線引き問題

化学物質

残留農薬基準値の決め方その3:「ADIを超えないように」決めたら良いのでは?

残留農薬基準は「農薬を正しく使用しているかどうか」という農業規範としての基準であり、健康影響の基準ではないため説明の際は要注意ですが、むしろ説明の仕方を注意するよりも運用を変えて健康影響の基準値(ADIから換算)に変えればよいのでは?という意見についてまとめました。
化学物質

残留農薬基準値の決め方その2:残留農薬ポジティブリスト制における一律基準値の根拠

残留農薬基準値が決められていない農薬-作物の組み合わせに自動的に適用されるポジティブリスト制に基づく一律基準0.01mg/kgの根拠を解説します。毒性がよくわからない場合であっても健康影響の懸念がない摂取量を推定した「毒性学的懸念の閾値」を応用しています。
化学物質

残留農薬基準値の決め方その1:巷にあふれるの説明のほとんどが誤解を招いている

残留農薬基準の決め方の説明として巷にあふれている「ADI(許容一日摂取量)を超えないように決められています」は間違いです。まずADIから換算する基準値というのはどういうものかを説明し、その次に残留農薬基準の決め方(ALARA型)を解説します。
基準値問題

飛沫感染・飛沫核感染・マイクロ飛沫感染・エアロゾル感染・空気感染などの定義は日本と海外で大きく異なる

日本の感染研がようやくコロナのエアロゾル感染を認めたというニュースがありましたが、飛沫感染・飛沫核感染・マイクロ飛沫感染・エアロゾル感染・空気感染などのややこしい線引きについて、なるべく国内外の公的機関が記載する定義を集めて並べてみたところ、日本と海外の違いがよくわかるようになりました。
基準値問題

成年年齢の18歳引き下げにともない、なぜ「お酒は18歳から」にならなかったのか?

飲酒開始年齢の根拠はアルコールの有害性などの科学的根拠ではなく「20歳以上は成年であるから」であったため、成年年齢が18歳に引き下げられると自動的に「お酒は18歳からOK」になるはずです。ところが飲酒開始年齢の引き下げに動いた自民党に対して日本医師会が撤回要求をしたため先送りになったようです。
基準値問題

コロナ濃厚接触者の定義「15分ルール」のからくり―給食14分ルールは安全か?

コロナ感染者が出た際に濃厚接触者の認定を避けるため、学校現場では給食を15分以内に食べなければいけない、15分ごとに座席を離れていったん距離をとる、などのトンデモルール実施されています。濃厚接触者の定義である「15分ルール」が設定された根拠について解説します。
基準値問題

根拠はないが役に立つ―コロナ対策としての換気の基準値CO2-1000ppm

コロナ対策としての換気の基準値CO2-1000ppmは、もともとあった換気の基準値をそのまま使ったものなので感染防止のエビデンスはありませんが、換気のための総合指標として役に立ちます。そのもともとの1000ppmの根拠は、CO2以外の汚染源も考慮して室内空気質の総合指標として決められたものです。
基準値問題

オリンピックにおける性別確認:テストステロン10nMの基準値のからくり

今回は夏休みのため、通常のブログ記事の更新はお休みします。その代わりに、現在東京オリンピックの最中ということでもあるので、オリンピックにおけるトランスジェンダーを含む女子選手としての出場の基準値(テストステロン濃度10nM)の根拠について書いてみます。これも一種の線引き問題です。
基準値問題

海洋放出する原発処理水中トリチウムの基準値1500Bq/Lは風評被害を防止するための基準値なのか?

原発事故後の処理水を海洋放出する際に、消費者の懸念を少しでも払拭して風評影響を最大限抑制するための放出方法として、処理水中トリチウムを1500Bq/L以下にすると決まりました。この数字の根拠を探ったところ、リスクベースで決まった値であり、本来以上に安全側に立った基準というわけではないことがわかりました。
基準値問題

東日本大震災から10年。放射性物質のリスク評価・管理を振り返る:その2 リスク管理をめぐる3つのポイント

放射性物質のリスク管理では、内部被ばくと外部被ばくは別々に管理されており、全体の許容量があいまいなままになっています。また、許容量はリスクベースではなくALARA(As Low As Reasonably Achievable, 合理的に達成可能な限り低く)の原則で決まっており、何をもってALARAかという説明が不十分でした。さらに、検査の意味もリスク評価のためではなく基準値以上の食品をはじくことに意義を求めすぎてしまいました。