• 研究内容や成果の紹介
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    永井孝志 (2023) 作物統計を用いた作物別・都道府県別の収量変動リスクの定量化. 農業情報研究, 31(4), 120-130
    https://doi.org/10.3173/air.31.120

    新規論文公開のお知らせです。

    年次的な収量変動に関するリスクマネジメントの手法の一つとして、複数作物の栽培や気候条件の異なる土地での栽培によるリスクの分散があります。

    ところが、作物や地域の網羅的な収量変動リスクの解析事例はこれまでに報告がありませんでした。そこで本研究では、農林水産省による作物統計の長期的な収量データを解析して、47都道府県における160作物の収量変動リスクをそれぞれ定量化しました。

    リスクをどのように定量化するか?について説明します。各年の平年収量と実際の収量の差(平年を100とした場合の作況指数として示す)は、ある確率分布の下でランダムに発生すると仮定します。その分布の平均値と変動の大きさ(標準偏差)をリスク指標とします。平均値はトレンドを示し、大きければ収量が上昇傾向にあることを示します。標準偏差はばらつきを示し、大きければ年変動が大きいことを示します。

    作況指数の変動パターンとして、気温などの気象要因との関係や、都道府県別の水平分布、水稲の年次変動パターンとの類似性、ハイリスク・ハイリターン度合いなどの観点から整理しました。

    さらに、収量の年次変動パターンに差がある作物や地域を複数組み合わせて栽培することによるリスク分散効果のシミュレーションも行いました。その結果、2作物もしくは2地域での作況指数の相関係数が低い場合にリスク分散効果が得られる事例を示すことができました。

    47都道府県×160作物の組み合わせのような大規模な解析事例は初となります。自分の地域における自分が栽培する作物のリスクを知ることで、これを踏まえた営農計画を策定することが可能となります。また、リスクを自分の許容範囲内に抑えるための作物の組み合わせをシミュレーションすることもできるようになりました。