レギュラトリーサイエンス

化学物質

有機フッ素化合物PFASのリスクその5:PFOS・PFOAの生態リスクはどれくらい?

河川水からPFAS高濃度で検出された場合、ヒトの健康に対するリスクだけではなく水生生物に対する生態リスクも考える必要があります。健康影響におけるADIに相当する生態影響のPNECを整理すると、現時点でPFOS・PFOAの生態リスクの懸念は低いと判断されました。
リスクガバナンス

本の紹介:EBPMの組織とプロセス: データ時代の科学と政策

私も執筆者の一人である書籍「EBPMの組織とプロセス: データ時代の科学と政策(佐藤ら編著)」について紹介します。さまざまな分野におけるEBPMの現状や課題について、特に科学と政策の橋渡しを構成するの4つのプロセス(エビデンスの生成、統合、仲介、対話)に焦点をあてたことに特徴があります。
化学物質

有機フッ素化合物PFASのリスクその4:PFASのリスク評価と母乳育児の悩ましい関係

PFAS問題の解説その4として、20種類のPFASのリスク評価の事例を紹介します。乳児のPFAS摂取量は母乳を飲んだ量でほぼ決まってしまいますが、母乳は感染症のリスクを下げる効果があるのに「PFASでワクチン抗体価が下がる!危険だ!」というリスク評価には大きな疑問が残りました。
化学物質

有機フッ素化合物PFASのリスクその3:PFASがなくなると我々の生活はどう変わるか?

PFAS問題の解説その3として、PFASがなくなると我々の生活はどう変わるかについてまとめます。PFAS使用禁止によって使用エネルギーは増大し(温暖化対策は後退し)、モノ全体の寿命は縮み、安全性が損なわれます。また、PFAS代替物質のリスクがPFASのリスクを上回るリスクトレードオフも懸念されます。
化学物質

有機フッ素化合物PFASのリスクその2:フッ素樹脂が巻き添えで欧州のPFAS規制対象になった

PFAS問題の解説として、PFOS・PFOAからPFASへ世間の注目が変化したことをGoogle trendsを用いて示します。次に、PFASとは何か?についてリスクの観点から大きく3つに分けて解説します。そして欧州で進んでいるリスク評価を伴わないPFAS一律禁止措置の動向について紹介します。
基準値問題

有機フッ素化合物PFASのリスクその1:米国のPFOS・PFOAの規制強化の根拠は免疫力の低下

世界的な規制強化の流れにある有機フッ素化合物PFASについて複数回にわたり解説します。その1では、PFOS・PFOAの米国の飲料水新基準値案に焦点をあてて解説します。有害性評価ではワクチン抗体価の減少というあまり見なれないエンドポイントを採用しています。
リスクガバナンス

政府の外部有識者の選定基準:知識を生み出す能力と知識を社会に応用する能力は異なる

政府に外部有識者として呼ばれている人たちの中に専門家ではない人が混ざりますが、知識を生み出す能力と知識を統合して社会に応用する能力は別物であり、査読論文や被引用数は前者の能力の指標にしかなりません。後者の能力をどのように判断するかを考えてみました。
リスクガバナンス

リスク評価はファクトではないその3~リスク評価の中に潜む価値判断~

「リスク評価は専門家が行うものなので完全に科学的なもの」と言えるわけではなく、その中にはさまざまな価値判断も含まれています。特に「そもそも何を評価するか?」という部分には価値観が大きく反映されるので、専門家以外のかかわり方も重要になります。
リスクガバナンス

リスク評価はファクトではないその2~純粋科学とレギュラトリーサイエンスの考え方の違い~

日焼け止めで淡水生態系は致命的な影響を受けるのか?というテーマから、ファクトを追及することを目的とする純粋科学と、意思決定の判断材料を提示することを目的とするレギュラトリーサイエンスの考え方の違いを解説します。例えば純粋科学では日焼け止め成分をミジンコに曝露させたら死んだというファクトを重視しますが、レギュラトリーサイエンスではミジンコに対する無影響レベルはどれくらいかを重視します。
リスクガバナンス

リスク評価はファクトではない~断片的なファクトから問題解決につなげる作法~

リスク評価はファクトではなく、むしろ「ファクトがわかってからでは遅すぎる」という問題に対応するための作法と言えます。断片的なファクトを最大限有効に活用して、知見が欠けている部分は推定や仮定を置いて穴埋めし、政策などの意思決定の根拠として活用できるようにしたものです。