• 研究内容や成果の紹介
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    上田紘司、永井孝志 (2023) 5種同時発芽生長試験法を用いた6種の水稲用除草剤に対する維管束植物の感受性比較. 環境毒性学会誌, 26, 8-14
    https://doi.org/10.11403/jset.26.8

    新規論文公開のお知らせです。

    農薬の生態影響評価に令和2年度から水草(ウキクサ)の試験が必須になりましたが、維管束植物間の感受性差はあまりよくわかっていません。そこで、先行研究では6穴のマイクロプレートを試験容器として使用した簡易な5種植物同時試験法を開発しました。試験種はネギ、クレソン、レタス、カーネーション、バジルを使用し、市販の種を使うことで試験生物の維持の手間から解放されます。

    上田紘司、永井孝志 (2019) 維管束植物の感受性差を把握するための5種同時発芽生長試験法の開発. 環境毒性学会誌, 21(2), 21-32
    https://doi.org/10.11403/jset.21.21

    本研究ではこの効率的な試験法を用いて6種類の除草剤の毒性試験を実際に行い、植物種間の感受性差を比較しました。その結果、除草剤の種類によってどの植物種に感受性が高いかが異なることがわかりました。例えば、ネギはシクロスルファムロン、プレチラクロール、ピラゾキシフェンに対して最も感受性が高く、クレソンはピラクロニルに対して最も感受性が高く、バジルはエスプロカルブに最も感受性が高かったのです。シメトリンに関してはどの植物種も同程度の感受性でした。

    これらの結果から、単一の植物種を用いた試験だけでは一次生産者に対する感受性を正しく表すことはできないことが示されました。そのため、除草剤が生態系に与える影響を正しく評価するためには、多種多様な植物種に対する毒性データセットが必要になります。

    写真はレタスを用いたとある予備試験の結果ですが、上段の3つはコントロール区、下段は曝露区で左、中、右の順に濃度を上げています。徐々に初期生長が阻害されているのがわかります。