永井孝志、村上道夫、藤井健吉、松田裕之 (2021) 企画セッション開催報告 新型コロナウイルス感染症をめぐるレギュラトリーサイエンス. リスク学研究, 30(4), 189-194【特集:第33回日本リスク学会年次大会】
https://doi.org/10.11447/jjra.SRA-0357
新規論文公開のお知らせです。
2020年11月21日に、日本リスク学会第33回年次大会において開催された企画セッション「新型コロナウイルス感染症をめぐるレギュラトリーサイエンス」の開催報告になります。
新型コロナウイルス感染症対策をめぐっては、これまでリスク学の中で広く議論されてきた課題が繰り返し現れました:
・純粋科学と政策の間を埋めるレギュラトリーサイエンスの位置づけの明確化
・専門家の役割の明確化(リスク評価とリスク管理の分離)
・受け入れられるリスクの大きさ(安全目標)の設定
・現状ではなく将来予測に基づいた対策
・規制のギャップの修正
・リスクトレードオフの考慮
・リスクコミュニケーションの司令塔の不在
つまり、これまでに経験したことのないエマージングリスクの対策においても、早期に課題を絞り出し、不確実性の中の意思決定への羅針盤としてリスク学の知見の蓄積は大きく役立つと考えられます。
本企画セッションでは以下の4つの話題を取り上げました:
・専門家の位置づけとして科学と政治の関係
・予測に基づく対策としてオリンピックなどの大規模イベントのリスク評価
・規制ギャップとしてのウイルス対策製品リスクガバナンスの未整備検証
・リスクトレードオフとしてコロナウイルスの死亡リスクと経済影響の比較
問題志向のリスク評価ではなく解決志向のリスク評価が重要という点が、4つの話題提供の内容に共通して見られました。
学会はオンライン開催だったので、いまいち聴衆の反応がわからないのが残念ですが、コロナでもリスク学文脈におけるレギュラトリーサイエンスの考え方が重要ということは示せたかなと思います。