Nagai T, Kamo M (2025) Modeling of the effect of pH and hardness on the toxicity of zinc, copper, cadmium, and nickel to the freshwater diatom Navicula pelliculosa. Limnology, 26, 301-310
https://doi.org/10.1007/s10201-024-00777-2
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金属の毒性は硬度やpH、溶存有機物などの水質に依存することが知られています。そこで本研究では、淡水珪藻Navicula pelliculosaに対するZn、Cu、Cd、Niの毒性に及ぼすpHと硬度の影響を、蛍光マイクロプレート試験法を用いて調べました。
Zn、Cu、Cdの毒性はpHの上昇とともに増加しましたが、Niの毒性とpHの関係は不明瞭でした。また、Zn、Cd、Niの毒性は硬度の増加とともに低下しましたが、Cuの毒性と硬度との関係は不明瞭でした。
これらの結果を用いて、天然水中の金属の毒性を予測するバイオアベイラビリティモデルを開発しました。pHと毒性の関係には線形回帰式を用い、硬度の影響についてはBiotic Ligand Model型のモデルを用いました。さらに、溶存有機物との錯形成を考慮した金属のフリーイオン濃度が毒性に寄与すると仮定しています。
実験的に観測された毒性と予測された毒性を比較することで、モデルの適用性を検証したところ、EC50およびEC10の予測値と実測値の差は、天然水中のCuを除くすべての場合について、培地中と天然水中の両方で2倍以内でした。Zn、Cd、Niについてはモデルが適用可能であることが示されましたが、天然水中のCu毒性は大幅に過小評価されました。これは、溶存有機物と銅との錯形成による毒性緩和効果を過大評価したためであろうと推察されました。
トップ画像はBiotic Ligand Model(BLM)の概念図ですが、このようなH+を含めた陽イオンの競合モデルは藻類にはうまく適用できないことが知られており、この論文ではBLMを名乗らずに「バイオアベイラビリティモデル」と名乗っています。