飲食店の感染症対策はグループ内かグループ間か?GoToEatキャンペーンの感染症対策のからくり

corona_cafe 基準値問題

要約

飲食店の感染症対策ではグループ内とグループ間の両方の対策が必要となりますが、GoToEatキャンペーンにおける感染症対策では、グループ内の感染症対策がもともとの外食業ガイドラインに比べて後退してしまいました。また、「徹底した」「できるだけ」「適度な」などのあいまいな表現が目立ちます。

本文:GoToEatキャンペーンの感染症対策

GoToトラベルキャンペーンに続いて、コロナによる飲食店売り上げ減少対策としてのGoToEatキャンペーンが開始予定となり、農林水産省による公式サイトもオープンしました。

https://gotoeat.maff.go.jp/

私もどんな制度なのかイマイチよくわかっていませんでしたが、以下のサイトに端的にまとめられていました。

<時間がない方へ!1分でわかるGo To イートキャンペーン>

①「Go To Eatキャンペーンとは」、ポイント還元やプレミアム付き食事券の発行を支援することで、感染予防対策に取り組む飲食店の需要を喚起し、同時に食材を供給する農林漁業者を支援するキャンペーンです。

②主な支援内容は、①地域内の登録店舗で使える25%のプレミアムを付けた食事券を発行する、②オンライン予約サイトで予約・来店した方へ、次回に使える1人最大1,000円分のポイントを付与する、の2点です。

③実施時期は、9月中にも感染地域の比較的少ない地域から、プレミアム付き食事券の発行を順次実施する予定です。オンライン予約によるポイント還元は、10月1日以降に順次開始する方向で調整中です。

④参加登録店舗には、感染予防対策に取り組むことを条件とし、利用者にも「新しい生活様式」に基づいた利用を呼びかけます。

https://travelersnavi.com/coupon/goto-eat

このキャンペーンに参加する飲食店は、コロナウイルスの感染症対策を行う必要があります。もともと外食業界が定めた「外食業の事業継続のためのガイドライン」があり、今回のキャンペーン用の感染症対策は別途農林水産省が定めました。その二つを比較してみると、飲食店の感染症対策はグループ内の感染を防ぐためのものか、グループ間の感染を防ぐためのものか、という相違が見られました。このあたりが大変興味深かったので、本記事で紹介してみたいと思います。

飲食店のコロナウイルス感染リスク

飲食店での感染といえば、接待を伴うキャバクラ、ホストクラブ、スナックなどが思い浮かびます。ところが、通常の居酒屋などでの会食でも、集まったグループ内で感染が広がった事例は多数報告されています。

コロナ発生初期の屋形船クラスター(新年会だった)も象徴的ではありますが、9月に入ってからのニュースを少し検索しただけでも、岐阜県で親族12が会食して11人感染、千葉県で7人が会食して全員感染などが見つかります。以下のニュースでは、接待を伴う飲食店よりも会食・集会のほうがむしろ感染数が多いことがわかります。

埼玉新聞:<新型コロナ>家庭内の感染最多…さいたま市が感染経路調査 次に多いのは勤務先、会食・集会、接待飲食店

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

市によると、推定感染経路は、家庭内に次いで勤務先が25・9%、会食・集会などが18・5%、接待を伴う飲食店が15・2%などとなっている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d7cde918d161ee00f3dca3094bd30a77a1959b71

このように、飲食店でのコロナ対策はグループ内の感染予防対策が重要になるでしょう。

活動別のリスク評価の要素として、3密(密集、密閉、密接)、活動時間、マスク、ソーシャルディスタンスが挙げられますが、どれもハイリスクの条件を満たしてしまうのが飲食店での会食です。特にお酒を伴う場合にリスクが高くなります。

高リスクになる特徴としては、以下の3つが挙げられます。
・食べるときにはマスクをはずす
・お酒を飲むことで警戒が緩くなる
・普段よりもおしゃべりが弾む

以前に活動別コロナ感染リスク評価を紹介しましたが、屋内レストランでの食事は10段階中7(高いほど高リスク)でした。

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その2:海外評価事例の追加紹介と統合評価(メタアナリシス)
日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例をさらに3つ紹介します。前回紹介した3例と合わせて6例の評価結果をメタアナリシスによって一つに統合し、58種類の活動のリスクを10段階で示すことができました。

飲食の際はマスクをはずすことが一番のリスクとなりますので、こういう場合はアクリル板などによるパーティションがファーストチョイスではないでしょうか。パーティションがどのように飛沫を防ぐかのシミュレーション結果なども公開されています。

GoToEatキャンペーンにおける感染症対策とガイドラインの違い

GoToEatキャンペーンの公式サイトに掲載されている感染症対策が以下となります。

gotoeat

他のグループのテーブルとの距離を開けるかパーティションで区切る、他グループと相席なら真正面の配置を避けるかパーティションで区切る、となっており、グループ間の感染防止が前面に出ているように見えます。

一方で、もともとあった外食業の事業継続のためのガイドライン(令和2年5月14日)にはこのあたりがどのように書いてあるか、以下を見てみましょう。

2) 客席へのご案内
・テーブルは、飛沫感染予防のためにパーティションで区切るか、できるだけ2m(最低1m)以上の間隔を空けて横並びで座れるように配置を工夫し、カウンター席は密着しないように適度なスペースを空ける。

・真正面の配置を避けるか、またはテーブル上に区切りのパーティション(アクリル板等)を設けるなど工夫する。

・少人数の家族、介助者が同席する高齢者・乳幼児・障害者等対面を希望する場合は、可能としてもよいが、他グループとの相席は避ける。

・グループ間の安全を確保するために、他のグループとはできるだけ2m(最低1m)以上の間隔を空け、会話は控えめにし、BGM を聞くなどを勧めることを検討する。

https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/attach/pdf/ncv_guideline-29.pdf

一見GoToEatキャンペーンの対策と同じことが書いてあるように見えます。ところがよーく見てみると「なんだかおかしいっ!?」ことに気づきます。

テーブル上をパーティションで区切るか、真正面の配置を避ける、というのは「グループ間(相席)」ではなく「グループ内」の感染防止対策である、となっているからです。少人数の家族や介助者が同席の場合は対面の配置が可能、とわざわざ書いてあるからです。

つまり、家族などではない、職場や友人同士の集まりなどの場合はグループ内であっても対面で座らないか、テーブル上をパーティションで区切るべき、となっているのです。そう、本当に必要な対策はこっち(グループ内対策)なのですよね。グループ内対策の部分がGoToEatキャンペーンではすっかりと抜け落ちてしまっているのです。これに気がついたときは衝撃的でした。

GoToEatキャンペーンにおける感染症対策の基準値

もともと、GoToEatキャンペーンにおける感染症対策の根拠を調べようと思っていたのですが、ちょっと違う方向(グループ内かグループ間か)にずれてしまいました。いったんGoToEatキャンペーンにおける感染症対策に戻りましょう。

気になったのが、「徹底した換気」、「できるだけ2m(最低1m)」、「適度なスペースを空ける」のようなあいまいな記載が目立つことです。徹底した、ってどの程度なのかわかりませんし、 「揺るぎない信念がある」という意味なので、根性論っぽいですよね。

このほかにも以下のような対策が条件となっています。

②カラオケボックスや接待を伴うスナックは本事業の対象として認めていないが、極一部の対象飲食店ではカラオケ設備を有している場合がある。そうした場合でも、キャンペーン期間中は、食事券の利用者又はポイントの付与対象者・利用者に限ることなくカラオケ設備を使用しない。
③大量の飲酒は控えるよう利用者に周知する。
④営業時間の短縮等、国又は地方公共団体からの要請に従う。
⑤農水省が事前通告なしに行う訪問調査に協力する。
⑥ガイドラインを遵守していない旨の指摘には適切に対応することとし、対応しない場合は、事業者により登録が取り消される。事業者及び農水省は利用者からの指摘を受ける相談窓口を設置する。
⑦登録飲食店の利用者が着席した際に目につく場所で、接触アプリの紹介をする(メニュー表上にシールを貼る、レシートに印字する等)。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/attach/kansenshoutaisaku.pdf

「③大量の飲酒は控えるよう利用者に周知する。」というのもありますが、これも大量ってどのくらいなのかあいまいですね。酔っていても判断を間違えないくらいの基準が良いのではないでしょうか。

また、利用者に求められる対策も書かれています。

2 利用者に求められる感染症対策
○登録飲食店は、以下の事項をその利用者に周知する。
・発熱や咳など異常が認められる場合は来店しない。
・できる限り混雑する時間帯を避ける。
・大人数での会食や飲み会を避ける。
・デリバリーやテイクアウトも活用する。
・店が、席の配置や食事の提供方法を制限することに協力する。
・食事の前に手洗い・消毒をする。
・咳エチケットを守る。会話の声は控えめにし、大声に繋がりやすい大量の飲酒を避ける。
・食事中以外はマスクをする。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/attach/kansenshoutaisaku.pdf

やはり「大人数」、「大量の飲酒」もあいまいですね。何も根拠がなくても「5人以上の会食は避けて」と数字を言い切った大阪府の吉村知事は偉いと思います。政治家の仕事はこういうことですね。

個人的には居酒屋などで「いらっしゃいませ!」「お待たせしました!」「ビール注文いただきました!」など店員みんなで一斉に叫ぶのをやめてほしいと思います。あれを鼻が出た状態のマスクでやられるのが嫌です。

まとめ:GoToEatキャンペーンの感染症対策

飲食店の感染症対策ではグループ内とグループ間の両方の対策が必要となります。特に、グループ内は同じテーブルで距離が近くなり、食事中はマスクもはずすため感染リスクが高くなります。実際に多数のクラスター感染が発生しています。GoToEatキャンペーンにおける感染症対策では、グループ内の感染症対策がもともとの外食業ガイドラインに比べて後退してしまいました。また、「徹底した」「できるだけ」「適度な」などのあいまいな表現が目立ちます。

補足

GoToEatキャンペーンの対象となるのは、日本標準産業分類「76 飲食店」に該当する飲食店とのことで、デリバリーピザやキッチンカーなどは「77 持ち帰り・配達飲食サービス業」、カラオケは「80 娯楽業」になるので今回のキャンペーンは該当しません。また、76であっても小分類「766 バー,キャバレー,ナイトクラブ」は対象外とのことです。そんな分類があるというのも初めて知りました。

総務省 日本標準産業分類:

総務省|統計基準等|分類項目名、説明及び内容例示

また、GoToEatキャンペーンにおける感染症対策は、都道府県独自の条件を加えることも可能となっています。茨城県の場合は「いばらきアマビエちゃん」への登録及び宣誓書を店舗内に掲示すること、となっています。

いばらきアマビエちゃんとは?
「いばらきアマビエちゃん」は,ガイドラインに沿って感染防止に取り組んでいる事業者を応援するとともに,感染者が発生した場合に,その感染者と接触した可能性がある方に対して注意喚起の連絡をすることで,感染拡大の防止を図ることを目的としたシステムです。

https://www.pref.ibaraki.jp/shokorodo/chusho/shogyo/2020koronatsuuchi/20200615.html

以下のように、COCOAと違ってアプリをインストールする必要もなく、お店にある二次元コードの写真を撮るだけで使えるので簡単・便利ですね。

質問6
国の「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」とはどう違うのか。

回答
国がリリースした「新型コロナウイルス接触確認アプリ」はスマートフォンのアプリでBluetooth機能を利用し,感染者が発生した場合に,濃厚接触された方(15分以上,概ね1m以内にいた方)に対して,アプリで通知するものです。

対して,本システムは,二次元コードを利用し,不特定多数の人が集まる施設やイベントで同じ日に二次元コードを撮影した人にメールを送信する仕組みとなっているため,濃厚接触者だけでなく,同じ日に同じ場所に居たことにより感染者と接触した可能性がある方に幅広く注意喚起を行うものです。

また,二次元コードやメールを活用したシステムですので,スマートフォンだけではなく,いわゆるガラケー(フィーチャーフォン)を使っている方でもシステムを活用できます。

国のアプリと県のシステムを両方利用していただき,感染拡大の抑制に積極的に御協力いただきますようお願いします。

https://www.pref.ibaraki.jp/shokorodo/chusho/shogyo/2020koronatsuuchi/20200615.html

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