大学生などの新生活にまつわる5つの身近なリスク:金銭、自転車、ネット、宗教、メンタル

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要約

4月は進学・就職などで新生活が始まる季節ですが、同時にさまざまなリスクに注意すべきタイミングです。「大学生が狙われる50の危険」という本をベースに新生活にまつわるリスクについてまとめた結果、特に注意すべきリスクとして「金銭、自転車、ネット、宗教、メンタル」の5つが挙げられました。

本文:新生活にまつわるリスク

4月は進学・就職などで親元離れて新しい生活が始まる季節です。新しい生活は楽しいこともたくさんありますが、トラブルなども多いため不安に感じる方も多いと思います。

大学進学などに伴う新生活のリスクに備える情報がまとまった書籍として「大学生が狙われる50の危険」という本が出版されています。これは3年に一度くらい最新情報をもとに更新されており、2023年に入ってからも最新版が出ています。

SNSトラブル、ブラックバイト、マルチ、カルト…リスクに備える最新情報版『大学生が狙われる50の危険』発売!
株式会社 青春出版社のプレスリリース(2023年2月7日 10時00分)SNSトラブル、ブラックバイト、マルチ、カルト…リスクに備える最新情報版『大学生が狙われる50の危険』発売!

これは新生活を始める若者必読の良書だと思います。身近なリスクに対処することで新生活を楽しいものにできるはずです。大学生協が執筆者として入っており、生協が運営する相談窓口保険などのさまざまな事業のデータをもとに記載されているのが特徴です。私の手元にあるのはもっと古いバージョンですが、この本をベースに本記事では新生活の身近なリスクについて整理していきます。

イマドキの危険として挙げられているものは以下のとおりです:
・新入生歓迎に見せかけた宗教勧誘
・SNS利用によるトラブル
・ネットの炎上
・ストーカー
・校則違反
・飲酒によるトラブル、アルコール中毒
・自転車事故
・キャッチセールス
・迷惑行為

紹介した書籍をベースに他には新生活にまつわるリスクを大きく分類すると
・スマホ・ネット利用によるトラブル
・災害や事故
・一人暮らしにまつわる金銭トラブルや盗難などの犯罪、宗教勧誘など
・病気・けが・メンタル悪化・違法薬物
・アルバイト先・旅行・就職活動などの外部でのトラブル
に分けられます。

これらのさまざまなリスクへの対処はぜひ書籍を読んでいただくとよいのですが、本記事で新生活のリスクをまとめるにあたり、なるべくデータになっているものをまとめようと試みました。以下、大学生協によるアンケート調査、学生生活110番や学生総合共済・各種保険支払いのデータ、人口動態調査による死亡統計などの数字を整理しました。

その結果から特に注意すべきものをまとめると「金銭、自転車、ネット、宗教、メンタル」という5つのリスクにまとめられます。以下詳細を記載していきます。

大学入学後に遭遇したトラブルのアンケート調査

「大学生が狙われる50の危険」の中では、大学入学後に遭遇したトラブルについて大学生協が実施したアンケート調査の結果が紹介されています。この調査の最新版は以下のサイトで概要が報告されています。

全国大学生協連:第58回学生生活実態調査 概要報告

第58回学生生活実態調査 概要報告|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)のホームページ。大学生協の組織や事業、活動の紹介や、充実した大学生活を送るためのアドバイスなどを掲載しています。

遭遇率の高いトラブルトップ5は以下のとおりです。
1位:消費者トラブル
2位:バイト先での金銭・労働環境トラブル
3位:SNSによるトラブル
4位:宗教団体からのしつこい勧誘
5位:自転車事故
6位以下には自転車以外の交通事故、痴漢・セクハラ、盗難などが続きます。

1位の消費者トラブルとは、「訪問販売契約」「キャッチセールス」「ネット上での詐欺的金銭トラブル」「振り込め詐欺」「マルチ商法」を含みます。このうちで一番多いのは訪問販売で、一人暮らしの場合に特に多くなります。

ここで、非常に面白いことが書かれています。2022年4月に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、この際に消費者トラブルが増えることが懸念されていました。ところが、新成人となる大学1年生の消費者トラブルの遭遇率は前年と同様だったのです。新成人への普及啓発の効果があったということなのでしょうか?

消費者トラブルについては、商品・サービス・契約内容などをよく確認する、ネット取引の場合は信頼できるサイトを利用する、不審なメール・電話に応じない、などの対策が有効でしょう。

2位のバイト先での金銭・労働環境トラブルについては、業務内容、賃金や労働条件などを事前によく確認する、アルバイトにのめり込みすぎない、トラブル時は大学などの相談窓口に相談する、などの対策があります。

3位のSNSによるトラブルについては、出会いや詐欺などの危険な勧誘は無視する、匿名性を利用した誹謗中傷はしない、仲間内だけで盛り上がるようなことは書かずに誰に見られても大丈夫なことを書く、などがポイントです。

4位の宗教団体からのしつこい勧誘については、不審に思ったらまずは断り、周りの人や相談窓口に相談することが重要です。

5位の自転車は次のデータで紹介します。

大学生協がもつ各種データの解析

「大学生が狙われる50の危険」の巻末にはいくつかのデータが掲載されていますので、それを見ていきましょう。

「学生生活100番」は学生のさまざまな悩みやトラブルに対してサポートする大学生協のシステムです。24時間・365日コールセンターが対応してくれます。

この利用状況をまとめた結果、トラブル・アクシデントでは自転車トラブルが4割以上を占めてトップとなり、次に排水のつまりや水漏れなどの水回りトラブルが2位となりました。内訳では自転車についてはパンク、水回りでは水道管凍結による配管破裂などが多いようです。

また、大学生協の「学生総合共済」は病気やけがなどに共済金が給付される制度です。この給付事例を整理すると大学生にとってのリスクが見えてきます。

入院・手術の給付事例では気胸などの呼吸器系疾患、虫垂炎などの消化器系疾患が多くなっています。また、事故による入通院への給付事例では、70%がスポーツ中の事故となっており、その内訳はサッカー・アメフト・ラグビーがトップ3です。交通事故では自転車運転中の事故がトップで、1年生が最も多くなっています。

大学生協では「学生総合共済」に加えて「学生賠償責任保険」などの各種リスクに備える保険制度もあります。賠償事故に対する保険金支払い状況のデータも見てみましょう。

賠償事故の保険金支払いの内訳は自転車事故がほぼ半数を占めます。1件あたりの平均支払額は28万円ですが、中には3000万円を超える事例もあるようです。これは事故の相手が死亡してしまった場合が想定されます。次に水漏れ事故で、1件あたりの平均支払額は19万円です。この二つで7割近くを占めます。

いずれも共通しているのは「自転車」ではないでしょうか。自転車は大学生にとっての大きなリスク要因となりそうです。自転車事故を防ぐためには、(1)安全な自転車の装備と整備、(2)交通ルールの順守、の二つが重要です。

(1)では、ライトや反射板、ヘルメットなどの装備により安全性を高めたり、ブレーキの性能やベル、タイヤの状態など定期的な整備・点検を行い、不具合があれば早めに修理することも大切です。

(2)では、信号や標識の無視、一時停止や左右の確認の怠りなどが原因の事故が多いため、交通ルールを守ることが必要です。また、自転車は原則車道を走行しますが、歩道を走行可能な場合には歩行者に十分に注意することが必要です。

死につながるリスクはメンタル問題

ここまででトラブルや病気・事故のリスクについて整理してきました。最後に死亡リスクについても整理していきましょう。データとしては人口動態統計の20-24歳の死亡率(10万人あたりの年間死者数)を使います。その下だと15-19歳になってしまい、大学生とはちょっと違うかなと考えました。

本ブログの「リスクのものさし表示ツール」を使うと簡単にデータを表示できます。下の図は2020年ベースの死亡総数を選択してリスクのものさしを表示させた結果です。

http://risktools.nagaitakashi.net/
monosashi

自殺が死亡総数の半分以上を占めていることがわかります。このように、大学生にとって死につながるリスクとしてはメンタルの問題が最も大きいのです。また、自殺を選択してリスクの傾向を表示させると、増加傾向にあって男性が多いことがわかります。

suicide

ちなみに、2021年の人口動態統計から死因のトップ10を抜き出すと以下の表のようになり、このトップ10で92%を占めています。

死因10万人あたり年間死者数
死亡総数37.1
自殺21.8
悪性新生物2.7
交通事故2.3
循環器系の疾患1.7
その他の外因1.5
神経系の疾患1.3
症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの1.3
先天奇形,変形及び染色体異常0.5
転倒・転落・墜落0.5
内分泌,栄養及び代謝疾患0.4

「大学生が狙われる50の危険」では、メンタルの不調や自殺の問題などもかなり詳しく書かれています。学生総合共済の支払い状況においても、学生本人の死亡のうち6割ほどが自殺となっています。学年別では4年生と大学院生、性別では男性が多くなります。

大学生の自殺要因の上位3つは学業不振・精神疾患・進路問題となっており、進路の問題が大きいのは大学4年生の自殺が多いことと一致します。

また、新生活を始めた人にとっては、新しい環境になじめなかったりするいわゆる「五月病」と呼ばれる抑うつ状態になるリスクがあります。大学生協が運営する「こころの健康相談」に寄せられる内容は、1年生では「大学生活が期待と違った」「周囲に溶け込められない」「初めての一人暮らしが不安」などが多いようです。

メンタルの問題に関しては、自己診断や友人・家族などの精神疾患に関する素人に相談してもかえって悪化を招く場合があるため、早めに相談窓口や医療機関などの専門家に相談することが重要です。

まとめ:新生活にまつわるリスク

「大学生が狙われる50の危険」という本をベースに新生活にまつわるリスクについてまとめました。さまざまなデータをもとに特に注意すべき重要なリスクをまとめると、(1)消費者トラブルやバイト先でのトラブルなどの金銭問題、(2)宗教勧誘の問題、(3)自転車事故、(4)snsなどを通じたネットのトラブル、(5)生活環境の変化によるメンタルの問題、という5つになります。

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