放射性物質

リスクガバナンス

ALARAの原則は単なるスローガンではない:韓国による水産物禁輸措置に対するWTO訴訟でなぜ日本は負けたのか?

原発処理水の海洋放出により、中国は日本の水産物を禁輸としました。今後の対応の参考として、WTOとSPS協定について解説し、2019年に日本が韓国に敗訴した理由についておさらいます。争点の一つとなったALARAの原則についてどう向き合えばよいかに注目して解説します。
基準値問題

排水基準と環境基準の関係:原発処理水と事業所排水の考え方の違いに注目

排水基準と環境基準の関係について、原発処理水と事業所排水ではその考え方に大きな違いがあります。原発処理水の排水基準は飲んでも問題なレベルとしてトリチウム1500Bq/Lが設定されていますが、事業所排水では飲めるレベルにまで処理する必要はなく、放出された環境中で希釈された後に飲めるレベルになっていることが求められます。
基準値問題

海洋放出する原発処理水中トリチウムの基準値1500Bq/Lは風評被害を防止するための基準値なのか?

原発事故後の処理水を海洋放出する際に、消費者の懸念を少しでも払拭して風評影響を最大限抑制するための放出方法として、処理水中トリチウムを1500Bq/L以下にすると決まりました。この数字の根拠を探ったところ、リスクベースで決まった値であり、本来以上に安全側に立った基準というわけではないことがわかりました。
基準値問題

東日本大震災から10年。放射性物質のリスク評価・管理を振り返る:その2 リスク管理をめぐる3つのポイント

放射性物質のリスク管理では、内部被ばくと外部被ばくは別々に管理されており、全体の許容量があいまいなままになっています。また、許容量はリスクベースではなくALARA(As Low As Reasonably Achievable, 合理的に達成可能な限り低く)の原則で決まっており、何をもってALARAかという説明が不十分でした。さらに、検査の意味もリスク評価のためではなく基準値以上の食品をはじくことに意義を求めすぎてしまいました。