Nagai Takashi (2019) Sensitivity differences among seven algal species to 12 herbicides with various modes of action. Journal of Pesticide Science, 44(4), 225-232
https://doi.org/10.1584/jpestics.D19-039
昨年度の論文ですが新規論文公開のお知らせです。
この研究では種間の感受性差を把握するために、12種類の除草剤を対象に7種類の藻類を用いた毒性試験を行いました(全部で96試験)。効率的に試験をするために蛍光マイクロプレートアッセイ法を使用しました。7種藻類の中でどの種が最も感受性の高いかは除草剤によって異なっていました:緑藻DesmodesmusはCNPとペンディメタリンに対して最も感受性が高く、珪藻Achnanthidiumはクロルプロファムに対して最も感受性が高く、珪藻Nitzschiaはジクワット、グリホサート、ジクロベニルに対して最も感受性が高く、珪藻Naviculaはトリフルラリンに対して最も感受性が高く、シアノバクテリアPseudanabaenaはグルホシネート、アシュラム、2,4-Dに対して最も感受性が高い。これまで化学物質の生態影響評価に最も標準的に使用されてきた緑藻Raphidocelis(ムレミカヅキモ)は、驚くべきことに試験した12種全ての除草剤で最も感受性の高い種ではありませんでした。この結果は単独の標準種に藻類の感受性を代表させることはできないということを明示しています。
蛍光マイクロプレートアッセイの検証として、ここではすでに標準試験種としてデータが豊富にあるムレミカヅキモを同時に試験し、既存(フラスコを用いた試験)の毒性値と比較しました。様々な作用機作の除草剤について結果は概ね一致しており、マイクロプレート試験の妥当性を示しています。
これまで、シアノバクテリアはPseudanabaena foetida(NIES-512株)を使用してきましたが、本研究では一応OECD201の試験種であるSynechococcus leopoliensis(NIES-3277株)も追加して試験をして感受性を比較しました。SynechococcusはPseudanabaenaに比べて総じて感受性が弱く、この種がどういう経緯でOECDの試験種に選ばれたのか疑問です。
写真は緑藻Desmodesmusを用いた試験後のプレートですが、外周の穴は培地が蒸発しやすいので試験には使用せず、左から2列目がコントロール区、3列目から曝露区で徐々に濃度を上げています。濃度の上昇に伴い増殖が阻害されて緑色が薄くなっているのがわかります。