• 研究内容や成果の紹介
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    永井孝志 (2023) 政策立案に役立つ解決志向リスク評価. リスク学研究, 32(2), 97-100
    https://doi.org/10.11447/jjra.L-22-015

    新規論文公開のお知らせです。

    リスク評価は警笛を鳴らすことが目的ではなく「意思決定支援」であり、どのような管理対策をとるべきか、あるいはとらなくてもよいのか、の判断根拠を提示することが目的です。

    ただし、リスクだけを評価しても(その問題がどれだけ悪いものなのかがわかっても)、どんな対策をとればよいのかという判断根拠としては不十分です。そこで、実際に実行可能な管理対策の候補をいくつか列挙して、それぞれを実行した場合のリスク低減効果、コスト、リスクトレードオフなどを評価することで、どの対策を選択したらよいかの判断根拠としてより有用なものとなります。これが「解決志向型リスク評価」です。

    この論文では最近の「解決志向型リスク評価」の事例として、新型コロナウイルス対策や知床観光船事故を踏まえた海上安全対策を示しました。

    また、「解決志向型リスク評価」の実施を制限する要因についても議論しています。その要因の一つは、政府側が「解決志向型リスク評価」を好まないことにあります。なぜなら、「専門家の意見を聞いて決めました」「科学的に決めました」と説明することで、意思決定の説明や結果について、専門家に責任を転嫁できるからです。