
永井孝志 (2025) PFOSとPFOAの淡水産水生生物に対する予測無影響濃度. リスク学研究【特集:PFAS規制】, 35(3), 109-116
https://doi.org/10.11447/jjra.O-24-034
新規論文公開のお知らせです。
有機フッ素化合物の一種であるPFOSとPFOAは、日本の複数の河川水において、日本の暫定水質基準(合計50 ng/L)を超える濃度で検出されています。この基準はヒト健康への悪影響を防止するための値ですが、水生生物への生態リスクも考慮する必要があります。
そこで本研究では、PFOSとPFOAの水生生物に対するPNEC(predicted no effect concentrations, 予測無影響濃度)を既存の文献から収集して整理しました。収集したPNECには、水質基準値に加え、淡水産水生生物に対する慢性毒性値から導出された種の感受性分布のHC5(5% hazardous concentration)値も含まれます。
さらに、各文献で使用したデータセットの影響を評価するため、報告された毒性値を用いて一貫した手法によりHC5値を再計算しました。
報告されたPFOSのPNECは0.0091~2.52μg/L(100倍以上の差がある)で、幾何平均は0.23μg/Lでした。一方、本研究で再計算したHC5値は0.33~2.5μg/L(幾何平均1.0μg/L)の範囲でした。
報告されたPFOAのPNECは6.7~240μg/Lの範囲でPFOSよりも幅が狭く、幾何平均は39μg/Lでした。一方、本研究で再計算したHC5値は16~720μg/Lの範囲で、幾何平均は78μg/Lでした。
結論としては、日本の基準値(合計50 ng/L)を守っていれば、生態系への影響もそれほど懸念されないと考えられます。また、低い毒性値(NOECが1μg/L以下)を報告しているものについては原論文にあたって精査したところ、あまり信頼性が高くないと判断されました。
現時点における既存の知見を総ざらいしたので、今後のPFOS・PFOAの生態影響を考える上でのベースとなる重要な論文になったと思います。