• 研究内容や成果の紹介

    永井孝志、稲生圭哉、横山淳史 (2023) 種の感受性分布による除草剤のリスク評価と河川生態調査による付着珪藻への影響評価との比較. 環境毒性学会誌, 26, 15-24
    https://doi.org/10.11403/jset.26.15

    新規論文公開のお知らせです。

    先行研究では日本の河川350地点における生態リスクを種の感受性分布を用いて定量化しました。ところが、ここで評価された生態リスクの大きさとその地点における野外生物群集との関係性は不明なままでした。

    Nagai Takashi, Yachi Shunji, Inao Keiya (2022) Temporal and regional variability of cumulative ecological risks of pesticides in Japanese river waters for 1990-2010. Journal of Pesticide Science, 47(1), 22-29
    https://doi.org/10.1584/jpestics.D21-054

    野外環境における生物群集は農薬以外にもさまざまなストレスにさらされており、農薬の影響のみを検出することは困難でした。ところが近年では野外生物群集における農薬の影響を検出するための生物指標が提案されており、今回はその生物指標であるSPEARherbicidesを使いました。これは、付着珪藻のうち除草剤に弱い種と強い種に分類して、弱い種の割合を計算するものです。

    9つの河川での野外生物群集の調査と同時に、各地点での農薬の生態リスクを種の感受性分布を用いて評価しました。まず9河川の地域環境条件を考慮して、その地点における除草剤の予測濃度を算出しました。そして、複数の除草剤の生態リスクを評価するために、評価ツールNIAES-CERAPを使って、複数物質による「影響を受ける種の割合(msPAF)」を計算しました。

    そして、生態リスクの指標であるmsPAFとSPEARherbicidesは有意な相関関係があり、野外環境における除草剤の影響評価に役立つことがわかりました。また、Planothidium属の存在割合はmsPAFと負の相関が、Nitzschia属の存在割合はmsPAFと正の相関があることも示されました。

    写真は筑波山麓の山口川での野外珪藻群集の調査時のものです。レンガを設置して珪藻を付着させています。これで除草剤の濃度が高くなる時期にレンガを設置することで、除草剤の影響が見えやすくなります。