要約
コロナ禍において、第1波、第2波、第3波の時期に検索数やツイート数のピークが見られ、しかもピークの高さは第1波->第2波->第3波となるにつれて下がってきていることから、「コロナ慣れ」と呼ばれる現象が確認できます。ただし、属性によってその程度に大きな差があることが示唆されました。
本文:ソーシャルリスニングからみる「コロナ慣れ」
本ブログでは、リスクのトレンドをウオッチングするために、Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋などを対象としてソーシャルリスニングを行い、今人々がどんなリスクに注目していたり不安を持っているかを調査しています。方法については2020年3月の調査結果をご覧ください。
これまで、毎月のトレンドをブログ記事として報告してきましたが、マンネリ化してきていることもあり、テーマを絞って報告していきたいと思います。約1年くらいのデータが蓄積されていますので、その経年変化を見ていこうと思います。ただ、この1年は「リスクと言えばほぼほぼコロナ一色」だったため、どうしてもコロナ関連を扱うことになります。
本記事では、コロナ禍における検索履歴やツイートの解析から、2020年2月から2021年3月までの約1年間にわたる推移を見ていきます。特にコロナ慣れと呼ばれる現象が浮かび上がってきたことを示します。
Googleトレンドによる「コロナ」
まずはいつものGoogle Trendsを使って、「コロナ」というワードの検索数の推移を見てみます。2020年2月から2021年3月までの範囲で調べてみました。
「コロナ」の検索数の推移:
第1波(2020年3-4月)、第2波(2020年7-8月)、第3波(2020年12月-2020年1月)に合わせて、感染者数の増加が起こると「コロナ」の検索数も増える、というきれいな関係が見られます。ニュースなどで毎日報道される「今日の東京の感染者〇〇人」という〇〇の数が増えてくるにつれて、気になって調べる人が増えるのです。
ただ、よーく見ると、第1波->第2波->第3波と感染者数は増加したにもかかわらず、「コロナ」の検索数のピークは第1波->第2波->第3波と下がってますね。第1波のピークを100とすると、第2波のピークは55、第3波のピークは45くらいになっています。
この結果の意味することは、もうコロナについて調べる必要もなくなってしまったのか、それとも感染者数増加のニュースが危機感に与える影響がだんだん弱くなっていったのかのどちらかでしょう。後者の場合はいわゆる「コロナ慣れ」と呼ばれる現象になると思われます。
「リスク」を含むツイートの解析から見る「コロナ」の推移
「リスク」を含むツイートを毎週1万ツイートずつ収集しており、その結果はこれまで毎月報告してきました。
本記事ではこれまで収集した「リスク」を含むツイートを再解析し、毎月1か月分のツイートの中から「コロナ」「ワクチン」「マスク」「投資」というワードを抜き出し、全名詞中の登場頻度をパーセンテージで表します。
まずはいいねの数が10以上のツイート(それなりの反応があったツイート)を抜き出してやってみると以下のグラフのような結果が得られます。
「コロナ」に関しては、Google Trendsで得られた結果とほぼ同様に、第1波、第2波、第3波のピークが見られ、しかもピークの高さは第1波->第2波->第3波となるにつれて下がってきています。検索で調べる頻度だけでなく自らの発信が減ることは、興味・関心・不安などが薄れてきたことを示しているのではないかと考えられます。
「ワクチン」については2020年夏ころから話題になりはじめ、その後徐々に上昇トレンドにあります。このままの勢いだと、「ワクチンリスク」が「コロナリスク」を上回りそうです。
「マスク」のピークは2020年6月から8月くらいにかけて出てきます。だいぶ手に入りやすくなったということと、マスクのコロナ感染予防効果がだいぶ示されてきたのがこのころだったと思います。このときのピークを除けばわりと安定的に出現している傾向があります。
「投資」については、「コロナ」とほぼ逆相関の関係にあります。ただ、これも「コロナ」と同様に、第1波->第2波->第3波となるにつれて落ち込み方が弱くなります。特に、第3波のときはほとんど落ち込んでいません。これは逆の意味での「コロナ慣れ」と言えるでしょうか。このころ株価が値上がりを続けていましたので、リスクをとってガンガンいこうぜ!的なムードになっていたと思われます。
属性によって、ツイート推移のパターンは異なる
次に属性による違いを見てみます。自己紹介欄に「主婦」「学生」「サラリーマン」が含まれるツイートのみをそれぞれ抽出しました。ただし、「大学生と高校生の子を持つ主婦で旦那はサラリーマン」などと書かれていた場合、実際は「主婦」属性なのに3つ全部にあてはまってしまいます。なので、それほど精密な分類というわけではないのですが、今までの経験上それでも違いははっきりと見えます。
「主婦」を含む属性では、「コロナ」という単語の頻度に関してやはり第1波、第2波、第3波のピークが見られるのですが、上記とは違ってピークの高さが第1波->第2波->第3波と低くなりません。コロナへの警戒心が減らずにコロナ慣れしにくいことを示しているのかもしれません。ただし、ピーク後の減り幅は第1波->第2波->第3波につれて大きくなっていますね。
また、「コロナ」が減ると「副業」が増えるという逆相関もありますね。「子供」&「子ども」も多く出てくる単語ですが、子供リスクは2月、5月、9月にピークを迎えました。そして2021年2-3月にはほとんどなくなってしまいます。なんとなく2020年2月からの一斉休校明けと夏休み明けに関係がありそうな感じです。「旦那」リスクは「コロナ」と同様の変化をして3つのピークがあります。旦那がコロナを運んでくるリスクがあるということでしょうか?
次に「学生」を含む属性では、「コロナ」は3つのピークがあり、さらにコロナ慣れと見られるピークの減少傾向が見られます。「意識」は常に高く維持されていて、一方で「行動」はコロナとは若干逆相関の関係にあるようです。リスクに備えて感染拡大期では意識を高く保ちつつも行動は控えるということなのでしょう。「お金」に関しても「行動」と似た推移をしていますが、2021年3月にぐっと伸びているあたりが異なります。
最後に「サラリーマン」を含む属性では、「コロナ」のピークはなんと2回しか出てきません。第2波にはほとんど反応がありませんでした。もう経済一色で「コロナは風邪」状態でしたね。第3波ではさすがに反応が見られますが第1波と比べるとだいぶ低くなっており、最も「コロナ慣れ」が顕著です。また、「投資」は「コロナ」と逆相関です。「会社」は若干ですが「コロナ」と似た推移になっていますので、会社リスクはコロナリスクと関係しているようです。「ビジネス」は解釈が難しいのですが上昇傾向にはあるようです。
まとめ:ソーシャルリスニングからみる「コロナ慣れ」
コロナ禍における検索履歴やツイートの解析から、2020年2月から2021年3月までの約1年間にわたる推移を見たところ、「コロナ慣れ」と呼ばれる現象が確認できました。これは、コロナ第1波、第2波、第3波の時期に検索数やツイート数のピークが見られ、しかもピークの高さは第1波->第2波->第3波となるにつれて下がってきています。ただし、ツイートの属性の分類結果から、コロナ慣れの程度には主婦や学生、サラリーマン等の属性によって大きな差があることが示唆されました。
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