使用する場合には、使用方法や注意点をよく確認し、正しく使用することが重要です。

このようにちゃんとコミュニケーションが成立していることに感心しました。「AIは間違ってはいけなのか?」、というよりは「コミュニケーションが可能かどうか?」という問いのほうがより本質的で重要なのでしょう。

まとめ:ChatGPTに安全かどうか聞いてみた

AIチャットのChatGPTにいろいろなリスク要因について「安全かどうか」聞いてみました。基本的にロジックがしっかりした回答を出すことができますが、最新の時事問題への対応ができていなかったり、まれにウソを吐き出したりすることもあります。全体的にはかなり有用であり、リスクコミュニケーションへの応用が将来的に期待できると感じました。

追記
リスクコミュニケーションにおける情報発信に役立てる方法を紹介する記事を書きました。

リスクコミュニケーションもAIが担う新時代その2:情報提供の内容をAIに書いてもらった
ChatGPTやStable DiffusionなどのAI技術を活用し、文書を要約させる、箇条書きから文章を生成させる、わかりやすい文章を生成するための注意事項を守らせる、文章を書き換えさせる、イラストを描かせるなど、リスクコミュニケーションにおける情報発信に役立てる方法を紹介します。

補足

本ブログの過去記事の中から、今回聞いてみたリスクに関するものを挙げておきます。

冬のリスクその2:餅による高齢者の窒息死亡事故は近年ようやく減ってきた
冬のリスクと言えばお正月の餅による窒息死亡事故ですが、人口動態統計から冬のリスクを抽出して経年変化を見たところ、高齢者の窒息による死亡リスクは高止まり状態から2010年以降になってようやく減少傾向が見えてきました。高齢者が餅で死ぬのはしょうがないよね、という空気が変化してきたのかもしれません。
コロナワクチンのリスクとリターン(ベネフィット)を定量的に比較する
コロナワクチンについての安全性について注目されているところですが、リスクとリターンをきちんと定量的に評価して比較したものは今のところ見あたりません。そこで、分母は揃えてリスクとリターンの比較を試みました。比較は単純ではありませんが、20代と60代の比較ではリスクとリターンの関係が逆転するかもしれません。
学術会議の提言から読み解くマイクロプラスチック問題のからくり
日本学術会議が2020年4月に公表したマイクロプラスチックに関する提言の内容をまとめて紹介します。マイクロプラスチック汚染が進んでいる現状と、生海洋物やヒト健康への影響を懸念する内容ですが、リスク学的な視点からはツッコミどころも多いです。リスク評価がないままに悪いものと印象付けていると感じます。
オランダの政策評価書から明らかになったネオニコチノイド系殺虫剤禁止後のリスクトレードオフ
欧州でネオニコチノイド系殺虫剤が規制されましたが、その後のリスク低減効果について、オランダが公表した政策評価書の内容を紹介します。規制の当初から指摘されていたこと(ネオニコチノイド系殺虫剤を禁止しても他の農薬に切り替えるだけでリスクは減らない)が現実になったことが明らかとなっています。
除草剤グリホサートの健康影響その3:グリホサートの発がんリスクの大きさはどれくらいか?
農薬の発がん性は科学的に完全な白黒がつくものではないため、発がん性あるなしの禅問答は尽きません。その禅問答から抜け出すには、発がん性があると仮定してそのリスクを計算することが有用です。除草剤グリホサートを例に発がんリスクを計算する方法を解説します。

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