永井孝志、稲生圭哉、横山淳史 (2024) 環境DNAを用いた野外水生昆虫・珪藻群集の分析と農薬の生態影響評価への応用. 環境毒性学会誌, 27, 32-45
https://doi.org/10.11403/jset.27.32
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先行研究では日本の河川350地点における生態リスクを種の感受性分布を用いて定量化しました。ところが、ここで評価された生態リスクの大きさとその地点における野外生物群集との関係性は不明なままでした。
Nagai Takashi, Yachi Shunji, Inao Keiya (2022) Temporal and regional variability of cumulative ecological risks of pesticides in Japanese river waters for 1990-2010. Journal of Pesticide Science, 47(1), 22-29
https://doi.org/10.1584/jpestics.D21-054
そこで、その次の研究では野外生物調査を行い、種の感受性分布による生態リスク評価結果と比較しました。野外生物調査結果から、農薬の影響を検出するための生物指標(SPEARherbicides)を計算しています。これは、付着珪藻のうち除草剤に弱い種と強い種に分類して、弱い種の割合を計算するものです。
永井孝志、稲生圭哉、横山淳史 (2023) 種の感受性分布による除草剤のリスク評価と河川生態調査による付着珪藻への影響評価との比較. 環境毒性学会誌, 26, 15-24
https://doi.org/10.11403/jset.26.15
ところが、このような生物調査は非常に労力がかかり、調査が可能な場所(川にアクセスして川に入って調査ができるところ)が限られます。そこで、河川水中にただよう生物由来のDNAを調べることで、その川にどのような生物がいるかを調査する手法である環境DNAメタバーコーディング分析を用いました。
上の画像にあるような非汚染地点(左)と、周りに水田が多く農薬の濃度が高くなりやすい地点(右)で、河川水を採取して環境DNAメタバーコーディング分析から水生昆虫と珪藻の種組成を調べ、生物指標を計算しました。
先行研究で見られたような生物指標の差が環境DNAでも再現され、生物調査の代替手法として有望であることが示されました。