今回は夏休みのため、通常のブログ記事の更新はお休みします。その代わりに、「国際テロリズム要覧2022」という資料を読んでいて、テロに巻き込まれた場合の対処法の国際比較が非常に面白かったのでそれ紹介したいと思います。
テロに巻き込まれた場合の対処法として、イギリスやフランスでは「逃げる、隠れる、通報する」が基本になっていますが、一方でアメリカだと「逃げる、隠れる、〇〇」になっています。
安倍晋三元首相銃撃事件における現場にいた人々の反応
2022年7月8日に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件がテロなのか単なる私怨なのかはわかりませんが、「日本の安全神話(そもそもそんなものがあるかどうか。。。)」への疑問が指摘されました。
AERAdot: 安倍元首相が発砲された後、誰も伏せなかったことが不思議 海外から「日本の安全神話」疑う声
「ニュースを見て一番驚いたのは1発目の発砲のあと安倍さんも周りの人も誰も地面に伏せなかったことです。日本の映画やドラマの銃声は本物とまったく違うから誰も銃が撃たれたと気づかなかったのでしょうか」(シレナさん・20代・女性)
さて、この記事では日本人は銃撃に慣れてないので銃声が聞こえても誰も地面に伏せないのだ、ということが書かれています。このように平和ボケした日本人はテロに遭遇しても棒立ちになってしまうのでしょうか?
ただそのような事件に遭遇した場合にどうすればよいのかについて、防災対策のようになにかマニュアルを読んだり訓練をしたりすることは少なくとも日本ではありません。
ところが、テロに遭わないための対策や、テロに遭遇した場合の対処法が掲載されている「国際テロリズム要覧」という資料が、日本では20年ほど前から毎年作成されているのです。次からはその内容を紹介していきます。
国際テロリズム要覧2022
公安調査庁というところが国際テロリズム要覧という資料を1993年から毎年作成しています。これは今までまったく知りませんでした。それもそのはず、要覧をネットで公開するようになったのは今年からのようです。
公安調査庁:国際テロリズム要覧2022
公安調査庁は、国際テロリズムの潮流及び各種組織の実態を把握し、これらを整理するため、1993年(平成5年)から「国際テロリズム要覧」を発刊しており、この度、通算で第19版に当たる2022年版を発刊する運びとなりました。
「国際テロリズム要覧2022」は、主に2022年1月までのテロ事案やテロ組織の動向に関する国内外の報道のほか、国際機関、諸外国の政府・研究機関等が発表した資料等の公開情報を整理し、取りまとめたものです。
なお、公安調査庁は、テロ組織等を認定又は指定する事務は行っておらず、本要覧中のテロ組織等に係る記述は、公安調査庁の独自の評価を加えたものではなく、上記のとおり、各種公開情報に基づくものです。
本年から本要覧のPDFデータをウェブサイトに掲載することとしました。今後は、PDFデータと併せて、本要覧をオンラインで読みやすいよう再編集したページ「国際テロリズム要覧2022」を掲載する予定となっております。
この要覧は以下の4部構成となっています:
第Ⅰ部(特集)は米国同時多発テロ事件からの20年間における国際テロ情勢をまとめたもの
第Ⅱ部はイスラム国などの主な国際テロ組織の概要と最近の動向をまとめたもの
第Ⅲ部は地域ごとのテロ情勢についてまとめたもの
第Ⅳ部は世界のテロ・武装組織の情報や、テロに遭わないための対策・テロに遭遇した場合の対処法に関するマニュアルをまとめたもの
それでは次に、第Ⅳ部に掲載されている「テロに遭遇した場合の対処法」について見ていきましょう。
テロに巻き込まれた場合の対処法の国際比較
イギリスのテロに巻き込まれた場合の対処法は、「Run・Hide・Tell」です。つまり、「逃げる・隠れる・通報する」です。以下はイギリス警察による動画で、3つの対処法が解説されています。
フランスでは「Escape・Hide・Alert」、やはり「逃げる・隠れる・通報する」です。以下はフランス政府による動画。フランス語ですが、絵を見ているだけでなんとなくわかりますね。
さて、最後にアメリカです。アメリカの場合は「Run、Hide、Fight」、つまり「逃げる・隠れる・戦う」です。最後は「戦う」です!。以下はアメリカ国土安全保障省による解説動画です。「戦う」の解説は4:18頃からです。
アメリカ型の対処法を「国際テロリズム要覧2022」のp357から抜粋します。
自らの命を守るために最善の方法を即座に決意しなければならないが、「ラン・ハイド・ファイト」(Run、Hide、Fight)の対処法がある。
(ア) 逃げる(Run)
逃げ道がある場合には、その場からの脱出を試みる。その際には、以下の点を確実なものとしておく。
○ 脱出のルート及び計画が頭にある。
○ 他者が後続するか否かにかかわらず、脱出する。
○ 身の回り品は持たない。
○ 可能であれば、他者の脱出を助ける。
○ 犯人がいると思われる場所に行こう
とする者を阻止する。
○ 手元を隠さない。
○ 警察官の指示に従う。
○ 負傷者を動かそうとしない。
○ 安全な場合には 911に電話を掛ける。(イ) 隠れる(Hide)
脱出が無理な場合には、犯人に見付かりにくそうな場所を探し、隠れる。その際には、以下の点に注意する。
○ 犯人の視界に入らない場所に隠れる。
○ 銃弾が飛んでくる場合に備え、盾となるものを探す。
○ 自らの行動や動作が制限されない場所に隠れる。
○ 隠れる場所に犯人が侵入してくることを防ぐため、ドアをロックし、バリケードを築く。
○ 犯人が近くにいる場合には、ドアをロックし、携帯電話をサイレントモードにし、ラジオやテレビの電源を切り、物陰で身を潜める。
○ 脱出も隠れることもできない場合には、まず落ち着き、可能であれば、911に電話を掛けて犯人の所在を警察に通報し、電話での会話が難しいのであれば、電話を切らず、通信指令係に聞こえるようにする。(ウ) 戦う(Fight)
逃げることも隠れることもできず、命の危険が差し迫っているときには、最後の手段として、以下の手法で犯人を混乱させ、又は動きを封じることを試みる。
○ 可能な限り果敢に行動する。
○ 物や即席の武器となる物を投げ付ける。
○ 大声を上げる。
○ 全力で戦う。
はい、最後のポイントは「全力で戦う」です。もう一度書きます。
\\ 全力で戦う //
です。屈強なガチムチ社員がたくさんいれば戦うことも可能なのでしょうか?あるいは一般人に見せかけた超有能なスパイ(コードネーム:黄昏)がいるとか普段は市役所の職員をしている殺し屋(コードネーム:いばら姫)がいるとか?やっぱアメリカさんすげーです。
ということで、ここで紹介した動画は結構役に立ちそうなので、ひととおり見ておくと生死を分ける境目になるかもしれませんね。
補足:関連記事
安倍晋三元首相の銃撃事件を例にセキュリティのリスクについて解説した記事
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