〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その2:海外評価事例の追加紹介と統合評価(メタアナリシス)

crowded リスク比較

要約

日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例をさらに3つ紹介します。前回紹介した3例と合わせて6例の評価結果をメタアナリシスによって一つに統合し、58種類の活動のリスクを10段階で示すことができました。

本文:活動別コロナ感染リスク2

前回の記事にて、〇〇(活動の種類)をしても大丈夫か(コロナに感染しないか)?という判断に使えそうな活動別コロナ感染リスク評価の海外事例を3例紹介しました。

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その1:海外評価事例の紹介
日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例を3つ紹介します。どのような活動を控えてどのような活動は控えないのか、自分の置かれた状況でどれくらいのリスクを受け入れるのか、という個人の判断に参考になります。

このようなリスク評価は日本ではほとんど目にすることはありませんが、英語のサイトではたくさん出てきます。本記事では、Googleで「corona risk activity」で検索したりして見つけてきた評価事例をさらに3例追加して紹介したいと思います。ただし、あまりたくさんの評価事例を出されても、評価ごとの違いをどう受け止めればよいのかむしろわかりにくくなります。そこで、複数の評価を一つに統合する「メタアナリシス」をやってみます。

どのような活動を控えてどのような活動は控えないのか、自分の置かれた状況でどれくらいのリスクを受け入れるのか、そのような個人の判断に役立てば幸いです。

25種類の活動のリスクランク

Fatherlyという育児サイトに掲載されている活動別コロナウイルス感染リスク評価です。

25 Common Activities, Ranked by Coronavirus Risk

25 Common Activities, Ranked by Coronavirus Risk
We ranked coronavirus risk by activity — from getting a haircut to going to Disney World, attending school or daycare — during the COVID-19 ...

25種類の活動のコロナ感染リスクが1~25のランクで示されています。ただし、評価法、評価者などの詳細は不明です。米国フロリダ州の評価です。ディズニーワールドのリスクなど、フロリダっぽいところがありますね(来年まで行くべきじゃないと書いてあります。。)。また、それぞれの活動毎に開設とリスクを下げる方法が書いてあります。まとめると以下の表になります:

活動ランク
ジムで運動する25
学校24
職場のオフィス23
子供のサマースクール22
高齢の親戚や知人宅の訪問21
ディズニーワールド20
飛行機に乗る19
保育園18
海やプールで泳ぐ17
テニス16
バスケットボール16
野外バーベキュー15
屋内レストラン14
映画館13
屋内での礼拝12
ビーチでくつろぐ11
ヘアカット、ネイルサロン9-10
抗議運動へ参加8
友人の家に訪問7
子供同士で遊ぶ6
スーパーで買い物5
キャンプ4
子供の遊び場3
病院の待合室2
図書館1

ジムでの運動が最もリスクの高い活動で、学校がそれに続きます。反対に、図書館で本を借りることが最もリスクの低い活動で、病院の待合室がそれに続きます。

クイズ形式のリスク評価

EYEFITNESS NEWSというカリフォルニア中心のニュースサイトに掲載されているクイズ形式を用いた活動別コロナウイルス感染リスク評価です。

COVID-19 risk calculator: Quiz yourself on the safest, most dangerous things you can do as California reopens

Page Not Found | abc7.com

12の活動について最初にシナリオを読みます。例えばヘアカットなら、ほかに客はいなくて窓は開いておりあなたと美容師二人ともマスクをしている、など非常に詳しく書かれています。リスクを5段階で推定して選択すると、正解と解説動画を見ることができます。評価者は以下の3名の専門家です:
George Rutherford, MD
Alok Patel, MD
Peter Chin-Hong, MD
まとめると以下の表になります:

活動リスク
屋内でのパーティー5
高齢の親戚や知人宅の訪問4
ヨガ4
バケーション(飛行機&ホテル&ビーチ)4
ジムで運動する3
子供のサマースクール3
ヘアカット、ネイルサロン3
友人の家に訪問3
子供同士で遊ぶ2
スーパーで買い物2
キャンプ2
地下鉄やバスに乗る2

屋内でのパーティーが最もリスクの高い活動で、反対に子供同士で遊ぶ、スーパーで買い物、キャンプ、地下鉄やバスに乗る、がリスクの低い活動になっています。

このサイトが良いのはクイズ形式で自分で考えるプロセスが入っているところです。また、シナリオが非常に細かいところもよいですね。同じ活動でも条件によってリスクは大きく異なります。例えば飛行機に乗るという活動一つとっても、このサイトではマスクと手袋をつけて早朝一番のフライトに乗り、窓際の席に座り隣は空席、飛行時間は1時間など、非常に細かくシナリオが書かれています。

三密+接触時間の4観点でのリスク評価

COVID-19 Recovery Consultingというコンサルティング会社(もうそんな会社ができちゃうのか。。)が作成したリスクチャートです。

https://www.covid19reopen.com/resources/covid-19-daily-activity-risk-index

三密(密集、密閉、密接)+接触時間の4つ観点で評価しています。カラーチャート(青から赤へリスクが高くなる)で直感的に理解できるインフォグラフィックになっています。評価者は以下の公衆衛生の専門家3名です。
Ezekiel J. Emanuel, MD, Ph.D.
James P. Phillips, MD, EMT-T
Saskia Popescu, PhD, MPH, MA, CIC
まとめると以下の表になります:

活動リスク
地下鉄やバスに乗る5
飛行機に乗る5
バスケットボール5
映画館5
屋内での礼拝5
バー・ナイトクラブ5
大規模な音楽コンサート5
野外コンサート/スポーツ5
サッカー5
ジムで運動する4
ヘアカット、ネイルサロン4
職場のオフィス4
屋内レストラン4
病院の待合室3
タクシーに乗る3
歯医者3
屋外レストラン3
博物館3
スーパーで買い物2
テニス2
小売店で買い物2
ゴルフ2
ピクニック1
公園で散歩1
外でジョギング・サイクリング1
食事のテイクアウト1

バー・ナイトクラブや大規模な音楽コンサートなどハイリスクでおなじみの活動がやはりここでも最もリスクが高く、反対に、食事のテイクアウトやジョギングなどが最もリスクの低い活動になっています。

このリスク評価を解説した記事が以下のサイトにありました。

To Navigate Risk In a Pandemic, You Need a Color-Coded Chart

The goal, she says, is to move communication about Covid-19 risks away from a binary “do this/don’t do that” message.

https://www.wired.com/story/to-navigate-risk-in-a-pandemic-you-need-a-color-coded-chart/

「彼女の目標は、Covid-19のリスクについてのコミュニケーションを、「これをやる/やらない」という二項対立のメッセージから遠ざけることです。」

評価者の一人によるこのメッセージすごくいいですね。緊急事態宣言から脱した現在は「何をして何をしないか」を国が決めるのではなく、リスクの大きさをもとに個人が判断する必要があります。

日本語での解説記事と日本語に翻訳されたチャートもありました。

米国で新型コロナウィルス対策の「お出かけリスクチャート」が作られる。 個人が正しくリスク管理することが大切 - ナゾロジー
point 米国の専門家からコロナウィルスの外出自粛の基準となるリスク指標が示された 感染リスクは空間密閉、接触時間、混雑度、呼気の勢いなどの要因で決まってくる 無頓着な店舗・企業も存在するため、人々がそれぞれ何がリスクになるか理解することが重要

また、同じ会社がスクールリスクインデックスという学校版も作りました。これも面白いです。

https://www.covid19reopen.com/resources/k-12-school-risk-index

複数のリスク評価の統合(メタアナリシス)

前回の記事と合わせて6つの評価事例を紹介しました。これらを統合して一つの評価にまとめてみたいと思います。こういう解析をメタアナリシスといいます。本来はまずデータを網羅的に収集して、その中から信頼性の高いものを抜き出して行うものです。今回行うものはデータの収集も網羅的ではないし、信頼性の評価なども行っていません。

まず、評価の段階を合わせる必要があります。10段階だったり5段階だったりが混ざっていると単純に比較できません。ここではすべて10段階で評価するために、例えば5段階(1,2,3,4,5)のリスクをむりやり10段階(1.5, 3.5, 5.5, 7.5, 9.5)に変換します。そして、活動毎に各評価を横に並べてリスクの平均値(小数点は四捨五入)をとります。同じ活動で評価が3つ以上あるものは標準偏差も計算しました。まとめると以下の表になります:

分類活動データ数リスクの平均値標準偏差
対人活動何も対策を立てずに人混みにいる事110
対人活動合唱の練習110
対人活動バー・ナイトクラブ490.3
対人活動大規模な音楽コンサート390.3
対人活動500人以上が参拝する宗教儀式へ参加19
野外活動野外コンサート/スポーツ490.9
野外活動サッカー28
旅行ディズニーワールド18
対人活動屋内での礼拝482.1
対人活動屋内でのパーティー382.6
野外活動遊園地28
消費活動ビュッフェ28
消費活動ジムで運動する681.5
対人活動学校381.9
対人活動バスケットボール481.3
対人活動ヨガ18
旅行バケーション(飛行機&ホテル&ビーチ)18
対人活動保育園17
対人活動高齢の親戚や知人宅の訪問371.3
消費活動映画館471.8
対人活動子供のサマースクール27
対人活動職場のオフィス572.1
対人活動結婚式や葬儀へ参加17
対人活動知人にハグや握手をする17
旅行飛行機に乗る571.8
消費活動屋内レストラン570.8
旅行地下鉄やバスに乗る373.0
消費活動ヘアカット、ネイルサロン661.5
旅行タクシーに乗る26
対人活動カジノ16
野外活動ポンツーンボート16
野外活動海やプールで泳ぐ452.6
対人活動友人の家に訪問551.5
野外活動野外バーベキュー450.7
野外活動ビーチでくつろぐ450.3
消費活動小売店で買い物352.2
消費活動ショッピングモール25
消費活動ボーリング15
医療歯医者25
消費活動屋外レストラン350.9
対人活動博物館341.3
消費活動スーパーで買い物642.2
対人活動賑やかな繁華街を歩く24
対人活動子供の遊び場342.1
医療病院の待合室441.7
対人活動抗議運動へ参加14
旅行ホテルでの滞在340.5
野外活動テニス432.5
対人活動子供同士で遊ぶ23
野外活動ゴルフ330.3
対人活動図書館331.5
野外活動キャンプ530.8
野外活動ピクニック23
野外活動公園で散歩321.0
野外活動外でジョギング・サイクリング420.7
消費活動給油22
消費活動食事のテイクアウト420.6
対人活動手紙の開封11

このように、58種類の活動のリスク評価をまとめることができました。標準偏差が小さいほど複数ある評価のばらつきが小さく(どのリスク評価も同じような評価をしている)、標準偏差が大きいと各評価でのばらつきが大きいことを意味します。例えばテニスの標準偏差が大きいのは、ある評価ではテニスやバスケットボールなどのスポーツをひとくくりにしてハイリスクとしたり、違う評価ではプレイヤー同士の距離が離れているので低リスクにしたりしているからです。このように、リスクの大きさだけでなくバラツキの情報も重要です。

まとめ:活動別コロナ感染リスク2

活動別コロナ感染リスク評価の事例を3例紹介し、前回紹介した3例と合わせて6例の評価結果をメタアナリシスによって一つに統合しました。この結果58種類の活動のリスクを10段階で示すことができました。

ここまですべて米国の事例でしたが、これを日本にあてはめる場合にどうすればよいかを次回に考えてみたいと思います。

(だれか、メタアナリシスの結果のイケてる表現方法を教えてもらえないかな。かっこいいインフォグラフィックにしたりとか。。)

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その3:日本での適用可能性を考える
米国の活動別コロナ感染リスク評価を統合したものが日本でも使えそうかどうかを考えてみました。日本での活動として評価すべきものが抜けているものが結構あり、20項目について追加評価を試みました。

補足

活動別コロナ感染リスクチャートのパロディなんかもすでにあってかなりウケました。例えば「マスクを着用して病院内でスクーターレースをする」と「マスクを着用せずに病院内でスクーターレースをする」と「マスクで目を覆って病院内でスクーターレースをする」のリスクを比較するみたいな感じです。海外はこういう裾野の広さがスゴいと思います。

https://imgs.xkcd.com/comics/covid_risk_chart_2x.png

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