〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その1:海外評価事例の紹介

riskmeter リスク比較

要約

日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例を3つ紹介します。どのような活動を控えてどのような活動は控えないのか、自分の置かれた状況でどれくらいのリスクを受け入れるのか、という個人の判断に参考になります。

本文:活動別コロナ感染リスク

7月から新型コロナウイルスの感染が再拡大し、新規感染者数は4月ピーク時を上回っていますが、政府は緊急事態宣言は出さない方針です。死者数が欧米なみにならない限りは4~5月のように「国」が主導して強力に経済を抑え込むことはもうできない(もはや経済側にその余力が残っていない)のではないでしょうか。

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安倍首相「緊急事態再宣言は不要」検査能力強化で万全期す | NHKニュース
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このような状況では個人の判断がより一層重要になってきます。どのような活動を控えてどのような活動は控えないのか、自分の置かれた状況でどれくらいのリスクを受け入れるのか、そのような判断が個人に迫られています。緊急事態宣言時はある意味、とにかく何も考えずに自粛しておけばよかったので考える余地がありませんでした。考えなくてよいというのは「楽チン」なのです。

そしてこれまでリスクに関してsnsを定点観測するなかで、Google検索やYHAOO!知恵袋で〇〇(活動の種類)をしても大丈夫か(コロナに感染しないか)?ということを多くの人々が知りたがっていることが明らかになりました。

2020年6月の「リスク」を分析しました~SNS定点観測結果7~
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2020年6月の調査結果からは、コロナ関連の話題は現減少を続け、人々の意識が経済優先に傾いていることがわかりました。各種の行動をとってもよいかどうかの判断基準については引き続き高い情報ニーズがありますが、対応する情報提供がないままです。

海外では活動別に感染リスクを段階で評価したものがたくさん出てきますが、日本では全然こういう情報がでてきません。これは、コロナは危険(活動はとにかく中止すべき)とコロナはたいしたことない(コロナは風邪みたいなもので恐るるに足らず)の両極端の情報ばっかり出てきたり、リスク管理側が「3密をさけてソーシャルディスタンスさえとれば安全」のように定量的な議論から極力逃げてきたためと思われます。これもリスクコミュニケーション的には非常にマズイ状態といえるのではないでしょうか。

本記事では、Googleで「corona risk activity」で検索したり、ツイッターで見つけたりした海外のコロナ感染リスク評価事例を眺めていくことにします。

三密+ソーシャルディスタンスでリスク評価

ビジネスインサイダーというニュースサイトに掲載されている活動別コロナウイルス感染リスク評価です。

4 main factors determine your risk of getting the coronavirus in any situation. Here’s how daily activities stack up

4 main factors determine your risk of getting the coronavirus in any situation. Here's how daily activities stack up.
Not all activities share the same level of infection risk. One chart shows why eating at a restaurant is riskier than camping.

日本では「三密(密集、密閉、密接)」はすっかり定着した感じですが、この三密に加えてソーシャルディスタンスが可能か、という4つの観点でリスク評価をしたものです。米国での評価です。Vanderbilt Universityの予防医学のWilliam Schaffner教授が監修(?)しているようです。三密度が高いほど、ソーシャルディスタンスがとりにくい活動ほど高リスクになります。4つの観点でそれぞれ1~3の3段階で評価しています。総合スコアは書いていませんが、4つのスコア(1~3)を足していけば4~12の9段階でリスクをスコア化できます。まとめると以下の表になります:

活動リスク
バー、ナイトクラブ12
屋内での礼拝12
屋内でのパーティー12
合唱の練習12
ヘアカット、ネイルサロン11
職場のオフィス11
スーパーで買い物11
野外コンサート/スポーツ10
屋内レストラン10
友人の家に訪問10
小売店で買い物10
ジムで運動する9
地下鉄やバスに乗る9
タクシーに乗る9
飛行機に乗る8
浜辺でくつろぐ8
野外バーベキュー7
ホテルでの滞在6
公園で散歩6
ピクニック6
テイクアウトする5
海やプールで泳ぐ4
キャンプ4
外でジョギング、サイクリング4

屋内での礼拝、バー・ナイトクラブ、屋内でのパーティー、合唱の練習が最もリスクの高い活動、反対に、海やプールで泳ぐ、外でジョギング・サイクリング、キャンプが最もリスクの低い活動となっています。

一つずつ理由が解説してあるリスク評価

M Liveというミシガン州に拠点を置くメディアに掲載されている活動別コロナウイルス感染リスク評価です。

From hair salons to gyms, experts rank 36 activities by coronavirus risk level

From hair salons to gyms, experts rank 36 activities by coronavirus risk level
Which activities are riskiest for spreading COVID-19?

4人の公衆衛生の専門家が、野外か屋内か・他人との距離の近さ・活動時間・予防ガイドラインに従う可能性・(年齢や既往症などの)個人の健康上のリスクレベルの5つの観点から10段階で評価したものです。4人の評価の平均値を採用しています。また、感染拡大状況は非考慮です(どれだけ高リスクな活動をしてもそもそも感染者がそこにいなければ感染しません)。米国しかもミシガン州における評価です。評価を行った4人の専門家は以下の通りです:
Dr. Matthew Sims, Beaumont Health director of infectious disease research
Dr. Dennis Cunningham, McLaren Health Care medical director for infection prevention
Dr. Mimi Emig, retired infectious disease specialist with Spectrum Health
Dr. Nasir Husain, Henry Ford Macomb medical director for infection prevention

まとめると以下の表になります:

活動リスク
何も対策を立てずに人混みにいる事10
バー、ナイトクラブ9
大規模な音楽コンサート9
屋内での礼拝8
野外コンサート/スポーツ8
ジムで運動する8
ビュッフェ8
遊園地8
海やプールで泳ぐ7
バスケットボール7
学校7
ヘアカット、ネイルサロン6
屋内レストラン6
映画館6
子供の遊び場6
ポンツーンボート6
カジノ6
屋内でのパーティー5
友人の家に訪問5
飛行機に乗る5
ビーチでくつろぐ5
野外バーベキュー5
ショッピングモール5
ボーリング5
職場のオフィス4
スーパーで買い物4
小売店で買い物4
屋外レストラン4
病院の待合室4
賑やかな繁華街を歩く4
歯医者4
ホテルでの滞在3
キャンプ3
博物館3
図書館3
ゴルフ3
公園で散歩2
外でジョギング、サイクリング2
給油2
食事のテイクアウト1
テニス1

何も対策を立てずに人混みにいる事が最もリスクの高い活動で、大規模な音楽コンサートやバー・ナイトクラブがそれに続きます。最もリスクの低い活動はテニスや食事のテイクアウトで、給油や外でジョギング・サイクリング、公園で散歩がそれに続きます。

このサイトの評価が非常に良い点は2つあり、一つ目は評価基準(5つの観点)が明確であるということです。コンプライアンスの重要性(予防ガイドラインに従う可能性)が観点に入っているのがユニークですね。二つ目は、一つずつなぜそのようなリスク評価になるのかの解説がついているという点です。酔っぱらうと警戒が緩くなるのでバーは危険という解説があったり、リスクを下げるにはこうすればよい、なども解説もあったりします。

テキサス州医学会のリスク評価

ツイッターで見つけたものですが、このテキサス州医学会が評価したリスクのグラフはけっこうよく見かけます。Texas Medical Associationのサイトにはなぜかアクセスできないのでツイッターのリンクを貼ります。コメント欄がスゴいことになってます。

Be informed. Know your risk. Stay safe.

x.com

グラフの高解像度版はこちらにあります:

https://healthnewshub.org/wp-content/uploads/2020/07/NewsTexasRiskAssessment-copyPDF.pdf?_ga=2.17295034.2048530919.1595602128-2097112870.1595602128

マスクを着用し、できる限りの感染防止対策をした上での活動という前提で10段階で評価したものです。どのような観点で評価したかなどの詳細は不明です。評価したのはTexas Medical AssociationのCOVID-19タスクフォースと感染症委員会の医師達です。米国テキサス州の評価です。まとめると以下の表になります:

活動リスク
バー、ナイトクラブ9
大規模な音楽コンサート9
野外コンサート/スポーツ9
500人以上が参拝する宗教儀式へ参加9
ジムで運動する8
ビュッフェ8
遊園地8
映画館8
バスケットボール7
ヘアカット、ネイルサロン7
屋内レストラン7
飛行機に乗る7
結婚式や葬式へ参加7
フットボール7
知人にハグや握手をする7
海やプールで泳ぐ6
職場のオフィス6
子供の学校などへの送迎6
高齢の親戚や知人宅の訪問6
友人の家に訪問5
ビーチでくつろぐ5
野外バーベキュー5
ショッピングモール5
子供の遊び場4
屋外レストラン4
病院の待合室4
ホテルでの滞在4
博物館4
図書館4
混雑した街中を歩く4
スーパーで買い物3
キャンプ3
ゴルフ3
外でジョギング、サイクリング3
給油2
食事のテイクアウト2
テニス2
手紙の開封1

大規模な音楽コンサートやバー・ナイトクラブ、500人以上が参拝する宗教儀式へ参加が最もリスクの高い活動となっており、映画館、遊園地、ビュッフェ、事務での運動がそれに続きます。逆に手紙の開封が最もリスクの低い活動になっており、テニスや給油が続きます。

まとめ:活動別コロナ感染リスク

リスク評価の事例を眺めることで、日常生活の各活動のリスクの大きさが俯瞰できました。また、リスク評価でどのような要素に着目すべきか(三密、ソーシャルディスタンス、時間、コンプライアンス、個人の健康上リスク)についても把握できました。

ただし、今回紹介した3つの活動別コロナウイルス感染リスク評価は、いずれも米国の事例なのでそのまま日本にてはめることはできないと思います。また、論文になっているようなちゃんとしたものは見つけられなかったので、あくまで専門家によるエキスパートジャッジメント(経験による主観的な評価)です。エビデンスのレベルとしては高くはないことに注意が必要ですが、それでもたくさん集めて比較することでなにか見えてくるものがあるのではと考えています。

今回も3つのリスク評価で、評価が分かれるものもありました。例えばスーパーでの買い物はビジネスインサイダーのサイトでは9段階中上から2番目、テキサス州の評価では10段階中下から3番目です。また、何段階で評価するかもサイト毎に違っていて比べるときに不便です。次回は複数あるリスク評価をどのように比較して理解すべきかを考えるために、メタアナリシスを行ってみたいと思います。

〇〇しても大丈夫か(コロナに感染しないか)?活動別のコロナウイルス感染リスク評価その2:海外評価事例の追加紹介と統合評価(メタアナリシス)
日常生活にかかわる活動別のコロナウイルス感染リスクを評価した海外事例をさらに3つ紹介します。前回紹介した3例と合わせて6例の評価結果をメタアナリシスによって一つに統合し、58種類の活動のリスクを10段階で示すことができました。

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