なぜニセ情報(デマ)にダマされるのか?なぜデマを拡散してしまうのか?

disinformation リスクコミュニケーション

要約

なぜニセ情報(デマ)を信じ、なぜデマを拡散するのか?について、最新の研究成果がまとめられている「現代誤情報学入門」という書籍の内容を元に整理しました。なぜデマを信じるのか?となぜデマを拡散するのか?はそれぞれ別の要因が働いていることが示されています。

本文:なぜデマを信じ、なぜデマを拡散するのか?

本ブログではSNSにおけるニセ情報(デマ)対策についてはこれまでにもたくさんの記事を書いてきました。それらのまとめ記事は以下にあります。

SNSにおけるニセ情報(デマ)対策~まとめ記事~
SNSにおけるニセ情報(デマ)の効果的な対策についての「まとめ記事」

これまで一貫して「デマにすぐダマされる無知な一般人 vs 一般人に啓蒙する賢い側の自分」みたいな構図で考えないほうがよい、というスタンスで書いてきました。SNSではデマに反論すること(デバンキング)で逆にデマが拡散し、対決することで分断が進みます。また、普段はデマ撲滅に努める「賢い側」の人たちも、一歩分野が変わるとデマを拡散する側になってしまいます。

ただこの分野は研究の進展が非常に早く、特にコロナ禍以降で急激に研究が増えています。そんな研究の進展をまとめた本が日本語訳で出ていました。

Jon Rozenbeek, Sander van der Linden(著)、加納安彦(訳) (2025) 現代誤情報学入門

Amazon.co.jp: 現代誤情報学入門 : ジョン・ルーゼンビーク, サンダー・ヴァン・ダー・リンダン: 本
Amazon.co.jp: 現代誤情報学入門 : ジョン・ルーゼンビーク, サンダー・ヴァン・ダー・リンダン: 本

この分野に興味がある人であれば必読の本ではないかと思いました。本記事ではこの本の「第4章 なぜ人は誤情報を信じ、拡散するのか」を参考に、なぜニセ情報(デマ)にダマされるのか?なぜデマを拡散してしまうのか?を整理してみたいと思います。

本の著者らはデマ対策としての心理的予防接種(プレバンキング)を主な研究テーマとしています。プレバンキングは誤情報が出回る前に情報の受け手側の事前訓練を行うもので、感染症におけるワクチンのように、事前に誤情報のパターンに慣れることで誤情報を信じにくくなるわけです。

過去記事で紹介したプレバンキングの効果を検証した論文の著者でもあります。

ニセ情報(デマ・フェイクニュース)対策の心理学:どんな対策が有効か?
ニセ情報(デマ・フェイクニュース)対策の心理学についての最近の研究成果を3つ(誤情報の拡散対策の効果、誤情報を拡散する心理と報酬、心理的予防接種の効果)紹介して、どんなニセ情報対策が有効か?をまとめます。

また、この本では「誤情報とは、意図や情報源に関わらず、虚偽または誤解を招く情報である」と定義されており、たとえ真実であっても誤解を招く情報は誤情報としています。

例えば「医師が新型コロナワクチン接種の2週間後に死亡、CDCが死因を調査中」というニュースの見出しは真実ではありますが、あたかもワクチンが原因で死亡したと誤解させる書き方になっているので誤情報となるわけです。

ちなみに本ブログではニセ情報あるいはデマという言葉を使っています。ニセ情報は誤情報かつ、悪影響のある情報を意味しています(悪影響のない単なる間違いなどは含みません)。

本記事では、まずなぜデマを信じてしまうのかの要因について整理し、どの要因の影響が大きいかを誤情報脆弱性テストの結果からまとめます。最後になぜデマを拡散してしまうのかの要因についても整理します。

この本では、誤情報を信じることと、それを共有したり拡散することは異なる心理メカニズムが働くと説明されています。よって、なぜ信じるのかとなぜ拡散するのかは分けて整理することにします。

なぜデマを信じるのか?

「現代誤情報学入門」では、誤情報を信じてしまう要因として、まず個人レベルの要因と社会レベルの要因に分けています。個人レベルの要因はさらに、認知的な要因とアイデンティティに基づく要因に分けています。

ただし、本を読んでいて、アイデンティティに基づく要因は党派性などの話であり、社会レベルの要因とも重なる部分が多いと私は感じました。よって本記事では、社会的要因はアイデンティティに基づく要因の中に含めて整理します。

認知的な要因として、以下のような影響があります。
・分析的思考能力:ニューメラシー(数的能力)が低いと誤情報を信じやすい
・認知的熟慮性:システム2(熟慮的な思考)よりもシステム1(直観的な思考)の働きが強いと誤情報を信じやすい
・思考スタイル:積極的オープンマインドネス思考、すなわち「自分の信念と異なる意見や情報に対しても、それが妥当であれば受け入れる姿勢」が高い人は誤情報を見抜く力が高い

「積極的オープンマインドネス思考」はあまり聞きなれない用語ですね。リスクと向き合う際に必須の「あいまいさ耐性(すぐに白黒つけようとせずに、あいまいな状態を受け入れる姿勢)」のような要因とも関連しそうに思います。

アイデンティティに基づく要因として、以下のような影響があります。
・政治的党派性:保守派(共和党支持者)はリベラル(民主党支持者)よりも誤情報に接しやすく、信じやすい
・集団への帰属意識:国籍・人種、政府を支持しているかどうか、何に対して対立意識を持つか、情報源と自分のアイデンティティとの一致性

政治的党派性は米国の話なので、他の国には適用することが難しいと思われます。共和党支持者では誤情報へ接触するほどトランプ大統領への支持が高かったなどの報告もあるようです。

ただし、日本でも自民党支持者、立憲民主党支持者、参政党支持者、れいわ支持者などでは誤情報への脆弱性は異なると想像されますね。

集団への帰属については、例えば政府や科学者へ対する信頼が高いほど誤情報を信じにくいようです。

社会的分断(自分が所属する集団と他の集団で対立が起きていること)の影響も大きいようです。感情的な二極化の度合が高いと、正誤関係なく、自分が属する集団に肯定的な情報を信じ、対する集団に肯定的な情報を信じなくなります。これは対立事項に関心が高いほど影響が大きくなります。政治的な分断などがよい例でしょう。

このほかに、真実錯覚効果というものがあり、単純接触効果によって繰り返し誤情報に接すると信じやすくなる傾向があるようです。

誤情報脆弱性テスト

ここまでで、なぜデマを信じるのか?についてのさまざまな要因を整理してきました。次なる疑問はどの要因がどれくらい重要なのか?ですね。

これまでは、分析的思考能力と認知的熟慮性でダマされやすさが説明されてきました。つまり「ア〇」ほどダマされやすいということですね。これが最近になって「積極的オープンマインドネス思考」が重要視されているようです。

その前にダマされやすさの測定方法として、誤情報脆弱性テストを紹介しておきましょう。これは、真実10件、虚偽10件のニュース見出しを見せて、それが真実かどうかを回答してもらうテストです。これは以下からオンラインでテストできます(streamlitだ!私もこれでWEBアプリ作ったりしてます)。

Misinformation Susceptibility Test

https://yourmist.streamlit.app/#welcome-to-mist-20

私もこのテストをやってみたところ、16/20点でした。米国のニュースを想定しているのでいまいち日本人にはピンとこないものが結構あります。国ごとに別のテストを作るのがよさそうです。以下の記事によると、17点以上の高得点の人は26%とのことでした。イメージと反して、若者よりも高齢者のほうが得点が高くなりました。

誤情報感受性テスト 「非常にオンライン」なZ世代とミレニアル世代はフェイクニュースに最も脆弱

The Misinformation Susceptibility Test
‘Very online’ Gen Z and millennials are most vulnerable to fake news

このテストの結果と、上記のさまざまな要因との関係を調べたところ、最も影響が大きい要因は積極的オープンマインドネス思考であり、次に数的能力、政治的党派性(リベラルだとより高得点)、最後に認知的熟慮性でした。凝り固まった考えを持っているとダマされやすいということですね。

なぜデマを拡散するのか?

次は、なぜデマを拡散するのか?を整理します。これまでの研究によって、情報を正確だと認識しているかどうかと共有する可能性は全く別であることが示唆されています。

SNSのプラットフォームはユーザーの注意を正確性からそらし、インプレッションなどのほかの要素へ向けさせています。結果として、SNSでは正確かどうかは関係なくインプレッションを稼げる魅力的な情報が拡散します。真実性よりも訴求力の影響が強いわけですね。

訴求力のある情報は、否定的な内容、性的な内容、嫌悪感を引き起こす内容、直観に反したり興味を惹かれたりする内容であると分析されています。それから、政治的党派性は誤情報の信じやすさにも影響がありましたが、拡散にも重要な要因であったりもします。

誤情報の拡散に関しては、以下のような3つの仮説があり、どの要因の影響が大きいのかの研究が行われました。
・無知仮説(真偽を見分けられない)
・混乱仮説(荒らし行為、政治不信を引き起こしたい)
・二極化仮説(党派性やアイデンティティに基づく動機)

その結果、無知仮説は効果なし、混乱仮説は弱い効果があり、二極化仮説は最も強い効果があったとのことです。自分が属する集団に肯定的な情報や対する集団に否定的な情報を真偽問わず拡散しようとする傾向が強いのですね。

つまり、極端な意見の対立を含む議論はインプレッションが大きくなりやすく、拡散しやすいようです。こういう場合はエコーチェンバー効果(自分と似た意見を持つ人同士がつながってその意見が正しいと信じやすくなる効果)が発揮され、異なる意見を持つ人たちとの対立が激しくなります。

日本だと男女の対立みたいなレスバ(レスポンスでバトルすること)が目立ちますね。本ブログの記事の一部がそのような対立に切り取られて使用されたこともあります。

犯罪リスクの男女差:日本はフェミサイド大国なのか?
日本は男女差別の面で遅れており、犯罪に関してもフェミサイド(性別が女性であることを理由に男性に殺されること)大国などと一部で呼ばれています。性犯罪以外の犯罪については被害者の男女割合は同程度が男性のほうが多くなっていました。ただし、安心感の男女差は諸外国と比較して大きくなっています。

以下のポストなどは二千万回以上も表示されています。

https://x.com/aochanp/status/1791465458031608260

こういうのはレイジベイティング(インプレッション狙いでわざと怒りのエサをばらまく行為)と呼ばれており、対戦型SNSであるXでは非常によく拡散します。

人生を怒りに搾取されるな!SNSでのニセ情報(デマ・フェイクニュース)拡散とレイジベイティング
SNS時代になり拡散しやすい情報は不安・恐怖から怒りに変化し、リスクコミュニケーションもその変化に対応する必要があります。インプレッション狙いでわざと怒りのエサをばらまく行為(レイジベイティング)や怒りの感情がデマ拡散に与える影響を調べた研究成果について解説します。

まとめ:なぜデマを信じ、なぜデマを拡散するのか?

なぜデマを信じ、なぜデマを拡散するのか?について、最新の研究成果がまとめられている「現代誤情報学入門」を元に整理しました。なぜデマを信じるのか?については、最も影響が大きい要因は積極的オープンマインドネス思考(自分の信念と異なる意見や情報に対しても、それが妥当であれば受け入れる姿勢)であり、次に数的能力、政治的党派性(リベラルだとより高得点)、最後に認知的熟慮性であることが示されています。なぜデマを拡散するのか?については、二極化仮説(党派性やアイデンティティに基づく動機)の影響が大きいことが示されています。

次回の記事では「現代誤情報学入門」を元にデマ対策について整理する予定です。

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