Murakami M, Nagai T, Kai M (2023) Ethical and social perspectives of risk assessment, management, and communication in radiological protection and chemical safety. Japanese Journal of Risk Analysis, 32(2), 101-116
https://doi.org/10.11447/jjra.R-22-008
新規論文公開のお知らせです。
著者3人で、アフターコロナにおけるリスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションのあり方を議論した結果を総説としてまとめたものです。
リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションを含むリスク分析手法は、放射線防護、食品安全、環境科学などの各分野で独自に発展してきた歴史があります。これらの各分野のリスク分析手法の共通点と相違点を整理することは、今後のリスク分析のあり方を考える際に有用であると考えました。
そこで本論文では、リスク概念や各種リスク指標の誕生、リスク評価・リスク管理の歴史的展開を紹介しながら、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションの多面的な視点について、実際の応用例を交えてまとめました。
特に、社会心理学的側面との関係、倫理的・規範的視点の重要性、ステークホルダーとの対話のあり方などに焦点をあてたことが大きな特徴です。
これらの視点を踏まえた文献レビューに基づき、異なるタイプのリスク事象を比較するためには、分野を超えたリスク指標の理解と応用が必要であることを指摘しています。
さらに、社会からのニーズに応じて、倫理的・規範的な視点を考慮することを重視した場合、功利主義的なリスク評価よりも平等主義やマキシミン原則を考慮したリスク評価の適用が今後重要になることを指摘しました。
そして、平時ではない危機的状況におけるリスク分析はまだ発展途上であり、これをアップデートするための課題と必要性を論じました。
最後に、ステークホルダーとの協働を取り入れることで、倫理的・社会的に受け入れられるリスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションにつながることを主張しています。