〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その4:評価シナリオの設定

3mitsu リスク比較

要約

コロナ感染リスクは活動の種類だけではなくシナリオに大きく依存してきます。活動毎の基本リスクレベル(1~10)に対して、各種シナリオに依存する「感染リスク係数(0~1)」をかけることによってより現実的なリスク評価になるでしょう。

本文:活動別コロナ感染リスク4

前回の記事にて、〇〇(活動の種類)をしても大丈夫か(コロナに感染しないか)?という活動別コロナ感染リスク評価を日本に適用する際の注意点を考え、追加で20種類の活動リスクを評価しました。

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その3:日本での適用可能性を考える
米国の活動別コロナ感染リスク評価を統合したものが日本でも使えそうかどうかを考えてみました。日本での活動として評価すべきものが抜けているものが結構あり、20項目について追加評価を試みました。

総合的にみると、活動そのもののリスクは3密、活動時間、マスク、ソーシャルディスタンスあたりに集約され、プラスその時点の地域の感染蔓延状況が効いてくる、というところになるかと思います。トップ画像のような状況が最もリスクが高い状況ということになるでしょう。

ところで、クイズ形式のリスク評価の事例を紹介した際には、飛行機に乗るという活動の場合、マスクと手袋をつけて早朝一番のフライトに乗り、窓際の席に座り隣は空席、飛行時間は1時間など、非常に細かくシナリオが書かれていました。

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その2:海外評価事例の追加紹介と統合評価(メタアナリシス)
日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例をさらに3つ紹介します。前回紹介した3例と合わせて6例の評価結果をメタアナリシスによって一つに統合し、58種類の活動のリスクを10段階で示すことができました。

このようにコロナ感染リスクは活動の種類だけではなくシナリオに大きく依存してきます。そうなると、活動毎の基本リスクレベル(1~10)に対して、各種シナリオに依存するリスク係数(0~1)をかけることによってリスクが下がっていくような評価にすると、より現実的なリスク評価になると考えます。このときの係数をとりあえず「感染リスク係数」と定義しましょう。本記事ではより現実的なリスク評価のためのシナリオと感染リスク係数について考えてみました。

マスク

マスクはおそらく最も重要なファクターになると思われます。当初マスクについては健康な人が着けても予防効果がないということであまり重視されていませんでした。もちろん感染している人が他人にうつすのを防止する効果は高いということは最初から言われています。ところが、WHOは2020年6月に感染が広がっている地域の公共の場でのマスク着用を推奨すると発表しました。

WHO、マスク指針を大転換 密接場面での着用を推奨 - BBCニュース
世界保健機関(WHO)は5日、新型コロナウイルスをめぐるマスク着用の指針を変更し、公共の場での着用を推奨すると発表した。マスクで「感染力があるかもしれない飛沫を遮断」できると示す新しい研究結果を踏まえた変更という。

インフルエンザなどと比べても、新型コロナウイルスでは飛沫による感染がより重要な経路なので、ウイルスの透過を防止できない布マスクでも飛沫を防ぐマスクの効果は大きいものと思われます。

以前に書いた記事の中でも紹介した研究によると、マスクの装着で感染リスクは85%減らせるとの結果が出ています(ただしこれは医療従事者の話)。

ソーシャルディスタンスのからくりその2:本当に意味があるのかどうかの科学的根拠を調べる
ソーシャルディスタンスの科学的根拠を知りたい場合には「科学的根拠」ではなく「エビデンス」や「メタアナリシス」なのワードとともに検索したほうが質の高い情報にあたります。ソーシャルディスタンスはその根拠は限定的ながら、コロナ感染リスクの低減におおむね効果があると考えてよいでしょう。

コロナウイルスによる死者数予測をしているワシントン大学のThe Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME)については以前の記事でも紹介しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクを比較したいときに押さえおきたいポイント4つ。その3:数字に飛びつく前に信頼性を判断する
メディアによる記事にはセンセーショナルな数字が見出しとして出てくることがありますが、その数字に飛びつく前にその信頼度がどの程度かということを考えることが重要なポイントになります。実際の統計値と仮想的シナリオによる評価、数理モデルによる予測の信頼性について記載します。

IHMEは、非医療従事者(一般の人)が医療用ではない普通のマスクをした場合の感染リスク低減効果として33%という数字を示しています。

http://www.healthdata.org/covid/updates
(2020年8月9日現在、リンク先がみられなくなっているようです)

さらに別の研究では、既存研究のメタアナリシスを行い、アジア人の非医療従事者でのマスクによる感染リスク低減効果は約50%であるとの数字を示しています。

Liang et al. (2020) Efficacy of face mask in preventing respiratory virus transmission: A systematic review and meta-analysis. Travel Medicine and Infectious Disease. Available online 28 May 2020, 101751.

Redirecting

これらはインフルエンザなど新型コロナ以外の研究も含んでおり、新型コロナではより効果が高いと考えると、感染リスク係数はマスクなしで1、マスクありで0.3というところでしょうか。

感染蔓延状況

コロナの感染がまったく出ていない状況や地域と、蔓延が進んでいる状況では同じ活動をしても感染リスクは全く違うものになるでしょう。ところが、これまで紹介してきた活動別感染リスク評価ではこの部分がまったく考慮されていませんでした。東京などの大都市では感染が拡大しており、地方と比べるとリスクはかなり高いといえます。いくつかの都道府県別の状況を以下の表にまとめてみます。

都道府県感染者数
(8/3時点)
人口(千人)10万人あたり
感染者数
リスク係数
東京32521394323.321
福岡1033511020.221
大阪1423882316.131
愛知1199755315.871
茨城8228682.860.3
北海道11452492.170.3
岩手412260.330.1
福島318470.160.1
山形110770.090.03
データ出典:感染者数はhttps://www.stopcovid19.jp/、人口はhttps://uub.jp/pjn/pb.html

感染リスク係数は東京を基準として1とすると、10万人あたりの感染者数10人以上が1、10万人あたりの感染者数1~10人が0.3、10万人あたりの感染者数0.1~1人が0.1、10万人あたりの感染者数0.1人以下が0.03としてみました。東京などとの人の行き来があるので(Go To含む)、地域の感染者数とリスクが完全に比例するわけではないと考えます。10万人あたりの感染者数はだいたい人口密度と直線関係にありそうです。ただし、都道府県内でも例えば北海道では札幌とそれ以外で全然違うと思います(市町村別の感染者数データはどこかに整理されている?)。

感染リスクに関係する他のファクター

活動時間は重要なファクターといってよいでしょう。濃厚接触の定義である1m以内15分を基準とすると、感染リスク係数は15分以内で0.2, 15~60分で0.6, 60分以上で1といったところでしょうか。数字に特に根拠はありません。

ソーシャルディスタンスの効果についてはすでに以前の記事に示しました。1mの距離を開けると感染リスクが平均的に80%減少するという結果をもとにすると、感染リスク係数は1m以内では1、1~2mでは0.2、2m以上で0.1ということになるでしょう。2mの数字は単に1mの半分というざっくりとした判断です。

ソーシャルディスタンスのからくりその2:本当に意味があるのかどうかの科学的根拠を調べる
ソーシャルディスタンスの科学的根拠を知りたい場合には「科学的根拠」ではなく「エビデンス」や「メタアナリシス」なのワードとともに検索したほうが質の高い情報にあたります。ソーシャルディスタンスはその根拠は限定的ながら、コロナ感染リスクの低減におおむね効果があると考えてよいでしょう。

ほかに活動のシナリオで感染リスクに影響を与えそうなファクターとしては、
・活動に付随してランチなど食事をする(マスクを外す行為)かどうか
・自家用車で移動か公共交通機関で移動か
・活動時間帯(混んでいる時間を避けるかどうか)
・季節

食事を伴う活動は屋内レストランなどと同じリスクになると考えてよいでしょう。公共交通機関を使う場合はバス、電車、飛行機などそれぞれのリスクがさらに加わります。活動時間帯は密集度とソーシャルディスタンスに関係しますね、さらに感染蔓延状況にかかわる人口密度にも関係するでしょう。とりあえずはソーシャルディスタンスファクターで調整できるでしょう。季節に関してはあまりにも根拠が少なすぎて判断できません。たぶん夏は冬よりもウイルス自体の勢いは弱まっているはずですが、現在の感染状況からはあまり判断できる要素がないですね。

コロナウイルス感染リスクと死亡リスク

こんな感じでシナリオによる感染リスク係数でリスクの大きさを調整すると、より現実的なリスク評価ができるのではないでしょうか。WEB上でシナリオをポチポチ選択すると評価結果がでるみたいなツールがあると便利ですね。

ここで注意すべきなのは、これまで示してきた活動別感染リスクはあくまで「感染」のリスクであって、「死亡」リスクではないという点です。感染リスクを死亡リスクにさらに換算するには、年齢や性別、既往症などの個人の健康リスクファクターを考慮する必要があります。これについては以前の記事で書きました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクを比較したいときに押さえおきたいポイント4つ。その4:全体でみるか細かい集団に分けるか
コロナウイルスのリスクは性別や年代、地域によって違うことがわかっています。集団を分けると全体のリスクと異なってくることが今回のポイントです。この記事では東京都に住む60代男性のリスクはどの程度か?日本全体のリスクと比べてどのくらい違うか?などの計算をしてみます。

実はこんな感じで死亡リスクを計算できるようなWEBサイトもすでにあります(一応日本語対応ですがたぶん自動翻訳)。

KNOW YOUR RISK
Nexoid's COVID-19 Survival Calculator is a free tool that estimates your infection and mortality risk while providing data to researchers.

ポチポチといろいろ選択していくと、感染リスクと感染した場合の死亡リスクを評価できます。私もこれをやってみたところ、感染リスクは5%、感染した場合の死亡リスクは0.299%でした。これらを掛け算して1からひくと生存リスクが計算され、私の場合は99.985%でした。まあこれでも10万人あたりの死者数10人程度のリスクレベルですから、そこそこの大きさといえるでしょう。

まとめ:活動別コロナ感染リスク4

コロナ感染リスクは活動の種類だけではなくシナリオに大きく依存してきます。活動毎の基本リスクレベル(1~10)に対して、各種シナリオに依存する「感染リスク係数(0~1)」をかけることによってより現実的なリスク評価になるでしょう。地域の感染蔓延状況に加えて、マスクや活動時間、ソーシャルディスタンスに係る感染リスク係数をエイヤっと設定してみました。このようなやり方で感染リスクを評価したり、さらにそこから年齢などの個人のファクターで死亡リスクまで計算できます。

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